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最辺境㉓

勝負の時といっても、こちらからまっすぐ突っ込むような事はしない。先ほど待機した位置から少しだけ移動して、再び待機する。これで、奴が想定通りの経路を通れば、俺の能力はギリギリ届くハズ。


「君は能力の使用に専念してくれ。奴の攻撃は私が弾く」


アリステラさんは奴の元には戻らず、俺の前に陣取る。先ほどの戦いの最中には行っていなかったが、奴は遠隔攻撃も仕掛けてくるらしい。それから俺の事を護るつもりのようだ。正直助かる。


ユマは俺の横に立ち、大き目のナイフにポーションを振りかけていた。多分自身にかけているのと同じ奴だろう。……ここまで近くに寄っても特に体調が悪くなってる様子もない限り、ポーションは大成功と言っていいだろう。……引いた位置に移動する気はないようだった。アリステラさんも何も言わないという事は問題ないと判断しているのだろうし、俺はその彼女の元で地面に膝を落とす。


地面は何度も大きく揺れているが、この体勢なら問題ないだろう。そのまま地面に手をついて時を待つ。ちなみにアリステラさんとユマは振動などないかの如く体勢を崩す事もなく立っている。アリステラさんはともかくとして、ユマもすごいな。


耳には木が"折れる"、或いは"割れる"甲高い耳を劈くような音が周囲に響き渡る。その音に顔を顰めながらも機を待つ。


そして、その時がやってきた。動きはゆっくりと、だがその体躯の大きさからそれなりのスピードで進む巨大瘴気獣の前足が射程圏内に入った瞬間、俺は地面に対して力を流し込む。


「行きます!」


目標は地面に触れる、俺から見て一番近い部位。即ち奴の左足。その足元に向けて力を行使すれば、緑色の太い触手が何本も地面を突き破って姿を現し、即座に奴の左足に絡みつく。


「……どうだ?」


瘴気獣から視線を外さないアリステラさんの口から漏れたその言葉は独り言だったのか、それとも俺に向けて放たれた事かははっきりとはしなかったけど、後者と捉えて俺は返事を返す。


「効いてはいるようです」


これまで速度は早くないにしても前進を止めなかった瘴気獣が動きを止めた。というか、急に足の一本を拘束されたせいでつんのめりかけた。間違いなく俺の作り出したタイテンは奴を拘束できている。だがアリステラさんが求めた答えはそんな見ればわかる内容ではないだろうし、俺の答えたのもそんな意味じゃない。


「間違いなく、奴の体を削れている感触があります」


俺が生み出した植物は力を通し続けなくてもすぐに枯れたりはしないが強度としては大分落ちるし、動きが制御できなくなる。だからあの巨体を止めるために力を流し続けているんだけど、その流している力を通じて奴の足の状態がつかめていた。


タイテンが絡みついた周辺の奴の体が消失していっている。そうして締め付けていく触手が途中で押し戻される。恐らく他の部分の瘴気が奴の左足に流れ込んで形状を保とうとしているのだろう。


「……確かに、奴の体が縮んでいっているようだ」


……俺が見る限りは判断できないけど、アリステラさんが言うには削れているのは間違いないようだ。だったら──!


俺が地面に触れた手に更に力を籠めると、奴に絡みついたタイテンが更にその触手を伸ばし、奴の首元まで絡みつく。


……伸ばせる範囲としてはここまでが限界か、さすがに図体がデカすぎて全体を束縛するなんてことはどう考えても無理だが、奴が獣のような体型をしている以上ここを抑えれば動きは大分抑えられるはず。


「体力の方は大丈夫?」

「行けます。……最後まで行けるかはわからないですけど」

「了解だ、このまま拘束してくれ。やれる範囲でいい」


アリステラさんに頷きを返す。


力の浪費は思ったよりも少ない。拘束するためにかなり力を使う必要があると思ったんだけど、触れた場所から奴の纏う瘴気を消していっているせいかそこまでではなかった。拘束から逃れようとじたばたしているようだけどそれも上手くいっていない。これ、逆に体型を護るような反応をしていなければ拘束し続けることができなくて逃げられていただろうに……この部分もこちらに対して有利に働いている。


これなら、ぶっ倒れる寸前までこの状態を維持し続けていればいいだけ──そう考えたが、さすがにそこまでは甘くなかった。


「来るぞ……私を信じて、君は力を使う事に専念しろ」


アリステラさんのその言葉と共に。奴の頭部の辺りから黒い弾丸がこちらに向けて射出された。





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