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最辺境㉑

「……へ?」


突然かけられた言葉の意味がわからずに、俺はきょとんとしてしまう。そんな俺に対してユマは笑みを浮かべたまま言葉を続ける。


「行くんでしょ? 瘴気獣の元へ」

「え、なんで……」


それはここに隠れた直後、教団の連中が姿を現す前に俺がユマ達に伝えようとし、だが教団の姿を見かけたことで一度言うのをやめようとした事だった。


だが奴等が森に火をつけた事により、逆に言えば連中が更に森の奥にやってくる可能性は限りなく低くなった。だから改めて伝えようとは今考えてたけど、俺はまだそれを口にしていない。


驚きに動きを止める俺に対して、ユマは自身の荷物を拾い上げながら言う。


「この世界でヒビキと一番一緒にいるのはアタシだわぁ。だからわかるわよ、そういう顔していたもの──試してみる気なんでしょ、スールの能力を持ったタイテンを」

「ユマ……」


これまで旅や研究の中で繰り返し能力を扱う中で、俺の能力は成長を遂げていた。一つは単純な能力の強化。これまでより多くの植物の操作を、これまでより少ない力で使えるようになっていた。


そしてもう一つの新たな能力は、二つの植物を掛け合わせる事。ようするに品種改良する能力だった。ただこの能力で生み出した植物は繁殖する力を持たないようで、覚醒した後もスールの品種改良に使うことはできなかった。また、どんな植物も掛け合わせる事ができるというわけではなく、これまで成功したのはたったの二つだけ……正直、使い勝手が悪すぎる能力だった。


しかも、成功したうち一つはタイテンとヌベタの掛け合わせだった。──完成したのは、ぬるぬるの触手である。リアルエロ同人再現する以外に何の役に立つのコレ? そして俺はそんなものを再現する気はない。


そしてもう一つも正直あまり役に立たないと思っていた掛け合わせ。それはタイテンとスールだった。スールの能力は瘴気に強くなることだが、そもそも俺が能力で生やした植物は俺が力を流し込んでいる限りは枯れる事がないから意味がないと思っていた。でも、スールには瘴気を吸収なり浄化なりする力があると解った。もしあの能力を引き継いでいるのなら──


検証はできていない。だけど、あの能力を引き継いでいるのなら瘴気獣に対して有効な力となるかもしれない。そう考えたのだ。


掛け合わせの能力自体は皆に隠すような事ではないのでちゃんと話してあるから、ユマがそれに気づくのはおかしくないと思うけど……


「いいの?」

「いいと思うわぁ」


正直な所、否定されると思っていたんだけど、ユマは即答をした。


「別に接触して使わないといけないわけではないもの。ある程度近くによる必要はあるけど、アリステラさんの協力を得ればやれない事はないわ」

「……うん、俺もそう思う」


その分力は消費するが、力自体は数十メートルくらいなら離れた所から使用できる。まぁ正直サイズがデカすぎて、どこまで有効かは微妙だけど……ある程度でも足止めできれば意味はある。


「というわけで行きましょ、ヒビキ」

「うん……って、ユマも来る気!?」

「当然でしょ?」


何当たり前な事言ってるのって顔して返されたけど、そんな簡単な話じゃない!


「俺は大丈夫だけど、ユマが瘴気獣の近くに寄るのは危険すぎる!」


召喚者じゃないユマは普通に瘴気の影響を受ける。以前アリステラさんと会った時みたいに短時間の遭遇ですぐ側に寄らなければさすがに影響はでないらしいけど、アイツのサイズを考えれば近くに寄るだけも危ない可能性が高い。だから思いとどまらせようとする俺の前に、ユマはすっとポーションの瓶を差し出してきた。


「大丈夫よぉ、これがあるもの」

「これって……スールのポーション?」

「ん」


俺の問いに、ユマは頷く。


「完成してたの?」


アリステラさんが捕まえた瘴気に侵された動物の回復と、瘴気に汚染した植物を使いユマが自身の体を使って行った小規模汚染の回復は成功したとは聞いたけど……


その問いに対して、ユマから返ってきた答えは「さあ?」だった。


「さあって……」

「といっても、そうそう治験が行えるものじゃないもの。だから丁度いいしここで自分の体を使って最終試験を行うわ」

「そんな……」

「勿論瘴気の影響を少しでも感じたら下がるわ。それに、今の状況で出来るだけヒビキを一人にしたくはないもの」


先程迄笑みを浮かべていたユマの表情が真剣なものになる。

その彼女の瞳とほんの数秒見つめ合い、俺は頷いた。


ユマが俺の考えに気づいたように、俺だってユマの考えそうな事はわかる。彼女はきっとここでは引き下がらない。最初から彼女は俺の考えを読んで、そのうえでついてくる所まで決めていただろう。リズ達が離れてから話したのは、恐らくリズは止めてくるから。彼女は過保護な所があるからな……後火災の消火に専念させるのもあるか。


「……行きましょう。出来るだけ火災の所から離れた位置で実行する必要があるわ」

「そうだな」


俺は拳を握る。大丈夫、戦いなら俺だってロア高原やザルツベック大空洞で体験した。やれるはずだ。


まぁ無理なら即逃げるけど。出来るだけユマは早く離れさせたいしな……その辺のストッパー的な事も考えるかな。考えてそうだなぁ、ユマだし。




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