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最辺境⑫


何か言葉を返そうと考えるけど、その言葉が出てこない。


そんな俺の様子に、アリステラさんは小さな笑みを浮かべて言葉を続けてきた。


「何故気づいたと思ってるのかもしれないけど、単純な話だ。ここに来る前に一度王都に戻ったのだがな。そこでアークレイン公爵家のご令嬢が王城を離れたお気に入りの召喚者にべったり貼り付いていると」


その言葉に思わずリズの方を見ると、速攻で目を逸らされた。


……そっかー、そりゃそうだよなー。リズは王国でもかなり高位の存在で、そんな彼女が大した能力を持っていなかったとはいえまがりなりにも召喚者と行動を共にしていたらそりゃ話題になるのは当然である。


そして俺の能力が植物に関するものだというのは王国には知れており、そして能力は成長するものだ。そこまでわかっていれば、あの花園と俺を紐づけるのは簡単な事だろう。


うーん、どうしたものだろうか?


ぶっちゃけた話アリステラさんは素性がはっきりしているし、その所属もリズの公爵家が所属する王国だ。そして今回の件でスールの件は王国に伝わるし、その先の話として俺の話も一部の人間には伝わる事になるだろう。となると、ここまで気づいているアリステラさんに対して話を隠す意味は殆どないのでは? 少なくとも召喚者で瘴気獣を狩っている彼女が破滅主義の連中とつながっているのはありえないし、他国とつながっている可能性も低いだろうし。


そう思って視線を皆に向けると、視線の意図に気づいてくれたらしく皆がコクリと頷いた。だよね、というかここで誤魔化してすぐ事実知られたら俺達の印象悪くなりすぎだしな。うん、よし。


「実はですね、アリステラさん」


◇◆


「……すごいな、この世界の誰もが求めていたのに、誰も手に入れられなかったものだぞ、それは」


俺達が改良したスールの性質、そして俺の能力の説明を受けたアリステラさんは途中でぱちぱちと眼を瞬かせたりして(彼女はキリっとした美人さんなんだけど、この時だけはなんか幼く見えて可愛かった)驚きを受けつつ説明を聞き終え、最初に発した言葉がそれだった。


「俺の能力がスールの性質に丁度嵌ったんですよね。ユマが文献を漁って見つけ出してくれなければ、触れる事もなかったと思いますが」


瘴気に侵されていくこの世界を救うには何の役にも立たないと思われた俺の能力が、救うとは行かないまでも一筋の希望を見出せる事になるなんてのは、ユマに会うまでは考えもしなかったからな。いろいろな巡りあわせの運が重なった末の結果と言える。


「それで、今は公爵家からの護衛を待っているということか」

「ええ。うちの父に連絡を入れましたので、すぐには動いてもらえると思いますわ」


アリステラさんの問いに、リズが答える。その答えを聞いてアリステラさんはふむ、と一つ頷き。


「だとしたら、私も護衛としてここに滞在しようか」

「アリステラ様が?」

「どうせ私もこの周辺に滞在している状態だからな。パトロールも必要だから常時一緒にいるというわけにはいかないが、護衛は多いに越したことはないだろう。私は対人戦でも強いぞ」


実質複数の剣を同時に扱えるのだ、むしろ普通の騎士くらいじゃ相手にもならない気がするが。

正直これは有難い申し出だ。彼女の言う通り護衛が多いに越したことはなく、しかも俺と一緒に汚染区域にも足を踏み入れられる彼女が護衛についてくれるならこれ以上心強い事はないだろう。瘴気獣の発生確率が高くなっているのならば猶更だ。


結果として、彼女もこのノインさんの実家に滞在することになった。一応これまでは軍の境界監視部隊の所に滞在していたらしいが、瘴気獣の発生確率がより高くなったことからしばらく境界に近いところで滞在し様子を見ると伝達したとのことだった。無論スールや俺の能力の事は伝えてない。部屋は一人部屋だったリズと同室である。家自体は他にも空き家がいっぱいあるんだが、護衛なら同じ家屋にいた方がいいとの事でこうなった。


こうして俺達はこれ以上ない戦力を想定外の所から入手し、護衛が到着するまでこれで一安心──と考えたのもつかの間。


公爵家から悪い知らせがもたらされた。





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