最辺境⑩
というわけで、俺達はリズの実家であるアークレイン公爵家に保護されるということになった。
といってもすぐにどうにかというわけではないけど。
何せ俺達がいるのは同じ国内とはいえその中では辺境と呼ばれる地域だ。アークレイン公爵領や王都とはだいぶ距離がある。そしてこの世界には電話なんてものはない。
一応電話程ではないけど、迅速に連絡を取る方法もあるらしいんだけど……これは機密性が低くなるらしい。今回の場合アークレイン公爵家が体勢を整える前に情報が漏れるといろいろ面倒な事になりそうなのでその手法は取らず、アークレイン公爵家の"影"的なスタッフに伝えに動いてもらうことになった。
なんというか、ここより最寄りの街に待機しているらしい。まぁそうだよね、あんまりそう感じないけどリズは公爵家のお姫様だもんね。そういうのついてるよね。
一応基本的には護衛というよりは連絡員といった感じで、リズが自分で対処ができない問題が発生しそうな場合や、リズや公爵家からそれぞれ連絡を取りたい場合に動くらしい。滅茶苦茶過保護ってわけじゃないのね……というか過保護ならそもそも俺達と一緒に護衛が行動してるか。
とにかくその人物に連絡を託すということだ。信頼性は少なくとも今俺達が取れる中では間違いなく一番高いはずなので、それに関してはお任せした。
で、その間俺達はどうしようかという話になった。
まぁ普通に考えれば俺たち自身も王都や公爵領など護られやすい場所に移動した方がいいのでは? という話にはなるんだけど。ただスールの検証作業はまだ進めたいし、そうするとこの辺境に滞在する必要がある。
それに辺境には基本的に人がいない。特に瘴気との境界線は俺みたいにその場が瘴気に侵されてるか検証できる手段がないと危なくて滞在もできないだろうしな。となると護衛がつくまでは、このまま辺境に留まった方がむしろ安全では、という意見もでた。
で、結論からいえばこの地に残る事に決めた。結局のところ、体制が整うまでは人の多いところにはいかない方がいいという判断からだ。万が一情報が漏れた時、人が多いところだと正直狙ってくる人間に対して対処のしようがないが、辺境ならほぼ人の出入りがない。逆に言えばその人の出入りが抑えられていれば、早めの対策が取れる。
ということで、そういった監視の目だけは早めに増やしてもらう事を依頼し、俺達は人類の生存域の際辺境でもうしばらくは4人だけの生活を継続する──
はずだったんだけど。
「リズロッテ嬢、何故こんな所に?」
天候が近々崩れそうだという事もあり、汚染地帯の方に行く事はやめてノインさんの自宅でのんびりとしていた日の事。本来なら誰も来るはずのないこの家の扉をノックする者がいた。
中に誰かいるのは明確なためスルーすることもできず、警戒しながらもノインさんが応対しようとしところ、外から聞こえた女性の声でリズが目を見開き、ノインさんより先に扉を開いた。
そしてそのリズと顔を合せた女性が、口から漏らした言葉がこれである。
そこに立っていたのは、鎧姿の美しい女性。だがその姿には奇妙な所があった。下半身の周りに、スカートのように剣が浮いているのだ。
──その美貌、そして何よりその立ち姿には見覚えがあった。
「アリステラ、さん?」
ザルツベック大空洞で瘴気獣が現れた時俺を助けてくれた、俺と同じ召喚者の女性──アリステラさんが、そこに立っていた。




