最辺境⑧
それからしばらくは、スールを植えた地点にほぼ日参するようになった。
行きたがったのはユマだったけど、観察しなきゃいけないものの場所が汚染区域なので俺もついていかないと意味がない。当然護衛としてノインさんも行く必要があり、そうするとリズも「一人で留守番してても……」と全員だ。まぁあの何もない村に一人で留守番は確かにいやだろう。食料として野菜育てるのは俺が居れば何の問題もないし。
んで現地についたら俺とユマは相談しつつさまざまな検証。ユマが考えて俺が手足みたいな感じ? リズは念の為の護衛で待機。ノインさんは動物のいるところまで戻って狩りをしていた。毎日の食事にはお肉も必要だからね!
いやマジで。こっちに来てからしばらくはのんびりしてたようなもんだけど、一気に忙しくなったので体力も使う。俺なんかは料理とかも担当してるし。がっつり食べて力もつけんとね。
そうして進めていった検証だが、結論から言えばユマの予測は当たっていた。スールで作った花壇のようなものにまぜるように植えたものだけではなく、その周辺に植えたものも枯れずに残ったのだ。周辺の瘴気を吸い取っているとしか思えなかった。
そこから更に検証を進めていく。
その結果わかったのは、どういう仕組みなのかはわからないが数が多いほど浄化(瘴気を消す効能を俺達はこう呼ぶことにした)の能力が上がっているのではないかということだった。同じ範囲内に本数を変えてスールを生やし、それぞれの浄化範囲を確認したところ、明らかに本数が多い方が効果範囲が広いのが分かった。それも本数が増えた分の増加という感じではなく、明らかに一本当たりの効果範囲が増えているとしか思えない範囲の広がり方だ。
後、俺がラーニングした大本の品種改造スールもちゃんとまだ元気に生えていた。途中に天気もあれた日もあったがこれなので、もはや改良はうまく行ったといって間違いないだろう。
そうしてまた検証で数週間が経過して。
「すごい事になったな……」
先の方をじっと見つめて、ノインさんがぼそりと頷く。
視線の先にはスールの花園。そしてその周囲には生い茂る青々とした植物の葉。
……あそこは、初めて俺とノインさんがこの地にやって来た時には草一つ生えていない荒れ果てた荒野だった。足を踏み入れただけで手に持った植物が枯れたのだ、間違いなくあの場所は瘴気に侵されていた。
「……正直、未だに信じられない光景に見えますわ……」
リズが呟いたその言葉は、きっとこの世界のだれがこの光景を見ても同じことを呟くだろうとユマは言う。
この世界にやってきてまだ短く、話には聞いていたとはいえ自身の体に影響がないこともありあまり瘴気に対する危機感が薄い俺とは異なり、この世界に生まれた時から過ごす人々にとって──一度瘴気に侵された場所に緑が復活するなんてものは、誰もが望み、だが誰もが見たことがない光景だったのだ。
それが今、目の前にある。3人が感じている感情は予想はできても、きっとその強さは予想を大きく超えたものになるのだろう。
そうやって皆が花園を眺めている中、口を開いたのはユマだった。
「でもこうなると……国に保護を求めないといけないわね」
「? ……ああ、確かに。これだけの効能が認められたなら、国に協力を求めて広めていかないとな」
その言葉に俺は頷く。
"保護"という言葉に一瞬引っかかったが、研究しているものが形になったらその技術を公開し広めていくというのは、元々話していた事だ。
よくある物語みたいに魔王のようなものがいて、それを倒したら瘴気が消える! という話ならともかく、今回研究にしているのは土地や人に対して瘴気の影響を無くすものだった。方法見つけたところで地道に進めていかなければならないものであり、俺達だけが知っているだけじゃ殆ど意味がないものだ、だから技術や知識の共有を行うのは既定路線だった。……ただこれ、本来は数年、場合によっては2桁年を覚悟していた研究だったハズなんだけど、わずか1年足らずでここまでの結果が出るとはなぁ……
そう思っていた俺だったが、横から否定の言葉が叩きつけられた。リズからだった。
「いやお姉様、そんな事言っている場合じゃあありませんよ? その前にお姉様とユマさんの身の安全を確保しませんと」
「身の安全?」




