最辺境⑤
「……うわ、もう3つも枯れてる……」
周囲には本当にぺんぺん草すら生えていない(ところでぺんぺん草って何?)場所までやってきて袋からポットを取り出すと、そこに生えているスールの芽の内3本はすでに完全に枯れてしまっていた。
今回用意できたのは全部で7つ。そのうちの半分近くが瘴気の領域に踏み込んだだけで駄目になってしまったわけだ。品種改良の中で、本来持っていた効能を失ってしまったのだろう。
「結構重かったのに頑張ってもってきたんだけどなぁ……」
ポット事もってきているから中には当然土が詰まっている。それが7個、一個一個は小さいにしてもこれだけ数があればそこそこ重い。とりあえずまずは枯れてしまったポットの土をそこらに放り捨てる。戻りのための軽量化だ。あ、ポットはちゃんと持ち帰ります。
「さて、本題だ」
3つは何もする前に駄目になったが、逆に言えば4つは今の所無事なわけだ。冷静に考えればむしろこの数字は出来過ぎでは? という気がする。
とはいえ、瘴気に侵された領域の中とはいえどほんの少しの時間だけ無事なだけでは意味がない。
「よいしょ」
袋の中に一緒に入っていた小さなスコップを手に取り、地面に穴を掘る。土自体はそれほど固くないし、他の植物の根なども当然ないわけで割と簡単にさくさく穴が掘れる。瘴気に侵されていなければ緑が生い茂っていそうな土だなと思いつつ、同じくらいの穴を4つほど開けた。
それから今後はポットからスールの芽を取り出し、元からついている土は払い落として大地へと植え替えていく。
そうして4つの苗を植え替えると、そのウチの一つがすぐに変化を見せた。早送りのようにみるみる枯れてしまったのだ。
「……土の方が瘴気の影響を受けやすいのかな。ふむ」
ポットとスコップを袋の中に片付け、残りのスールに視線を向けるが、そちらは今の所は無事なようだ。
この後しばらく(30分くらい)様子を見て無事なようならまた後日確認を取りに来ることになっているんだが……30分くらいならこの場で待っていればいいかななんて思ってたけど、やっぱりないな。
とにかく周囲に何もなさすぎる。いや、勿論数100m手前の方を見れば緑はあるんだけど、少なくとも自分の周囲は本当に土しかない。砂漠でもない場所でここまで緑が存在しない場所なんて普通まずないだろう。
ノインさんの所までは距離的には1.5kmくらいあるから、往復してるとむしろ30分超えちゃうし無駄な移動になるけど……それこそこんな何もないところで待機してもすることないからなぁ……なんか本でも持ってきておけばよかったかな。後万が一瘴気獣が出た時ノインさんだと対抗が難しいから、可能な限りに近くにいた方がいい気がするし。俺がノインさんを守らないと! 男がとか女がとかあまりいうつもりはないけど、一応元男としてここまでほぼ完全に護られるだけだったのってちょっとあれやん?
瘴気獣相手なら、一応ザルツベック大空洞で撃退した実績あるしね! なんか小さかったけど。アリステラさんがぶちのめしたのとは比べたら子犬レベルだった気がするけど。ま、でないに越したことはないんだけどさ。
ちなみにそんなこといいつつ無駄に植えた場所とノインさんの間を往復したわけだけど(ノインさんには何故か「寂しかったの?」とくすくす笑われてしまった。違いますよ!)、特に何事も起きなかったです。草も何もなく、動物どころか虫一匹見かけない寂しい大地の上をただひたすら歩いただけで終わりました。やはり次回以降は暇つぶしを持ってこようかな……
後道中はそんな感じで完全な無風状態だったけど、植えたスールには変化があった。──残念ながら移動して戻った後確認したら、追加で1本枯れてしまっていた。これで残り2本。……2本残っただけでも良かったと考えるかな。
これから更に昼夜や天候の変化がある程度入った後の状態を見て、大体10日前後したら再び確認に来る予定だ。その際にこいつらが枯れていなければ、俺達の目的の第一段階が終了だ。
……そう、あくまで第一段階でしかないんだよな。いくら瘴気の中で生き残っても、人を侵した瘴気の影響を消すという効能が消えてしまっているようだったら意味がない。いや、全ての生命を殺す瘴気の中で生きているだけでもすごいのかもしれないが……ただ生えているだけじゃなぁ。
俺は去り際に、パンパンと手を叩きお祈りをする。
10日後もこいつらがちゃんと生き残ってますよーに!




