表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/101

再びのエクレール①


「リズ、ちょっと庭に行ってハストの実とゼレキア草とってきて」

「はい、わかりましたわお姉様!」


キッチンで昼食の支度をしている俺を、リビングの方からずっと楽しそうに見ていたリズに向けてそう声を掛けると、彼女は即座に体を起こして元気よく外へと駆けて行った。


別段そこまで急いでもらわなくても大丈夫なんだけど……まあいいか。


──俺達が長い旅の目的を果たし、俺とユマの本拠と言えるエクレールに戻ってきてからすでに一か月程が経過した。


戻ってきて最初にしたのは、家の賃貸契約だった。理由は──リズがこのまま一緒に暮らすと言い張ったせいだ。


ひとまず旅は終わったのでエクレールへの帰還を持って護衛の契約は終了となったのだけど、「お姉様と離れるなんて嫌です!」といって契約が終了しても俺の護衛を続けると買って出たのだ。


いや無償とか大丈夫か? と思ったけど、よくよく考えたら彼女は公爵家のご令嬢な訳で、手持ちの資産だけでも当面働かないでもやっていけるらしい。かといって、それこそ冒険するでもなく辺境に近い街で平民を護衛して暮らすってそれでいいのかという考えもなかったわけじゃないけど……


それなりに長い期間一緒にいたし、懐かれたのもあって情も当然の様に沸いてはいたので、受け入れる事にした。彼女が信用できる相手なのはもうわかっているし、そうなるとこちらとしては強く拒否する理由は一つもないからな。


ちなみにノインさんの方は普通に契約を終了し、もう護衛からも離れている。というかリズの方がおかしいので。彼女はエクレール帰還後一度だけ近隣の森の護衛をしてくれた後に、エクレールを離れた。ただ別の契約を受けたわけではなく、一度故郷に戻ってくるとのことだ。彼女の故郷はこのエクレールより更に瘴気の汚染区域に近いところにあり、一度様子を確認してきたいらしい。


確認が終わった後にまた一度エクレールに立ち寄るといっていたから、少なくともそう遠くないうちにもう一回は会えるだろう。


それで話を戻して。


俺はエクレールを離れる直前の頃はすでにユマの家に一緒に住んでいたし、元住んでいた家はエクレールを離れる前に引き払っちゃったけど、さすがにリズも含めて三人で暮らすにはあの家ではちょっと厳しい。それに今後は割と頻繁に薬草を生やす事になるから、あまり外から見えない感じの庭が欲しかった。なので改めて家を借りる事にしたんだが──


幸いな事に(そして大家にとっては不幸な事に)以前俺が借りていた家がまだ空き家になっていたので、速攻で契約した。あそこなら広さもそこそこあるし、丁度いい庭もある。それに頻繁に行き来する事になるユマとの家との距離もそこまでじゃない。なによりあそこは数か月住んでいたので住み慣れている。悩む理由はなかった。以前ここを離れた理由である身の安全の問題も、若いながらも優れた術士であるリズが一緒なので心配なくなったしな。


ということで、今俺は以前住んでいた家でリズとユマと一緒に暮らしている。


そう、ユマも一緒だ。知っての通り彼女はきちんと自宅を持っているが、曰く「仲間外れは嫌よぉ」ということでこちらで暮らしている。尤も彼女がこの家にいるのは夜とか食事時だけで日中は殆ど調合や研究の為に自宅の方に入り浸っているけどね。ようするにこっちが自宅で、ユマ自身の自宅の方はオフィスみたいな感じ? になっている。


多分そのユマだけど、もうすぐ帰ってくるんじゃないかな。いろいろ手が離せなさそうな日はお弁当作って渡したり、昼時に料理を届けたりしているけど(なおそんな事していたらユマに「甲斐甲斐しいお嫁さんみたいねぇ」とか言われた。え、俺の方が嫁なの? 確かに家事全般俺がやってるけどさ……ユマは忙しいし、リズはさすがに元公爵令嬢なのでそこまで家事が得意じゃないから……)、今日は比較的手がすいてるから一度戻ってきて食べるって言ってたし。「ヒビキのごはん、出来るだけ出来立てが食べたいしね!」だってさ。


ちなみにリズはリズで「お姉様の手料理が毎日食べれるなんてここは天国ですわ!」だそうだ。


まぁ二人ともバイアスやお世辞が入っていると思うけど、気持ち的には勿論嬉しいので毎日いろいろ献立を考えちゃったりしている。──いや本当に俺新妻か何かか?


とまあ、そんな感じでスリリングさのある生活も終わり、久々のスローライフともいえるゆったりとした生活を満喫しているわけではあるけれど。


勿論俺達は無為に毎日を過ごしているわけではない。何せ、ひとまずの準備は揃ったので。当初の計画通り、俺達は動き出している。


その計画とは──スールの品種改良である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ