みんなでお風呂②
「ロア高原の最寄りの街へは7日間くらいかなぁ」
「そこからは徒歩で1日半位で目的地に入れますわね」
俺の問いに答えてくれたのはユマとリズだった。
元々ハザト大森林の次の目的地は決まっていた。それがロア高原だ。
ルート系にはハザト大森林、ロア高原、ザルツベック大空洞という手順で進む事になっている。
ユマが今回一番の目的としている薬草は、ザルツベック大空洞にある。なのになんでこの順番かといえば理由は二つある。
一つは単純に距離だ。出発地点となっているエクレールから見るとザルツベック大空洞はかなり遠い。
そしてもう一つは難易度だ。ハザト大森林はハリオンという獣がいるが、それ以外はそこまで危険な生物はいなかった。そもそも本来はハリオンだって縄張りに入らなければ接触しないハズだったし。
それに対してロア高原、ザルツベック大空洞は危険な怪物が多い。特に行動可能範囲が狭まるザルツベック大空洞はまったく身を守る手段を持たない人間がついていくのは自殺行為だ。
なので、そういった危険地帯の探索に慣れていない俺に難易度の低いところから慣らせていくのと同時に、各地で生えている自衛の手段となる草を入手していって俺の能力を底上げする。そしてザルツベック大空洞に突入するまでには俺の力を公開して大っぴらに使えるようにし、いざ突入──というのが、俺とユマが立てた計画だった。
ハザト大森林の探索はもっと時間をかける予定だったし、能力の公開をこんなに早くするつもりはなかったからいろいろ予定が狂ってるけど。
「お姉さま、ロア高原はハザト大森林ほど近くに街がないので確実に野宿する事になると思いますけど、大丈夫ですか?」
気が付くとすぐ横から声が聞こえる。左側にいたリズがいつのまにか側に来ていた。湯舟に身を沈めたままじりじりとこちらへと移動してきていたらしい。そのままぴったりと俺に身を寄せてくる。
うっ、湯舟で火照った柔らかい肌の感触がっ……いやでも女同士だし、ここで過剰反応するのもっ……割とユマがスキンシップ激しいから感触だけならわりかし慣れてるけども、全裸での感触は男の意識が十二分に残っている俺には平常心を保たさせてくれない。まぁ二の腕が触れてるだけで胸が押し付けられているとかそういうわけじゃないけど……この子は俺が男だと知っているのに、こんな事するなんて……そんな悪い子は大変な事になるぞ!
……いや、最近の態度を見ていると「大変な事にしてください」とか言われかねないのでやめておこう。
とりあえず胸の高鳴りに気づかれないように俺は体だけを背けつつ、リズに答えを返す。
「経験はないけど、多分大丈夫だと思う」
少なくと外だから寝れないとか繊細な事はないハズ……いや今ある意味繊細な反応見せちゃっているけども。
「皆は大丈夫なの?」
「私は職業から野宿はそこそこするので慣れておりますので」
「アタシも学生時代のフィールドワークや薬草採取でしたことあるから平気ぃ」
「わたくしも学園の実習でしたことがあるから平気ですわ!」
未経験者は俺だけか。他の二人はまぁそうだろうとは思ったけど、公爵令嬢のリズまで経験済みなのはちょっと想定外だったな。やっぱりファンタジー小説みたいにダンジョン実習とかしているのかな?
「まぁ寝れなかった場合、いいポーションがあるから平気だよぉ」
……そういう薬で眠った場合ちゃんと疲れを取れるもんなの? と思ったら単純に眠気を促進させるだけで、むしろがっつり安眠できる薬なのだそうだ。だったら場合によっては頼ろうかな、ユマのポーションは信頼しているし。
「野宿もそうですが、ロア高原はハザト大森林と違い、確実に動物や怪物との戦闘が発生すると思いますので、それも合わせて覚悟は決めておいてください。勿論私がお守りいたしますが。結局ハザト大森林では殆ど仕事をしていないですからね」
「勿論わたくしもですわ! わたくしの実力、お姉様にお見せいたします!」
「二人とも、頼りにしてるよ」
ハリオンと遭遇するまで危険な動物とは遭遇していないし、ハリオンと会った後以降は完全に無風状態だったからな。二人とも護衛として雇われている身としてはちょっと思うところがあったのだろう。尤も何も起きないに越したことはないんだが。
その点ノインさんの言う通り、ロア高原はそこら中を好戦的な動物や怪物が徘徊しているらしいからな。二人の力に頼る事になりそうだ。俺もハザト大森林で使えそうな植物はいくつか入手はしているけど、まだ戦うには足りなすぎるからな。
まぁ慣れておかないととは思うけど、そこまで大量には遭遇したくはないけどな。ほどほど程度の遭遇率にはなっておいて欲しい。ハリオンみたいにヤバいものを一発ツモとか心臓に悪すぎるからな。




