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みんなでお風呂


「いやぁ、しかし本当に想定以上の成果が出たわねぇ。ハリオン様々だわぁ」


空間に、ユマのちょっとだけ間延びした声が響く。


その声は普段話している時よりよく響いている。その理由は単純、周囲に広がる湯気の為だ。


そして湯気が広がっている理由は単純。ここが風呂場だからである。


ハザト大森林での採集を終えてハザリアの街から離れた俺達は、一日馬車に揺られて次の街に来ていた。今いるのはその街にある大き目の浴場だ。一泊だけだし、ハザト大森林で想定以上に貴重な薬草を集められたおかげで金銭的な余裕も出たから、ちょっと奮発して上位の宿屋に泊まる事にしたんだよね。


こっちの世界、現代日本みたいに毎日お風呂に入るって習性はないけど、お風呂に浸かるっていう文化自体はあるんだよね。んで安めの宿だと浴びるだけのための施設しかないけど、お高めの宿ならちゃんと湯舟がある。しかも今回の宿は大風呂借りたわけだ。


で、そんなお風呂を借りたので当然皆で入ろうって話になったわけで……


「ねぇ、ところでヒビキ。なんでずっと背中向けてるの?」

「気にしないでくれ」


他の三人はそれぞれ湯舟の縁を背にして向かい合うようにしているが、俺だけは縁の方を向いて体を丸めていた。その理由は……まぁわかるだろ?


「……もしかしてお姉さま恥ずかしいんですか?」


リズのその問いには後ろを向いたまま首を振る。別段裸を見られる事自体は恥ずかしくない、まぁおおっぴらに男に見せる気はないが、ここにいるのは女性だけだし。


「もしかして、アタシ達の裸見るのが恥ずかしいのぉ?」


ユマの声に体がぶるっと震える。その反応を見て、それが正解と思ったのかノインさんが言葉を続けた。


「同じ部屋で過ごしているので今更では?」


ごもっともなんですけどね?


いや自分でも問題ないと思ったんですよ。同じ部屋で過ごしているから油断しきった姿とかはよく見てるし、着替えの時に胸とかが見えちゃうこともあるから。そう思って風呂の誘いには普通に乗ったんだけどさ……いざ全裸のみんなを前にしたらまぁ特定の部位に対して視線が吸われる事吸われる事!


やっぱり一瞬見える程度とがっつり肌色が目の前に広がっているのは別物でしたわ! というかこっちの世界に来てからは基本女として暮らしているわけで(体が女なのだから当然だが)、女性達との共同生活に慣れたこともあり意識はもう大分女によってるんだろうなーと思ったけど、うん、やっぱ長らく育ってきた男の意識はそう簡単には消えねぇわ!


で、だ。


皆は俺の中身が男だって事はすでに知っているわけで、一緒に風呂に入るのは構わなくてもさすがにガン見……はしないでもちらちらとデリケートな部分を見られるのは気分がよくないだろう、と思って背中を向けたわけである。だって視線が吸われるのは止められないもの。


「そもそもお姉様にも立派なものが付いているではありませんか。なのに気になるんですの?」


そうなんですけどね。でも自分のについているのと人についているのは別物なんですよ。誰についているものかってのも重要なんです。


「なんにせよ、見られて気にするくらいならそもそも風呂に誘っていませんよ」

「そうそう、お話しづらいしこっち向いてヒビキ~」

「わたくしも別に気にしませんわよ? むしろお姉様なら見てもらいたいですわ」

「……うん」


さすがにここまで言われて背中を向け続けるのもどうかと思ったので、俺は首肯して体の向きを変える。とたんすごく立派なのと立派なのとほどよいのが目に飛び込んできたけど心頭滅却心頭滅却。とりあえず視線をできるだけ上の方に向ける意識はして、と。それでも吸われてしまう分に関しては……心の中で感謝と謝罪をしておくことにしよう。


「それでさ、次の目的地までどれくらいかかるんだっけ?」


黙っているとどんどん視線が落ちていくのを感じるので、少しだけでも意識を逸らすために俺は話を振る。


ハザリアの街を離れた俺達であるが、当然次の宛てもなく離れたわけではない。次の目的地はちゃんと決まっている。その辺は事前に聞いているが改めて確認をするために聞くことにした。


……別に他に聞くことが思い浮かばなくて、焦ってわかり切った事をきいたとかいうわけじゃないんだからね!

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