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ハザト大森林⑫


ハリオンの背に乗ったまま進み出た広場は、大きく開けた場所だった。頭上に光を遮るものはなく、森に入ってからは殆ど感じる事のなかった全身を包み込むような陽光が周囲を照らし出す。


そしてその光によって照らし出された大地は……ひどい有様だった。


開けているからといって、そこは開拓された場所では決してない、むしろその逆だ。


そこら中に枯れた木々が倒れている。見ればその殆どが焦げていた。炭化して真っ黒になってしまっているものも多い。恐らく森林火災の影響なのだろう。


そんな有様が、かなりの範囲で広がっている。広大なハザト大森林全体から見れば極一部ではあると思うが、それでもかなりの範囲だ。


そんな中をハリオンはゆっくりと進んでいく。そして、炭化した木々の少ない場所でその足を止めた。


俺を背に乗せていたハリオンが地面に伏せるようにしたので、降りろということだと理解し、ゆっくりとハリオンの大きな体から降りる。


『ここだ。ここが尤もコッコラが群生していた場所だ』


脳内に響く声に、俺は地面を眺め見る。


見えるのは炭化した木々とむき出しの地面で、コッコラの蔓のようなものは見えない。


……いや。


俺はあるものに気づき、その側にしゃがみこむとそれを手に取る。


「枯れてる、わね」


そんな俺の手元を覗き込んで、ユマがそう口にした。


彼女の方を振り向いて、俺は頷く。


これはコッコラの蔦だ。ただ茶色く変色しており、明らかに枯れてしまっている。俺の能力は地面から生えている生きている植物にしか通用しないから、これが枯れてしまっているなら成長させることはできない。


だけど、俺はここでコッコラの性質を思い出していた。宿で調べていた内容を考えれば、もしかしたら──そう思い、俺はその枯れた蔦を持って地面に力を通す。蔦沿いに、探るように……


そして途中で返って来た感覚に自分の予想が間違っていなかった事を悟ると、一気に力を流し込んだ。


『ほう……』


それによって生じた結果を目にし、大ハリオンが感嘆の声を上げた。


地面から、立て続けにいくつかの蔦が芽を出したかと思うと、一気に周囲に広がるように伸びたのだ。更にはその伸びた蔦の中にいくつもの花が咲き、そして巨大な実へと姿を変えてゆく。


成功だ──。


これは、俺が新たに生み出したものではない。


いやぁ、事前に調べておいてよかったわ。知らなきゃ上手くそこまで力を通せなかったと思うし。まぁ俺が知らなくてもユマが知ってただろうけど。


コッコラは地上に出ている部分に関しては蔦を伸ばし地面や他の植物に絡むように成長する植物だ。なのであまり高さとかはない。だがそれとは裏腹に地面の中では大きく地中深く根を伸ばす植物だ。更にはその伸ばした根から幾つもの芽を出す。


だから、森林火災の熱で地表に近い部分は駄目になっていたとしても、地面深くの根っこはまだ生きているのではないかと思い、蔦沿いに地面に力を這わせ根っこに力を送り込んだのである。


そして思惑通り、俺の力を得たコッコラはその力を養分として一気に成長してくれたわけである。しかもこの根っこかなり立派に育っていた奴らしく、一つを成長させただけでいくつもの芽をだしてくれた。


その光景に安堵のため息を吐くと、周囲のハリオンの数匹が吼え声を上げた。これまでは静かにしてくれていたのに突然の獣の声を聞かされて、思わず体がビクッと震えてしまう。すると、声を上げたハリオン達が、大ハリオンの方を一度見た後にくぅーんと情けない声を上げてうつ向いた。大ハリオンが脅かすなと思ってくれたのだろうか?


まあそれは置いておいて。ともあれ、これならハリオン達の期待を裏切らないですみそうだ。ここが元々群生地であるなら、地下に向かって力を伸ばせばコッコラの根を上手く拾えるだろう。根からとはいえ元から存在している植物に対してなら、ゼロから生やすより大分消費少な目でコッコラを生やすことができる。これによって俺達の安全は完全に確保できたといってよい。彼らの好物であるコッコラを成長させることができる俺達を害するメリットが彼らにはないからな。


「よし」


俺は服の袖をちょっと捲って気合を入れる。


このヒビキ様がこの地をコッコラが一面に広がるハリオン達の楽園に戻して差し上げましょう!





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