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ハザト大森林⑪


『何度も言わせるな。返事をしろ、娘よ』

「あっ、はい、すみません……」


思わず畏まった口調で返してしまった。だって圧が凄いし。


『もう一度問うぞ。お主はコッコラを生み出す事が出来るのか?』


大ハリオンはこちろをじっと見つめたまま、そう俺に対して告げてくる。その口は動いていないのでやっぱりこれは念話の類だろう。


俺は一度大ハリオンから視線を逸らし、後方の三人の方を振り返った。


……ユマはただ大ハリオンの方を見つめていたが、残りの二人はハリオンと俺の間で視線を迷わせている。


この念話、他の皆にも聞こえているのかな。聞こえてるっぽいかな。


というか、聞こえていなかったとしてもこの大ハリオンに対して嘘をつく度胸はない。だから俺は頷き、言葉にする。


「できます」


そう告げると、俺は地面につけたままだった手から地面に力を流す。


すると、大ハリオンの前方に先ほどと同様に芽が生え、成長し、そして大きな実を付けた。


これで後ろの二人に俺の能力が完全にばれてしまったことになるが、今は非常事態だ、仕方ない。少なくとも自分と仲間の命を掛けてまで隠し通す事じゃないとは思うので。


『それはいくらでも生やす事が出来るのか?』


再び、念話。ここはちょっと迷ったが、嘘をついて後でバレると非常に不味そうな気がしたので正直に首を振った。


「力を消費するのでいくらでも、とは。すでに生えているものを成長させるのであれば、数は増やせますが」


そう答えると、すぐに返事は返ってこなかった。


静寂。子ハリオンがコッコラを咀嚼する音と虫の鳴き声だけが聞こえてくる。


動くに動けず地面に手をついた体勢のまま待っていると、ようやく頭の中に再び念話が聞こえた。


『……私についてこい』


──これはついていかないと不味いんだろうなぁ……


◆◇


……想像もしていない状況に陥ってるなぁ。


流れる森の景色をぼんやりつ見つめながら、そんな事を考える。


遭遇する可能性は想定していたし、戦闘になる可能性だって考えていた。


だけど。


ハリオンの背中に跨って森の中を駆けるのなんて想定しているわけがない。


あの後、大ハリオンが低い声で咆哮すると、四匹の普通サイズハリオンが現れた。そして今俺達はそれぞれ別の普通ハリオンの背中に跨って森の中を移動している。


なんだこの状況。


……いや、コッコラ栽培の為に輸送されているんだけどさ。


あの後、一応いろいろ説明を求めた(ユマはなんか泰然としてたけど、ノインさんは明らかに困惑してたし、リズは動揺してたので)ら、わりかしきちんと答えてくれた。


まず大ハリオンだけど、彼女メスだそうだはいわばこのハザト大森林のハリオン達の長のようなものらしい。これはユマが教えてくれたんだけど、魔獣の中に偶に強い力を得て進化する上位種のようなものが存在するので、恐らくそれだろうと。


ちなみにハリオンはハザトの森では頂点に位置する生物なので、彼女はこのハザトの森の主という事になる。


そして彼女の要望だが、俺を元々のコッコラの森の群生地に連れて行き再生をさせたいのだそうだ。

コッコラは大部分が燃えてしまったがすべてが燃え尽きたわけではないし、燃えた物もまだ根っこ部分が残っているものは多数あるそうだ。であればそこから成長させていくことでそこそこ回復させることができるかもしれない。


ユマとしか話してはいなかったが、コッコラの再生によりハザトの森の生態系をこれ以上狂わせないようにするのは目的の一つとしたところではある。断る理由はなかった。


……大ハリオンに普通ハリオン、更に子ハリオンで計6匹。更に周囲にはちらちら他のハリオンが並走をしているのが見える。……ちょっと不安が残るけど、大丈夫だろう。大丈夫なはずだ。ここまできたら大丈夫だと信じるしかない。少なくとも俺たちはハリオンには危害を加えていないし、コッコラさえあればハリオンは温厚な生物なハズなので大丈夫、うん。


あー、あと不安といえば後でちゃんとノインさんとリズに能力説明しないとなー。こっちも不安だけど。リズはずっと俺の事ちらちら見てるし。


普通ハリオンの背にゆられ、そんなことをとめどなく考えてくると急に視界が開けて来た。うっそうと茂った森が消えて、明るい光が差し込んでいる広い空間が目に入る。


そして、脳内に言葉が響く。


『ついたぞ。ここがコッコラの群生地だったところだ』


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