ハザト大森林②
「ハリオンが徘徊してるですって?」
ハザリアの街についた私達は、一晩宿で疲れを取ったあと(馬車移動も疲れるんですよ。後お尻が痛い)翌日ハザリアの街の調合士のギルドへ向かった。しばらくは滞在する予定なので先に渡りをつけておく必要があるし、卸す薬草やポーションの過不足の確認も必要だ。余剰が出ているポーションを製作しても買い取ってもらえないか、安く買い取られるだけだからね。
ユマが声を上げたのはその調合士ギルドで、ハザト大森林の情報をいろいろ収集している時の事だった。
「ハリオンって、狼に似た獣だっけ?」
俺はこっちの世界に来てから殆ど怪物や魔物と呼ばれる類の奴には殆ど遭遇したことはないんだけど、ユマの家でどんなのがいるのかとか、その生態とかはちゃんと本で勉強してある。一度ラーニングできれば生やす事ができるとはいえ、採取を仕事にしていく以上そういった場所には足を踏み入れないってわけにはいかないからね。
ハリオンは銀色の毛並みの、狼に似た獣だ。ただし尻尾が二本に別れているのと、サイズがバカでかい。確か成長すると最大で2mくらいまで到達するとあった。
「でも、ハリオンって割と温厚な獣じゃなかったっけ」
狼みたいな外見に関わらず、主食は植物だったと思うんだけど。
「コッコラの実という大きな果実が好物で、それがあれば他の獣はあまり襲わないんじゃ……」
「そのコッコラの実が、今ハザト大森林にないのです」
俺の疑問に答えたのは、調合士ギルドの職員さんだった。危険な生物の生息域を確認している間の事だ。
「コッコラがない? 確かハザト大森林には群生地がありましたわよね。まぁ採取しようとするとハリオンが警戒するので採取はできなかったようでしたけれども」
首を傾げてそう疑問を口にしたリズの言葉に、職員さんはテーブルの上に広げられた地図を指さして答える。
「2週間程前、ハザト大森林のこの辺りで火災がありました。──ちょうどコッコラの群生地があった場所です」
「火災!? 何がありましたの?」
「詳細な原因は不明なんですが……ここ最近余りハザト大森林では雨が降っておらず乾燥していたため、それが原因ではないかと思われます。森林火災の直前には雷の目撃例もあり、それが直接的な原因かと。先ほどお話しした通り、この辺りにはハリオンが生息しておりますので、あまり人が近寄る事はありませんでしたので」
そう語りながら、職員さんがぐるっと円を描くように地図の上をなぞる。
「幸いな事に、その後降った大雨で火災は森全域に広まる前に鎮火しました。ただ……」
「ちょうど、コッコラの群生地が壊滅してしまったと」
俺の言葉に、職員さんは頷いた。
「……だけど、そんなピンポイントに壊滅するものなんですか?」
ノインさんの疑問。まぁ大抵の人なら当然もつであろう疑問だ。だが俺のような採取者やユマのようなその素材を扱うものならその理由は予測がつく。
彼女の疑問にはユマが答えた。
「コッコラと生えている所によく一緒に生える、ルッザって植物があるんだけどね。これが揮発性の油分を分泌する植物で……一言でいうと良く燃えるのよ。それに乾燥が合わさってその周辺だけ燃えてしまったんだと思う」
職員さんはユマの言葉に頷き、そして改めて口を開く。
「とにかく、そういう理由でハリオンは自分達の食糧を失いました。彼らはコッコラを優先して食べますが、雑食です。そしてコッコラ以外の植物は殆ど食べません。その結果、食料を求めて彼らは森の中を徘徊しています」
ハリオンは巨大で力も強く動きも早い。彼らが狩猟者となった以上、大抵の獣は彼らの餌となるだろう。そして森の獣たちは人間とそれ以外を区別しない。もし、森の中で腹を空かせた状態の彼らと遭遇したら、戦闘に突入する事になるだろう。
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