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出発


ちょっと想定外の人物ではあったものの、予定通り魔術士一人近接一人の護衛をゲットする事が出来た俺達は、出発の準備を進める事になった。


あ、もう一人の護衛予定者であったノインさんとは恙なく契約しましたよ。元々彼女の方はこちらが希望した人材であったし。


多分わりとすぐわかることだし、後で問題にならなように俺が異世界人である事、元の世界では男であった事も伝えた上で問題ないといってくれたので、一発署名である。


ちなみに伝えたのは異世界人である事だけ──というわけにはいかなかった。


というのも、ノインさんに聞かれてしまったのだ。危険地帯に俺がついていく理由を。


うん、そうだよね。そう思うの当たり前だよね。知っての通り俺は戦闘に関しては何の役にも立たないクソ雑魚だ。ついていっても役に立つどころかむし邪魔なだけ。


ノインさんは以前護衛をしてもらった事もあるから俺が薬草の採取を行っているというのは解っているけど、今回はユマもいる。調合士である彼女は当然薬草に詳しい訳であり、彼女がいるのに俺がわざわざ危険地帯に出向く必要性が皆無なので。


薬草の知識が本業のユマよりあるからって言い訳も厳しいし……さらに言えば俺は現地で薬草に触れる必要がある。それこそ知識があっても本来はそこまでする必要がないだろう、確認するにしたってノインさんに採取してきて貰ったのを確認すればいいだけだ。


なので、能力の内、"触れた植物の情報が入手できる"事だけは伝える事にした。


この能力だけなら、知られても殆ど何の害もない。"知識"でいくらでも代用できる能力だからな。完全に未知のものに対してなら意味があるかもしれないけど、そんなものはめったに存在しないだろうし。


とはいえこの能力はこれまではユマだけ、そして今回教えた二人しか追加で知らないわけで。もしこの情報が他にもれていた場合はこの三人の誰かという可能性が非常に高いという事になる(一応これまで使っているところを見られてバレた、という可能性もなくはないが)。逆にいえば周囲にもれる事がなければ、二人はちゃんと契約を守ってくれているということになる。言い方は悪いが、彼女たちがどれだけ信頼できるかを試すことが出来るのだ。


今後の予定として、勿論最初の内から危険度が高い場所──ダンジョン等に行くつもりはない。俺は前述の通り役立たず、ユマも戦う手段はあるがほぼ実戦経験無し、リズロッテさんは恐らく実力は申し分ないのだろうがやはり実戦経験はほぼ無しなのだ。一定以上の実戦経験を持つのは現状ノインさんだけだろう。


だから最初の内は、エクレールの近隣の森のような植物資源が豊富な場所で、用途的な理由であまり流通していない薬草の類を狙っていく。


だが、それでユマの研究の進みが芳しくなければ、いずれは用途的な理由ではなく入手難度的な理由で流通していない薬草を入手するためにダンジョンとかに潜る必要もあるだろう(なんでか奥深くに生えてる薬草とかあるんだよな……)。その頃になったら、俺も多少は()()()役に立てるようにはなっているだろう。……なってるといいなぁ。


一応調べる限りだと、元の世界にはないような面白い効果を持つ植物があるのでその辺を生やせるようになったら、うん、少しは役に立てると思うんだよ。あくまでちょっとだけだけど。しかもそれらの植物、ラーニングするのも苦労しそうだけど。


少なくともその頃には、二人に全能力を告白するつもりである。その頃には見極めも済んでいるだろうし。


「ヒビキ、忘れものなぁい?」


出発の日。戸締りをしながらそう聞いてきたユマに俺は頷く。


俺の家は、賃貸契約を解約した。当面エクレールに戻ってくることはないと思うので、植物の面倒も見れないしな。ユマの家は持ち家なのでそのまま残して置くとの事だったので、手持ちの荷物はそちらに置かせてもらう事にした。どうせ数か月分の私物だ、しかも必要な物はもっていくので大した量もない。


「よし、完璧。それじゃ行こうか、ヒビキ」


最後のチェックを完了したユマが、改めて荷物を背負いなおしてから俺の手を握ってくる。おれはその柔らかい掌の感触に逆らわず、彼女に手を引かれるまま歩き出しながら一度だけここ最近暮らしたユマの家を振り返った。


しばしのお別れだ、エクレール。

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