リズロッテ・アークレイン②
とりあえず話は一度持ち帰る事にした。
あの場所でいろいろ話し込んでいると、俺の事をいろいろ口を滑らせてしまう気がしたので。
まぁ能力の事と違ってそれなりに知っている人間がいる異世界人の件は、絶対に知られちゃいけないって事はないんだけど。ただ伏せておける所は伏せておきたいってだけで。
職員さんの話だと、今回の報酬と仕事内容で実戦経験無しとはいえ実力がきっちり見込める術士が応募してくる可能性は高くないそうで、このまま依頼した方がいいと思いますよとはいっていたけど。
後上手くいけば公爵家のコネも作れますしねともいっていたが、そっちはいらないです。そういうコネ作りたかったらそもそも王城に残ってたんで。勿論言えないけど。
というわけでユマの家まで戻って来た俺たちは、改めて今回の件に関する相談を再開していた。
「で、ユマ。このアークレインさんが俺絡みの人間じゃないかって、どういう事だよ。少なくとも公爵令嬢なんて相手と知り合いになった記憶はないぞ?」
斡旋所でユマはその事を言った後、その先は口にしなかった。職員さんがいたからな。
勿論ユマは俺が当初王城にいたことを知っているのでそこを考えているのだろうが、あの時王城で接触のあった人間の中にリズロッテなんて少女はいなかった。王城で俺が会ったのは王族と貴族の当主であるおっさん達、それから令息で、あとは護衛とかをしてくれた騎士たちと面倒を見てくれた侍女さん達に役人のおっさんだけだ。
王城の中だったので、侍女とか騎士の中にも貴族の令嬢令息はいたんだろうけど、さすがに公爵令嬢が侍女や騎士はやってないだろう。というかそもそも学生だったから、王城で働いているわけがない。
ああ、でも侍女の中にリーゼやロッテーシャっていう名前が微妙に掠ってるのはいたな。掠ってるだけだけど。
とにかく俺はリズロッテという人物どころか、そんな高位の令嬢は王家のお姫様くらいにしかあっていないとユマに伝えた。
「むしろユマの知り合いだったりしないの? ほら、学園で一緒だったとか」
「アタシの同期に高位貴族の令嬢はいなかったわねぇ。というか貴族の令嬢で調合士になる人間なんて殆どいないわよ」
「うーん。となるとお互いの知り合いの線は消えるなぁ」
「ヒビキに関しては知り合いじゃなくて、監視のようなものかもしれないかも?」
それはちょっと俺も思ったけど、監視を付けるならそもそも王城を出た時に付けるだろう、それに。
「そもそも監視役に公爵令嬢、しかも魔術学院出たばかりの子を使わないだろ」
「それもそうねぇ」
人材としては不適切すぎる。
「となると後考えられるのは、俺を囲い込みたいって事ぐらいだけど」
貴族としては、確かに異世界人を囲い込むのはステータスだ。だが、王城にいた時そういった話を持ち込んで来た家名の中に、アークレインという名前はなかったハズ。
「それにしたって今更よね」
「あー、もうわからん!」
「そうねぇ。情報も足りてないし……案外異世界人マニアで単純にお知り合いになりたいだけだったりして」
「むしろそれの方がわかりやすくて助かるよ」
変な思惑がない分、むしろそれの方が付き合いやすいと思うし。
「何にしろ、これ以上悩むだけ無駄ね。今わかるメリットとデメリットだけで考えましょう」
「んだな。デメリットは、俺の能力がばれた場合、王国にそれが伝わる可能性が高いって事だよな」
「メリットは優秀な女性の魔術士をお手頃価格で雇える事よね。どうする?」
──デメリットに関しては、もし相手が公爵令嬢じゃなかたっとしても起こりうるリスクだ。可能性が高いか低いかだけ。知ったら連絡をするかもしれないが、少なくともそういった目的で接触したのではないだろうという事は、さっき二人で話した通りだ。
そう考えた俺は、決断にさほど悩む事はなかった。




