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リズロッテ・アークレイン


とりあえず条件には概ね合致しているようなので、その応募者の情報を見せてもらう事にした。


渡された書類を、ユマと顔を寄せながら目を──ユマ、わりといつもいい匂いしてるよな。調合士だし、香水も調合してるのかな?


──ではなく。


思わず香って来た匂いに意識がそっちに引っ張られかけたが、気を取り直して書類に目を通す。


リズロッテ・アークレイン。魔術士。得意術系統は攻撃魔術全般。年齢は16歳。カルバネ王国──俺を呼び出したこの国だ──出身で、現在は王都に滞在している。実戦経験欄の記載はなし……というか斡旋所への登録もつい最近で、ニュービーもいいところだ。


そもそも、つい最近まで学園に通っていたらしい。本年度の王立魔術学院の首席卒業生だそうだ。


ん? 首席卒業生?


……


「首席卒業生!?」

「ひゃっ!? 何っ」

「……あ、ごめん」


目に入った文字に思わず腰を上げてしまったため、横に座っているユマが驚いていた。


俺は彼女に頭を下げ、腰を落としてもう一度資料に目を通す。


……うん、やっぱり首席卒業生って書いてある。


「なあ、ユマ」

「何かしらぁ」

「王立魔術学院のレベルって、どんなもん?」

「カルバネ王国にある魔術学院としては最高峰ねぇ」


だよな。王立だもんな。


そこの首席卒業……ようするにめっちゃエリートだよな。


「なんで、そんな逸材がこんな地方の護衛の募集に応募を?」


考えられるのは雇い主である我々が(一応)女二人だということだろうか。


「急ぎで仕事を見つけたいとかかね?」


でも、それにしたってなぁ。初仕事だし男に囲まれてより女性メンバーで仕事したいってのはあるかもしれないけど、エリートが選ぶ仕事かぁ? しかも単発の仕事じゃなくて長期の仕事だぞ?


報酬だって、別に破格ってわけじゃない。ユマと斡旋所の職員さんが相談して決めた、相場とほぼ変わらない価格だ。


「……正直急ぎで仕事を見つける必要があるとも思えないのよね」


ユマもやはり疑問を感じているのだろう、眉をひそめて書類と睨めっこしていた。というか、その言いぶりだと相手がどんな相手かある程度予測がついている? この経歴書みたいな奴だけで?


「もしかして、知り合い?」


ユマは王都出身だし、年齢もこのリズロッテさんと大きく離れているわけではない。もしかして? と思ってそう聞いてみたが、彼女は首を横に振った。


「知り合い、ではないわね。でもこの家名は知っているわ、というかこの国の人間なら大抵知っている家名よ」

「そうなの?」

「ええ。アークレインといえば、うちの国の公爵家の家名だもの」

「へー、公爵……」


……


「公爵!?」

「ええ、公爵よ」


公爵って、確か貴族階級の中では王家を除けば一番高い位にある階級だよな?


「な、な、なんでそんなお嬢様がこんな募集に!?」

「それはわからないけど」

「普通公爵家のお嬢様って、こんな募集に応募して来たりするんですか?」


俺の問いに、職員さんがはぶるんぶるんと大きく首を振った。


「貴族の方でも探索者や冒険者をやる方はいらっしゃいますが、ウチのような斡旋所で仕事を受けるのはせいぜい男爵家や子爵家、或いは伯爵家の三男以降の方とかだけですよ。公爵家や侯爵家の方が斡旋所で人を募集するということはありますが、さすがに募集に応募して来たなんて話は聞いた事がありません。あったとしてもそれは熟練の方で、初仕事でしかも護衛の仕事を受けるとは……」


ですよね。


お嬢様って言われたら、普通は守られる方だもんな。守る側に回るとしても、それだったら相手は王族とかになるのでは? 少なくとも地方の平凡な一募集に応募してくるなんて話、意味がわからん。


書類を見直してみるが、ここに書かれている情報だけではこのリズロッテさんの意図は全くつかめない。俺が頭を抱えていると、ふとユマがじっとこちらを見ている事に気づいた。


「……? どうしたの、ユマ」

「ねぇ、ヒビキ。これ、貴女がらみじゃないかしら」





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