採取(偽装)に出発
結局のところ、俺はあの場でユマに対して口に出した通りにすることにした。
要するに、街から出た後はあまり街から離れずフラフラしてから帰る感じで。採取に行ったと思ってもらわないといけないから門番や街の住人の目のあるところ、それに街道沿いからは外れるけれど、すぐにそういった場所に戻れる場所をぶらぶらうろついて戻る、そんな感じだ。
実際のところ、ここ最近で一人でいって問題なさそうなところ──街の周囲の草原や森の外周部分はおおむね散策済みで、新種を発見する可能性も大分なくなってきた。こないだ一つ見つけられたのは幸運だっただろう。
だから、散策ができないのはそれほど痛手というわけでもない。ただ用もなくぶらぶらと歩くというのはちょっと空しくもあるが。
どこかくつろぐのにちょうどいい場所を見つけたら、本を持ち込んでそこで読書にふけるのもいいかもなー──などと思いつつ、俺は街の入り口となる門をくぐった。
いざという時の為に、俺が散策に出ていることはきっちり覚えてもらわないといけないので、こっちにきてから覚えた笑い方で門番に挨拶をしておく。美少女の極上の笑みを受けた門番さんは、ちょっと顔を赤らめつつも「気をつけて」と見送ってくれた。純真な門番さんだねぇ。
さて、と。
とりあえず採集に行くはずなのに森とは別の方向に行くのはおかしいので、しばらくはいつもと同じ道程だ。ある程度歩けば、この辺りは平地とはいえすべてが平坦ではなく街道から離れれば起伏があったり森とはいわないまでも樹木や岩があったりするので、街からは姿が見えなくなる。
日付は快晴、降り注ぐ陽射しを全身に受けながら、せっかくだしそろそろ森の奥に行こうかなーとか考える。勿論今日ではないけれど。
前述のとおり、一人で回れる場所でラーニングできる薬草に使える植物は概ね集め終わってる。であれば、散策としては森の奥の方へ進むしかない。どちらにしろ森の奥の方へ行くなら護衛を雇う必要があるし、腕の立つ護衛が居ればチンピラも気にする必要がないだろう。そもそもチンピラが人を襲う獣のいる森の奥にまで出没するとは思えないけどさ。
腕の立つ護衛となるともちろん費用はかかるが、その辺りは必要経費だ。うまくレア薬草あたりを見つけられれば早期に取り返すことが可能だし、そうでなくても生やすことができる植物の種類を増やすのは将来的にやらなければいけない事なので問題ない。
ただ、人選がなー。
エクレールのあたりは、正直あまり腕の立つ冒険者の類はいない。瘴気の最前線からはちょっと離れてるし、森の中にはちょいと危険な獣はいるけど、彼らは森の奥から出てくることはないし。ダンジョンの類もない。
しかも俺の場合、雇うのは当然女性としたいので。申し訳ないが自分の身を護る手段がない以上、やはり薄暗い森の中であまり親しくもない男性と二人っきりだというのは怖すぎる。報酬は任務達成後に斡旋所から払われるから金銭目的の強盗はないだろうし、ちゃんとした斡旋所から雇った相手が自分の欲望に負けて手を出してくる可能性は少ないと思うけど……正直、俺は可愛いので。ちょっと色欲の強い相手だったら魔が差す可能性がないと言い切れない。
──元の世界であまりそういったものを読んだことはないんだが、ネットとかで話に聞いたエロ同人な目には当然合いたくない。
なので、雇うのは女性だ。勿論女性相手でもそういった目に絶対合わないとはいいきれないが、確率は更に低くなるし、なんならそういう目にあわされても、心が死ぬことはないだろう。なんなら相手が美人さんなら役得──
いやなんでもない。
とにかく、相手は女性。ただ当然といえば当然だけど、女性で腕の立つ相手となるとなかなか見つからないのが悩みだった。
「んー、ノインさんがまた雇われてくれないかなー」
以前一度森に潜った時に護衛として雇った女性。彼女は腕もたつし、その行動もこちらにちゃんと気遣いをしてくれているものだった。できれば彼女をまた雇いたいけど、彼女はエクレールに住んでいるわけではなく仕事でいろんな街に出向いたりするので、そう簡単には捕まらないだろう。
「……とりあえず斡旋所に、彼女がエクレールに着たら声をかけてもらえるようにお願いしておこうかな」
そんなことを呟きつつ、俺はのんびりと足を進めていく。門番の視界から外れたらどうやって時間をつぶそうかと思いつつ。




