まったり雑談タイム
「あー……おなか一杯だぁ」
壁際に乱雑におかれたソファに身を投げ出すユマ。その豊満なアレが押しつぶされるのに一瞬目を取られつつも、俺は苦笑とともに彼女に忠告する。
「こらこら、食べてすぐ横になるのはよくないよ」
「はぁい」
言われることをわかっていたのだろう、彼女は素直に頷いて体を起こすと改めてソファに身を沈めた。
「いやぁ、相変わらずヒビキのお野菜はおいしいねぇ。ほんと、これ高く売れるんじゃない? 領主様とかでも買ってくれるでしょ、これ」
ユマの言葉に、俺はもう一度苦笑する。
「家庭菜園での栽培なんだから、商売するほど数作れないって。っていうか売り物にしたらこうやってユマにお裾分けできなくなるけどいいのか?」
「だ、だめ、やっぱりなし! 売っちゃダメ!」
俺の言葉に慌ててバタバタとするユマの姿に、今度は苦くない笑みが浮かぶ。
「でしょ? それに俺もこうやってお裾分けした見返りとしてユマのおいしい料理のご相伴にあずかりたいし?」
そうストレートにいってやると、ユマは頭をぽりぽりと掻きつつあははと嬉しそうに笑う。
──そう、ユマの料理は美味いのだ。
同じ素材を使って自宅で料理を使っても、ユマの料理程おいしくはならない。間違いなく彼女は俺より数段上の料理の腕を持っている。
それに、調合士という職業柄なんだろうか? 彼女の家にはスパイスや調味料の類がたくさん揃っている。そのお陰で同じ食材を使っても味のバリエーションが非常に豊富だ。自宅とかその辺の食堂だとどうしても味が単調になるんだよな。
最近では俺の味の好みを把握してきたらしく、食べるごとにどんどんおいしくなってきている。正直この点だけをみると嫁に来てほしい。あるいは俺が嫁に入る。
まぁそんな戯言はおいておいて、いずれは前の世界の料理を再現してもらおうかなーとなどは思ってたりする。やはり世界が違うと味付けの感じもだいぶ違うんだよね。こっちの料理もまずいわけじゃないんだけど、なんというか物足りなさを感じる事も多いので。いつもなんて贅沢はいわないけど、たまには食べたくなるじゃん。
後、あまり時間がたつとそもそもその味自体を忘れて再現できなくなりそうだからな。いくつかはまだ記憶にあるうちに再現したいところ。スパイスとかいろいろあるみたいだし、特にカレーとか再現したい。
そういえばこの世界の野菜とかスパイスだけど、一部元の世界のものと全く同じものも存在している。しかもなぜか名前も一緒なんだけどどういうことなんだろ? 実際は違う呼び名なんだけどわかりやすいように自動翻訳されてるんだろうか? よくわからん、まぁ結果として助かってるのでいいか。そいつらは安心して食べれるしな。
さて、ともかくは昼飯を終えて(ユマにとっては朝昼兼帯だが)。
俺たちはまったりした時間を過ごしていた。
俺はもう今日は仕事(採集だ)をする気もないし、ユマは「食べた後は頭働かないー」といってしばらくは仕事はしない。だから、この時間帯はのんびり雑談タイムとなる。
雑談といっても、それほど話すことはないんだけど。当然テレビとかもないし地方都市であるエクレールは、娯楽の類に該当するものも王都に比べては遥かに少ない。更に俺は目立つのを避けてあまり周囲と深いかかわり方はほどんどしてないので、情報に疎い。
それに対しユマも俺が薬草を納品するようになってからは引きこもりの傾向になりつつあるので、あまり話題がない。なんでお互い話すのはせいぜいあってない間の生活で起きた、他愛ない出来事を話すくらいだ。
だが、俺と違い一応ユマは俺よりは外部の情報を入手するルートがある。
他愛のない日常の雑談の中、急にあっと声を上げたユマが眉をひそめていったのは、そんなルートから入手した情報だった。
「そうだ、ヒビキ、伝えなきゃいけないことがあった」
「急にどうしたの?」
「採集なんだけど、しばらくあまり街から離れたところに行くのはやめた方がいいかも」




