96回目 織田信長
織田信長。
日本の戦国時代を終わらせるきっかけになった男。
実際はどうか分からないが、アツヤはそうとらえている。
信長が最大勢力になった事で、戦国時代は終わりに向かった。
少なくとも、豊臣秀吉と徳川家康に繋がる流れは作った。
もし生きていたら、そのまま日本統一の英雄になっていたかもしれない。
そんな男が目の前にいる。
少なからぬ感動がアツヤにはあった。
(こいつが……)
そんな偉業を成し遂げた男とは思えない風貌だった。
覇気がないというか。
穏やかな感じの男だった。
武士ではあるので体は鍛えてるとは思うのだが。
それでもどちらかというと細身な感じがした。
いっそ、文化人や風流人といった方がしっくりくる。
武士にありがちな筋骨隆々という雰囲気はない。
(肖像画通りだな)
歴史の授業などで見た。
その時の画像通りな雰囲気である。
さすがにあの通りの顔かたちというわけではないが。
細面で白い肌は、あまり武人らしくはない。
だが、歴史の記載通りなら、これが日本をまとめた男なのだ。
「いや、会ってみたかったよ」
「俺に?」
「ああ、あんたに」
興味はあった。
その人間性や人格、考えなどは異質と言われている人間だ。
諸説あるが、普通の人間とはかけ離れた考えを持っていたと。
時代を超越した天才とも。
それ故か、誰にも理解されず、最後は裏切られたとも。
事実がどうであるのかは分からないが。
その実物が目の前にいる。
だから確かめたかった。
どんな人間なのかを。
その感想だが。
意外といえば意外だった。
もっと豪快な人間を。
あるいは、もっと冷酷な人間を。
もしくは、考えが読めない人間を想像していたのだが。
その全てが外れていた。
話し方は穏やかだった。
表情や振る舞いも。
いっそ武士らしくないといえた。
厳つい態度を取りがちな武士とは思えない。
また、自分以外の者達が討ち死にしたと聞いて酷く落胆している。
「そうか……」
と言葉自体は少ないが。
目の前にアツヤがいるというのに涙を流した。
それもこの時代の武士らしくはない。
たいていの場合、武士とは人前で泣かないものだ。
泣けばそれが弱みととられる。
そうなれば、そこを突いてくるバカが出る。
部下であっても、「泣くなんて情けない」と見限る。
なので、武士は人前では強がるものだ。
なのだが、信長は違う。
(なるほどねえ)
それを見て何となく分かった。
タワケやら、ウツケやら。
そう言われるのはこういう所からなのだろうと。
ようするに、変わり者。
武士らしくない武士だった。
「そうか、我が手勢は……」
「壊滅だ。
俺達がそうした」
「そうか……そうか……」
そう言ってうなだれ、涙をこぼしている。
その姿に猛々しさはない。
だが、アツヤは妙に親近感をおぼえた。
(こいつは……)
武士らしくはないだろう。
統治者らしくもないかもしれない。
しかし、素の感情を見せている。
そう言ってよければ、人間らしくはあった。
(なるほど)
なんとなく分かった。
これが織田信長という人間なのだと。
確かにこの時代の常識からかけ離れている。
だからまっとうな評価がされなかったのだろうと分かった。
理解もされなかったのだろうとも。
そして、それ故に最後は裏切られたのだろうと。
(でも)
だからこそ思う。
(こういう人がいなくちゃ駄目なんだろうな)
そうも思えた。
アツヤの感覚や感性からすれば、こういう人間の方が好ましい。
少なくとも、これまでよく見てきたような連中よりは。
ブラック企業を思い出させるような連中などよりは。
(こいつは大事にしないと)
さっそく信長の処遇を考えていく。
如何に生かしていくのかを。
明日の投稿はどうなるかわからん
なるべく続きを出したいところだが




