94回目 侵攻開始 遠江・三河・尾張
今年の目標である東海の国々。
それらの制圧ももう少しで終わる。
完了すればあとは統治機構を設置していく事になる。
その最後に残った尾張だが。
現段階では尾張国内で分裂状態。
芝上が攻め込んでくるからそれは後回しにしているが。
基本的に、まとまって戦える状態ではない。
そんな状態だから、尾張で美濃の敵を警戒する事になった。
攻め込まれたら、それらを押し返すようにと。
残念ながら、無駄な努力というしかない。
美濃に集まった兵力だけでも尾張を越える。
攻め込まれたら防衛もままならない。
また、仮に尾張の軍勢が遠江などへ増援として向かったとしてもだ。
それを加えても芝上勢には及ばない。
侵攻を幾らか止めるだけに留まっただろう。
根本的な戦力が違うのだ。
例え撃退する事が出来たとしてもだ。
即座に芝上は次の戦力を送り込める。
すぐには無理でも翌年までには可能になる。
その時、今川や松平・織田はどうだろう。
おそらく失った戦力の回復すらおぼついてないだろう。
その状況で出来る事と言ったら、上手く落ち延びるくらいだろう。
より多くの国々と連携がとれれば、起死回生にもなっただろうが。
それが出来れば苦労はしない。
隣同士で戦争状態といえる戦国時代。
一つにまとまるのは困難極まる。
幕府がまともに活動していればどうにかなったかもしれないが。
残念ながら、この時期の幕府に統率力を求めるのは無理がある。
どのみち結果は既に決まっている。
早いか遅いかの違いしかない。
その結果が尾張にも適用されようとしていた。
ただ、ここでアツヤから一つ注文がついていた。
基本的にアツヤはやる事に口を出さない。
大まかな指示というか方針は出すが。
細かい部分にあれこれ手を出しはしない。
ブラック企業時代に、上から余計な口をはさまれて辟易したからだ。
なので、こういった事は珍しい。
こういった事があるのは、何かしら問題がある場合くらいだ。
それだけにハルヨシ達も厳しい表情になる。
「なにか問題でも?」
「いや、そうじゃない」
今回はそういったものではないとアツヤは伝える。
「ただ、一つお願いがあってな」
「いったい何を?」
「それがな。
一人、どうしても捕まえて欲しい人間がいる」
「いったい誰を?」
わざわざ口をはさむほど重要な人物なのだろうか?
誰もがそう考えた。
そこまで有名な人間がいたのかとも。
しかしアツヤが口にした人間は聞き覚えがないものだった。
せいぜい、諜報部の人間が「そういえば」と思い出す程度。
この時期だとその程度の人物であっった。
その者の名前をアツヤは口にする。
「織田信長」




