77回目 東北攻略戦 5
前方に立つ長槍隊が敵の接近を阻む。
その隙間から石弓や鉄砲が敵を撃つ。
騎馬隊が敵の側面にまわり、弓を引く。
あるいは、敵の中に突進し、機動力で蹂躙する。
そんな戦いを続けながら、芝上勢は後退を続ける。
数の上で優位なだけあって、東北勢の勢いは大きい。
踏みとどまるのも難しい。
コウジロウもそれを察して、無理はしない。
「ひけ、少しずつひけ」
そう指示を出しながら少しずつ下がっている。
下がりながら、敵を削っていっている。
大きな衝突を避け、損害を小さくしていく。
それでいて、長槍隊の隙間からの射撃で敵を倒す。
弓騎兵の活動で機動的に敵を倒してもいく。
とにかく、大きな賭はしない。
損害を出さない事を目的にする。
敵は少しずつ倒していければよい。
そんな消極的ともいえる戦い方をしていく。
そうしてるうちに敵の動きが変わってくる。
一番前にいる者達の動きに躊躇いが出て来た。
それはそうだろう。
槍の合間から飛んでくる攻撃で倒されていくのだから。
誰だって怖じ気づく。
少しずつ足を止めるようになる。
そうして少しずつ距離をとる事で、損害を減らしていく。
戦いに勝つことは出来なくても、負けはしない。
損害を出さないで済む。
それで十分だった。
そうしながら陣地の方へと向かう。
その周囲に東北勢はなく、ほとんどが内部に入り込んでるようだった。
コウジロウは注意深く軍勢を動かしてそちらへと向かっていく。
そんな時に、陣地から兵隊が出て来る。
それらは隊列を組んで前進を開始した。
いずれも芝上勢だ。
それらはコウジロウの軍勢に合流するべく進みはじめた。
この時点で陣地での戦闘は終わっていた。
東北勢はほとんど壊滅。
襲いかかった2万の軍勢はほぼ消滅していた。
まだ幾らか残ってる者もいるが、それらは大きな脅威ではなくなっている。
その掃討にそれなりの兵を残し、それ以外は外に打って出た。
その数6000。
これがコウジロウの軍勢に合流していく。
ここまでで東北勢は1万1000まで数を減らしていた。
対してコウジロウの軍勢は7800。
数ではまだ負けてるが、受けた損害は東北勢の方が多い。
そこに陣地から出て来た芝上勢が合流する。
兵力差は芝上勢有利に傾いた。
さすがにこれを見て東北勢は士気を落としていった。
ここに来て敵が増えればそうもなる。
しかも、距離をとって矢弾を飛ばしてくる。
損害は増える一方だった。
「撤退だ」
誰が言い出したか分からないが、東北勢の中でそんな声が上がった。
それに従い、東北勢の一部が退却を始める。
つられた他の武将の軍勢も。
それがきっかけになって、東北勢は一気に瓦解した。
「追え、逃がすな!」
コウジロウの声がひろがる。
撤退していく東北勢。
その背中に加わる攻撃。
損害を少しでも拡大するための追撃戦が始まった。
それとは別に、最後まで残った東北勢もいた。
どちらかというと、逃げ遅れてしまったというべきだが。
その軍勢は、なんとか撤退しようと奮戦した。
しかし、逃げようにも芝上勢の数の方が多くなっており、それもかなわない。
最終的に彼らは、芝上勢に飲み込まれるように消滅していった。
こうして芝上と東北勢の戦闘は、芝上の勝利で終わった。
攻め込んだ東北勢は、4万の軍勢を1万余りにまで減らした。
芝上勢も損害は出たが、2万が1万3000ほどになった程度に留めた。
どちらもバカにならない損害である。
それでも、東北勢が受けた損害は深刻だ。
その後の活動に大きな影響を出すほどに。
この年の戦争はこれでほぼ終わった。
双方共にこれ以上続ける余力がなくなったからだ。
だが、芝上は翌年には回復し、侵攻を開始していく。
東北勢はそれに対して有効な対応をする事が出来なかった。
陸前から陸中。
そして、陸奥へと。
東北地方の太平洋側は次々に攻略されていく。
前年での敗北が大きく響いていた。
動員しようにも兵隊がおらず、戦いにすらならない。
しかも、周辺からの増援も期待出来ない。
どの大名も、援軍を出す余裕すらないのだ。
東北地方は次々に陥落。
春から夏にかけての短い期間の戦争で、東北はろくに戦う事も出来なかった。
東北への侵攻開始から3年もした頃には、残り羽前と羽後だけ。
侵攻開始から5年後。
残った二国に芝上勢が攻め込む。
この時点で、羽前羽後の動員兵力は1万ほど。
芝上は4万の軍勢で攻め込み、圧倒的な勝利をおさめた。
最初は苦労をした東北攻略ではあった。
だが、敵が減る事に障害も消えていく。
領地を吸収した分、芝上は拡大するし、敵は縮小する。
その国力差がこの結果を生み出した。
関東と越後より東は芝上の手に渡った。
この時点における、日本の最大勢力に成り上がった。




