76回目 東北攻略戦 4
「全滅させる必要はない。
敵を減らせばそれでいい」
そう叫びながら次の敵へと向かっていくコウジロウ。
その指示通り、芝上は敵を全滅させず、次の敵に向かっていく。
コウジロウ達の目的は、敵の全滅ではない。
出来るならそうしたいのだが。
それよりも、確実に敵の数を減らす事。
それが目的だった。
全滅させるとなったら、かなりの労力が必要になる。
だが、数を減らすだけなら、それほどでもない。
大変なのは変わらないが、必要な労力は少なくて済む。
そうやって敵の数を削っていく。
それだけで良い。
数が減れば、敵の攻撃をしのぐのも難しくない。
今は全滅させるよりも、戦況を有利にする事が先だ。
幸い敵はほとんど平地に陣取っている。
おかげで移動の手間がかからない。
攻めやすいし守りにくい。
そんな状態なので、本陣への攻撃はさほど難しくもない。
もちろん敵も黙ってない。
迫る芝上勢に対応していく。
なのだが、動きに統一性がない。
ある部隊は芝上を迎撃しようとし。
ある部隊は他の軍勢と合流しようとする。
全体をまとめる者がいないから、各自がばらばらに動いていく。
その為、効果的な行動をとれずにいた。
そのため大半の東北勢が各個撃破の様相をしめしていく。
芝上に攻め込んでいった者達は特に。
味方同士で合流すれば、まだ勝ち目もあったが。
単独で挑めば芝上にかなうわけがない。
単純に数の差がありすぎる。
それでも、半分はそれぞれ合流を果たし、芝上に対抗しようとする。
無傷でのこった東北勢は、およそ7000。
これは、芝上との戦闘を避けて合流した者達の総数になる。
それ以外の者達は、芝上と対決して数を減らした。
中には壊滅して撤退を余儀なくされた者もいる。
まだ戦場に留まり、同じように損害を出した者達と合流する者もいるが。
それらはそう多くはない。
芝上勢もそれなりに損害を受けている。
現在、9500まで減っている。
敵に比べれば損害は少ないが、皆無ではない。
戦場を駆け巡ってるので、息もあがっている。
体力を考えるとかなり苦しい状態になっている。
だが、息を整えてる暇もない。
残った東北勢は、動きを鈍らせてる芝上勢に攻め込んでいく。
彼らもここが正念場だと分かってるのだろう。
敵が万全でない今を狙うしかないと。
「構えろ!」
コウジロウも指示を出す。
これが外にいる敵との決戦になる。
そう察して全軍に構えをとらせる。
火縄銃と石弓は装填をして射撃できるように。
射撃部隊の前に、槍隊が展開して接近を阻むようにする。
騎馬隊はいつでも出られるように控えていく。
そんなコウジロウの軍勢に東北勢が迫っていく。
背後からは、芝上にやられた者達が集まっている。
それらも背後から襲いかかるようだ。
「さすがにそのまま撤退ってわけでもないか」
せめて一太刀やり返すつもりなのだろう。
その心意気は見事だ。
「面倒だけど……」
そんなコウジロウの思いとは真逆に、両軍は激突していく。
弓と石弓から矢が放たれ、火縄銃から鉛玉が飛ぶ。
槍同士が打ち合っていく。
騎馬も戦場を動き回り、敵兵を倒していく。
その動きを見て指揮官が指示を出し、それを伝えに伝令が駆け巡る。
全体の流れで言えば、芝上の方が有利に動いている。
遠距離攻撃によって、敵を寄せ付けずに倒すのが効いている。
しかし、接近されると東北勢が有利になる。
この10年で芝上勢も接近戦に強くなってきたのだが。
それでも武士団の強さは芝上を上回るようだった。
そこに、一度は負けた東北勢が、結集して襲いかかっていく。
そちらも無視出来ないので、後方の部隊に対処させていく。
迫る残存勢力に対して、遠距離から矢玉を撃ち込んでいく。
それで牽制をするも、敵は確実に距離を縮めてくる。
それを感じ取り、コウジロウは指示を出す。
「全軍、敵の側面を通り抜けろ」
伝令が動いて指示を伝えていく。
コウジロウも傍仕えの部隊を率いて前進していく。
それにつられるように、周囲の部隊も動いていく。
そのまま敵の側面、そこをなぞるように移動を開始。
「撃てる奴はどんどん撃っていけ!」
そんな事を言いながら、自らも弓を引く。
狙いもろくにつけないままだが、矢を相手に撃ち込んでいった。
前後からの挟みうちを避ける。
その為に相手の側面にまわりこむ。
相手を削りながら。
弓や火縄銃を持ってるなら射撃をしながら。
そうでない者達は手にした武器で敵をしのぎながら。
敵の側面を削りながら、後方へと回っていく。
東北勢もそれを遮ろうとする。
しかし、その動きを遠距離攻撃で遮られる。
何とか接触しても、抵抗する事なく下がられるので、戦闘にならない。
それでも追いかけていき、軍勢が薄く伸びていく。
そこに芝上の部隊が突入、隊列を分断していく。
突出して分断された形の部隊が孤立する。
そこに芝上の後続部隊が突入する。
孤立した部隊は、突破してくる部隊によって更に細かく寸断された。
そして、通り抜けていく芝上の兵に切り倒されていく。
そうやって東北勢の後方に出る。
芝上の先頭部隊はそこで反転、東北勢の背後を突く。
芝上勢は相手の後方に移動、挟み込まれる危機を回避した。
あらためて東北勢と芝上勢は正面から相対していく。
東北勢、合わせて1万3000。
芝上勢、8900。
東北勢の損耗は大きいが、芝上勢も数を減らしている。
どちらが有利とも不利ともいえないまま、両者は再び激突していく。




