74回目 東北攻略戦 2
現代で言うところの福島市にあたる地域。
芝上勢はそこに陣をはっていた。
東北勢はそこに向かって進撃してくる。
そんな彼らは開けた土地に布陣する芝上勢を目にする。
開けた場所に陣を敷いてる彼らの考えが理解出来なかった。
数でまさるならともかく、そうではないのに。
「罠か?」
そういぶかる者もいた。
しかし、わざわざ平地に布陣している。
野戦築城で少しは備えているが。
戦って負けるとは思えなかった。
それよりも、さっさと潰して芝上を撃退してしまいたかった。
「かかれ」
東北勢が襲いかかる。
数に任せて芝上の陣地に向かっていく。
考え無しの攻撃ではあるが、間違ってはいない。
四方八方から襲いかかり、芝上の陣地にとびつく。
それに対して芝上は、銃口を向けて応戦する。
星形をした芝上の陣地。
そこにとりかかる東北勢は、次々に倒れていく。
近距離から射撃を受けるのだ、無事ではすまない。
迫る敵に、芝上勢はひたすら銃撃を浴びせていく。
石弓も同じように射撃を続けていく。
迫る敵は陣地に近づく度に倒れていく。
星形の陣地の前には、倒れた東北勢の死体が積み上がっていった。
それでも状況は東北勢に有利だ。
芝上の射撃速度よりも、東北勢の接近速度の方が早い。
これが連射可能な機関銃ならともかく、手込めの火縄銃と石弓だ。
装填を別の者が行ってるとはいえ、射撃速度はどうしても遅くなる。
次の一発を撃つまでに、相手は更に進んでくる。
出来るのは、進撃速度を落とすこと。
敵を完全に撃退する事ではない。
だが、東北勢の損害もバカに出来ない。
緒戦で一気に数百の兵が倒れた。
陣地に接近し、どうにかしがみつく事が出来てもそれは変わらない。
そうなれば今度は槍が繰り出される。
その穂先が、接近した兵を貫いていく。
それでも東北勢は果敢に攻めて、芝上勢の陣地に入っていく。
しかし、そこからも地獄であった。
掘って作られた塹壕陣地は迷路のようになっている。
そこに入り込んだ東北勢は、様々な所から攻撃を仕掛けられ、次々に倒れていく。
それは敵を防ぐための城とは違った防備だった。
敵を誘い込み、誘導し、不利な状況に陥らせて倒していく。
攻勢の防御機構と言うべきものだった。
芝上も分かっている。
急造の防御陣地で敵をせき止める事は出来ないと。
敵は確実に接近し、掘や壁を越えてくる。
確実に突破される。
だから突破されることを前提の備えを作った。
相手を阻むのではなく、内部に誘導するように。
入ってきた敵を効率よく倒せるように。
そういう風に操作出来るように。
その為に作った塹壕陣地である。
入り込んだ敵に細長い縦列を余儀なくさせ。
その横腹を容赦なく食い破るような状態にさせる。
掘られた溝の中ではなく、壁をよじ登ろうとすれば、そこに控える者に倒される。
それに一人ずつ上ったところでさほど意味はない。
控えた兵士に次々に倒されていく。
数の上での優位性も、こうなっては台無しだ。
東北勢は確かに芝上の陣地に侵入はした。
しかし、それはより損害を拡大していく事になる。
芝上は無理な戦闘はしない。
ギリギリまで敵を引きつけるが、持ちこたえる事は出来ないと察すれば退却する。
そして陣地の奥へと移動する。
その為、陣地に乗り込んでも芝上はさほど損害を受けていない。
むしろ、進む事に東北勢の方が出血を強いられていく。
それでも東北勢はまだ数で上回る。
陣地に攻め込み、敵を追跡している。
その途中、逃げ遅れた芝上側の兵も幾らか倒した。
このまま進む事が出来れば、芝上を倒せる。
東北勢はそう思っていた。
陣地の中は東北勢が大勢入り込んでいる。
そのまま行けば、芝上を確実につぶせると誰もが思っていた。
だが、ある地点からはそうはいかなくなった。
押し込められたはずの芝上勢は、猛烈な反撃をくらわせてくる。
今まで以上に堅牢に作られた陣地の中で。
その陣地は、この場に布陣する時点で作られた。
最も初期に作られ、最も堅牢な構造になっている。
その為、守りの備えは周辺の構造以上だ。
それもまた、策だった。
陣地全体を堅牢に仕上げる時間などない。
なので、陣地の外周は敵を誘導する為の構造にしていった。
比較的守りも手薄になっている。
そこは放棄することをあらかじめ決めておいた場所といえる。
その代わり、敵を引き寄せて迎え撃つ奥地。
堅牢に作られた中心部分は、敵を寄せ付けないほどに強靱なものになっている。
攻め込んだ東北勢も、簡単には崩せないでいる。
おかげで攻め込んだ東北勢はそこに釘付けになっている。
芝上陣地に攻め込んだ東北勢2万。
それらは陣地に食い止められた格好になった。
それを、芝上1万の兵が必死に迎撃していた。
そうして味方が敵を引きつけてる間に。
芝上の別働隊1万が動いていく。
それは、米沢方面の山に隠れて時を待っていた。
そんな彼らの目に、陣地からの合図があがる。
「狼煙があがりました」
敵を引きつける陣地。
そこから出されるそれは、攻撃開始を告げる指示である。
「よし、行くぞ!」
軍勢を率いる武将が声をあげる。
それに従い、芝上軍が動き出した。




