66回目 常陸制圧
今回の侵攻で動員される兵力は、総計1万6000。
このうち、純然たる戦闘部隊は1万2000。
4000は輸送・補給部隊になる。
今までとさほど大きく変わらない規模だ。
各地の防備や予備兵力を置いておく都合でこの数になった。
それでも相手からすれば十分に巨大な兵力である。
それが一気に常陸に流れ込んでいく。
攻め込まれた常陸はひとたまりもなかった。
この地域をまとめる勢力がなかったため、各地の武士は次々に撃破されていった。
何とかまとまろうとするも、指揮系統がはっきりとしない。
そのため、どうしても混乱をする。
仮にまとまっていても、そう大差はなかっただろう。
常陸の勢力を集めても、1万に届くかどうか。
芝上の兵力はそれを大きく越えている。
仮に万全の体制であったとしても、抵抗するのは難しかっただろう。
「なんという事だ…… !」
対抗する武将が悔しさを声にする。
「なぜ、このような!」
憤りのままに叫ぶ。
無理もないだろう。
目の前にあらわれた大きな敵。
それは彼ら武士をものともせずに蹴散らしてしまう。
近づくことすらままならずに倒され。
城も砦も簡単に破壊されてしまう。
どこにいても、居場所を特定される。
物資の集積地も割り出されている。
各武家の集結場所も読まれている。
あらゆる面で、芝上は常陸の武士たちを圧倒していた。
「なぜだ……」
攻め込まれたほうはわけが分からなかった。
なぜこうも全てが読まれているのか。
どうして戦っても勝てないのか。
それがさっぱり分からない。
とにかく何もかもが足りてなかった。
兵力はもとより、情報や作戦も。
それらを使いこなす智慧も。
武士である彼らもそれは分かっている。
自分達にそれが無く、芝上はそれを持ってることを。
農民からの成り上がりという話は聞いていたが。
そんな者達が、自分たちを上回る軍略を持っていることを。
それらを駆使して動いてることを。
こうなるともうどうしようもない。
様々な面で相手が上回ってるなら、勝ち目などあるはずがない。
そんな奇跡を起こすような作戦、あったらとっくに実行している。
「ここまでか」
誰もが自分達の命運が尽きたのを感じた。
実際、常陸における戦争は程なく終結する。
各個撃破の状態になっていく常陸の武士達は、抵抗らしい抵抗も出来ずに倒されていった。
芝上はこれで背後を消すことが出来た。
もちろん関東全部を制圧したわけではない。
下総方面、現代で言う千葉県方面はまだ残っている。
しかし、騒乱がおさまらないその方面はまだ放置しておいても良い。
それよりも、先に片付けねばならない者たちがいる。
「ようやく越後だ」
包囲していた者達で残った最後の一家。
長尾への侵攻準備がととのった。




