65回目 下野国合戦の顛末と、次の標的
その後。
残った戦力による総攻撃が始まった。
居城に立て篭もる宇都宮勢の抵抗は激しい。
芝上の損害はうなぎ上りに上昇した。
しかし、衆寡敵せず。
宇都宮成綱が名将であっても。
その配下が、一騎当千の兵揃いであっても。
数で勝る敵には抗いようが無い。
大砲で破壊された城門。
城内に切り込む芝上勢。
室内に投げ込まれる焙烙玉の爆発。
それらが宇都宮の命脈を粉砕していった。
情け容赦の無い戦いであった。
後の事を考えてのものだが、降伏は一切認めず。
その方針で戦った芝上は、宇都宮氏を完全に滅ぼしていった。
「残しておいても、後の禍根になる。
制御しきれる者ではない以上、断ち切ったほうが後のためだ」
アツヤがそうソウイチロウたちに伝えたからである。
下野国はこうして芝上の旗が掲げられることとなった。
その後も戦後処理であわただしくはあったが。
国内の制圧も完了し、統治機構も施していく。
もっとも、上野・武蔵でまだいきわたっていない統治機構。
完全な形で下野に施すことになるのはまだ先の事。
それでも、対立する勢力は減った。
かつて上杉の指示で攻め込んできた北条・宇都宮・長尾。
このうつ二つは潰えた。
残るは一つ。
「長尾まであと少し」
アツヤは勢力図を画面として表示させながら呟く
芝上の領地はすさまじい拡大を見せた。
関東で残るは、常陸・上総・下総・安房の四つ。
このうち、上総・下総・安房は勢力争いをしてるので当面の敵にはならない。
騒動がおさまるまでは放置していても大丈夫だ。
となれば、あとは常陸。
現在の茨城県にあたる。
ここをとれば、関東における勢力はほぼ安定する。
「攻めるぞ」
容赦の無い指示を出す。
常陸はこの時期、特に大きな統治者がいない。
名目上の統治者はいるが、その基盤は磐石とはいいがたい。
だからこそ、一気に攻め落として勢力化におさめていく。
それならば、従属させればいいのかもしれないのだが。
アツヤはそれに疑問を抱いていた。
「素直に従うのか?」
そういう懸念がある。
勢力は大きくなったが、芝上は農民上がりだ。
そんな者達に歴史ある武家の者達が従うかどうか。
そこが悩ましい。
実際、領地とした地域の国人などは素直に従わなかった。
だから処刑せざるをえなくなった。
不満を抱えながら従う者等そうはいない。
形勢が不利になれば、いつでも裏切る。
不利でなくても、どこかの時点で裏切る可能性がある。
「敵ではないが、味方でもない」
それがアツヤが出した結論だった。
同じことは、芝上家の者達も考えていた。
明確に敵対してるわけではないが、友好的というわけでもない。
「そんな連中、信用できるわけがない」
だから攻め滅ぼす。
それがアツヤの結論だった。
信用できないものを身内に抱えるほうが危険である。
それに、地理的になかなかに面倒な場所にいる。
常陸が自分の勢力下にないと、背後を襲われる可能性が出てくる。
下野国が東側に飛び出る形になるからだ。
「そんな危険な状態は解消しよう」
残酷な決定が下される。
同盟を結ぶことも難しい。
結んだとしても、どこまで信用できるか分からない。
そもそも、人が約束を守るかどうかなど、分かるものではない。
約束など破られるものだ。
国家間の盟約だって同じだ。
いつ放棄されるか分かったものではない。
歴史上、条約などが反故にされたことがどれほどあったか。
そんな約束など、無いも同然だ。
信じられるのは、確実に自分の支配下にある場所だけ。
「だから攻め込む。
攻め込んで、常陸をとる」
やる事が決まる。
すぐにとはいかなかったが。
それでも次の侵攻目標が決まった。
それに向けて、兵力がまたととのえられていく。
いつものように兵員の移動。
軍需物資の増産と移動。
国境線の防備の増強。
情報収集も進められ、敵の内情も把握していく。
可能であれば撹乱もし、敵の動きを止めていく。
様々な事が進められていく。
人手がいくらあっても足りなかった。
そうして一年。
攻め込まれることも無く時間が過ぎ、出兵の準備がととのう。
芝上軍は下野国から南下、常陸へと突入していく。




