6回目 今までとは変わった村
一ヶ月ほど前。
チヨマツが心得をアツヤに与えられた次の日。
村の者達にチヨマツは告げていった。
「悪さしてた罰が当たったんだ」と。
それを聞いた村の者達は腹を立てた。
だが、体にも心にも力が入らない状態になっていた。
なので、いつものように叩きのめす事が出来なかった。
中にはそれでも、無理して手を出した者もいるが。
即座に反撃を食らった。
それも、今までとは違って徹底的に。
その日のチヨマツは、的確な動きで相手を叩きのめしていった。
一撃が速く、重い。
そして、村の者達の攻撃は当たらない。
体が弱ってるのを差し引いても、チヨマツの動きについていけなかった。
そんなチヨマツは更に続ける。
「今度から、俺が村を仕切る事になった。
神様からお達しをもらった」
何をバカなと誰もが思った。
しかし、
「その証拠に、これから村長が苦しみながら死んでいく。
神様の祟りでね。
嘘だと思うなら、村長の様子を見に行ってみればいい」
言われた村の者達は、何を言ってると思った。
だが、気にした何人かは村長の所へと向かった。
そして、苦しみながら床でのたうち回ってる村長を見た。
同じように苦しんでる村長の家族全員も。
それから何日も村長達は苦しんだ。
身も心もやせ細りながら。
食事も、数少ない薬も効果がなかった。
半月ほどして、最後は干からびながら死んでいった。
「な、言った通りだろ」
チヨマツがまた村の者達にそう告げていく。
その言葉を、もう誰も否定出来なかった。
実際に、村長が悲惨な死に方をしたのだ。
嘘だと言い切る事は出来ない。
「これからは俺の言う事を聞くようにね。
神様の祟りに触れられたくなかったら」
その言葉にも、従うしかなかった。
こうして村の者達はチヨマツの支配下に入った。
チヨマツを虐げてなかった19人は難を逃れたが。
その他の者達は辛い日々を送ることになった。
自分の家のもチヨマツの田畑も手伝わねばならない。
やらねば祟り殺される。
それも、死ぬまで苦しみ抜いて。
そんなの御免だった。
逃げようにも逃げられない。
そんな事をしようものなら、脚が腐り落ちる。
ものの例えではない。
本当に腐り落ちるのだ。
実際、逃げだそうとした者が、村の入り口でそうなっていた。
脚が腐れおち、手もただれていた。
まともに動く事も出来ず、そのまま何日も手足の先から潰えていった。
最後は、体まで蝕まれていった。
ならば自殺しようとすれば。
それも出来なかった。
首つりに、包丁で喉を突き刺そうとしてもだ。
実行しようとした瞬間に手足が動かなくなる。
そして、手足が腐りはじめる。
舌をかみ切ろうとしたら、顎が外れた。
口が開きっぱなしになった。
閉じることも出来ずにいるのは存外きついものがある。
湿り気がなくなり、喉が渇くのだ。
息をする度に引きつる痛みに襲われるようになる。
このように自殺すらままならない。
しようとすれば、地獄を見る。
こうなると逆らうのも逃げ出すのも無理だと分かる。
チヨマツが祟りを告げてから一ヶ月。
もう村の中にチヨマツに逆らう者はいなくなった。
なお、チヨマツを害そうとした者もいたが。
それらも悲惨な末路を遂げた。
いや、遂げる事なく今も生きている。
生きてるのが不思議なほど悲惨な目にあいながら。
こうして働ける者達は、地獄を見ながら生きている。
体調も気分も優れないまま。
そこはアツヤが調整していた。
反抗が出来ない状態を保ち。
死なない程度に、働ける程度に霊魂を吸い出しながら。
「がんばれよー」
気のない応援をしていく。
まともに働いてくれるならそれで良い。
腹の立つ奴らであるが、労働力としては役に立つ。
どうせ、そのうち処分するのだ。
チヨマツが成長するまで。
村に残ってるまともな子供達が大人になるまで。
それまでは労働力として使う。
それがアツヤの考えだった。
それを聞いた時、チヨマツは不満だった。
今すぐにでも叩きのめしたかった。
それだけ怒りが高まっていた。
無理もない話だった。
しかし、ここで潰してしまっては、労働力が無くなる。
手入れされてない田畑が増えて、荒れてしまう。
そうなった田畑を元に戻すのも大変だ。
なので、しばらくは生かしておく事となった。
労働力が増えるまでは。
「それまでに……」
仕事をおぼえて、自分が田畑の面倒をみれるように。
そう考えながら、今日も仕事に向かう。
大変ではあるが、チヨマツはやりがいを感じていた。
そして。
チヨマツと同じ年頃の者達だが。
まともな者達以外は全員ストレス解消の道具となっている。
チヨマツの憂さ晴らしに。
かつて自分がやっていた事をやられるようになった。
その境遇に当然不満はある。
しかし、先に手足を折られ、まともに動けない状態にされている。
そんな状態で抵抗など出来るはずもなく。
逃げる事も出来ない彼らは、チヨマツの気が済むまで地獄を見る事になる。
もっともチヨマツは当分この遊びをやめるつもりがない。
彼らの地獄はまだまだ続きそうだった。
この日も仕事が終わってから、捕らえられてる者達の所に向かい。
野球のバット状の棍棒を振り下ろしていく。
「神様が教えてくれたこの棍棒、使いやすいよなあ……」
何度使っても感心してしまう。
「でも、よく分かるわ」
棍棒────バットを振り下ろしながら言う。
「お前らが俺をいたぶってたのが」
骨は既に何本も砕かれている。
手足はおかしな方向に曲がっている。
その状態でくっつくものだから、全員が歪な形をしていた。
「楽しいよな、これ」
そう言いながらチヨマツはバットを振り続けた。
人をいたぶるのは楽しい。
その事実にチヨマツは気付いた。
だからこいつらは自分をいたぶってたのだと。
理由なんかそれだけで十分である。
人を傷つけるのは楽しいと。
だから村長は、チヨマツをその為に使った。
特に理由があるわけではない。
強いていうならば、村の子供達の中で体が小さい。
だから力も無いだろうと考えていた。
そんな子供を抱えてるほど、村には余裕はない。
ならば、処分してしまおうと考えていたという。
そして、どうせ処分するなら、少しは村の者達の憂さ晴らしに使おうとも。
そうして村の者達に通達を出した。
むかつく事があったらチヨマツを好きにしていいと。
小さな、狭い村である。
娯楽もない。
毎日肉体労働を繰り返すだけの日々だ。
そんな中で、少しでも楽しみを作ろうとした結果だった。
その道具にチヨマツがあてられた。
今度はその仕返しにチヨマツが遊んでいる。
ただそれだけの事である。
「それじゃ、また明日」
程よく遊んだところで、チヨマツはそこを出ていく。
村にある牢屋だ。
表向きは、納屋という事になっている。
実態は、村で問題を起こした者をとらえておく為に使われている。
そこに村の子供は放り込まれていた。
簡単には逃げ出せないように。
簡単には解放できないように。
鬱憤を晴らしたチヨマツは、良い気分で一日を終えていく。
発散の場所があるというのはありがたい事だ。
辛い日々もこれがあれば乗り越えられる。
「こういう事だったんだな」
自分がいたぶっていた連中の気持ちがよく分かる。
だから、同じようにいたぶっていく。
これからもずっと。
やがて潰えるその日まで。
こうして、攻守ところをかえて。
村は今まで通りに運営されていく事になった。




