56回目 相模・伊豆侵攻 6
韮山の陥落。
それは北条側の組織だった行動の消滅につながっていく。
なんだかんだで北条の拠点だったのだ。
それが消えれば、まともな行動はとれなくなる。
それでも早雲は軍勢をまとめて動いていく。
芝上の軍勢に攻撃を仕掛け、補給戦を断ち切ろうとする。
ある程度効果も出していく。
早雲は優れた指揮官だ。
戦えば誰も勝てない。
芝上の指揮官では早雲には勝てない。
しかし、他の面での差がどんどん出ていく。
補給がない、食料のない北条勢は時間と共に衰えていく。
対して芝上は食料も休息もとって兵力の維持に努めている。
失った兵力も、訓練が完了した者を補充する事で回復していく。
それは指揮官の質ではどうしても覆せない部分だった。
国そのものの強さによる所になる。
土台となる国力がそもそも違うのは確かだが。
その国力をどう使うかという所でも大きな差が出てきていた。
そもそも戦場となり国としての機能を伊豆は著しく落としている。
そんな状態で北条にまともな戦争が出来るわけがない。
これは北条勢の能力云々ではない。
しっかりとした後方支援を失った故だ。
同じ状況になれば、誰だって北条のようになる。
むしろ、北条はよく軍勢を保ってるほうだ。
主要拠点を失い、伊豆の中にも敵が侵攻してきている。
負けるのは確定となっている。
それでもまだ軍を率いて動いている。
それも芝上にとって痛いところを突いてくる。
さすがとしか言いようが無い。
「これが味方であれば」
コウジロウの嘆きもむべなるかな。
北条早雲が味方であれば、これほど頼れる者はない。
それが敵であるというのが最悪の悲劇である。
戦場にて対決してるコウジロウはそれを痛感する。
指揮官としての能力は圧倒的に早雲に劣る。
その事をコウジロウはいやというほど感じていた。
戦ったら決して勝てないと。
だから戦闘は極力控えていった。
もちろん、襲い掛かってきたら撃退するしかないが。
そういった場合でも、必ず勝てるように考えていった。
可能な限り相手より多い数を保った。
出来る限り、防御のかたい場所にこもった。
直接的な戦闘で兵を減らすことの無いように気をつけた。
そうしながら、相手が兵糧を失って衰退するのを待った。
指揮能力では勝てない。
だからそれ以外の部分で勝とうとした。
それはある程度成功した。
襲撃のたびに北条勢が衰えてるのを感じた。
兵力も、勢いもなくなっている。
数も減っているように思えた。
「これが擬態でなければ、勝負はそろそろつくだろう」
油断はしないが、コウジロウはそう考えていた。
勢いがないのは、体力を保つことが出来なくなってるからだろう。
数が減ってるのは、脱走者が増えてるからかもしれない。
あるいは、まともに動けるものがいなくなったのか。
どちらにせよ、北条はかなり落ち込んできている。
「このまま、攻め続ける。
北条を伊豆から追い出す」
出来るならここで倒しておきたい。
しかし、それが出来ないなら、せめてこの場から追い出す。
そうなれば、危険はかなり減る。
ついでに兵力もかのうな限りそぎ落とす。
「ただ、相手の大将を倒す必要は無い。
見つけた敵を確実に潰していけ。
それだけでいい」
この時点での目的は、敵を全滅させることではない。
相手の勢力をそぎ落とし、回復に時間がかかるようにする事。
それが出来れば良かった。
完全な勝利などもとより望むべくもないのだから。




