52回目 相模・伊豆侵攻 2
相模への出兵は割と楽に行えた。
前回の事があってか、抵抗らしい抵抗がなかったためだ。
芝上が来たと聞いた者達は、即座に避難。
文字通りに無人となった地帯を芝上の軍勢は進む事になる。
さすがに現地の統治者達は防衛のために動いてきたが。
それらも難なく蹴散らしていく。
石弓と火縄銃による遠距離攻撃に専念する芝上勢は、敵が近づく前に撃退していた。
仮に接近しても、そう簡単に負けはしない。
遠距離攻撃を専らとする芝上であるが、接近戦を主とする部隊もある。
それらが石弓や火縄銃の部隊の前に展開している。
近寄ってきた敵は、それらが応対していく。
ただ、アツヤによって散々虐げられてきた相模である。
兵力にもそう余裕は無い。
襲撃も散発的で、一回の攻撃もそう大したものではない。
ただ、そうして油断させるための策なのではないかとも考えられた。
そうしておいて、後で一気に畳み掛けてくる可能性を誰もが考えていた。
しかし、事前の諜報活動から、その可能性も低いと考えられている。
それほどまでに相模や伊豆などの困窮具合は大きい。
飢饉とまではいかないものの、十分な食事にありつけない者は多い。
これは統治者達も例外ではない。
この地域を支配する武士たちであっても、必要な食事をとれない事も多い。
そのため、体力を養うことが出来ずにいるという。
相模の反撃が低調なのはこれが主な理由だ。
まず、基本的な体力が無い。
加えて、収穫がないから貯えもない。
そのために、兵を集めることも出来ずにいる。
一時的な募集すらも難しいほどに困窮してるのだ。
そうした者達だから、簡単に撃破していける。
相模に突入した芝上勢は、思った以上にやすやすと敵を倒していった。
陥落した敵の拠点も多い。
城や砦の備えはそのままでも、守る者達が弱っている。
それが大きな弱点になった。
また、防備も実は結構ほころんでる部分もある。
その修繕もろくに出来ない状態がこの5年で発生もしていた。
それらを突いて、芝上勢は進撃を続ける。
ほどなく相模の半分ほどを制圧した。
とはいえ、順調にいくのもここまでだった。
いくらやせ衰えてるとはいえ、敵だって無能ではない。
残りの勢力を集めて芝上に対抗してくる。
かき集めた兵力は4000。
芝上には劣るが、それでも十分な数だ。
戦えば芝上が勝てるが、損害も大きい。
これを前に、さすがに動きが止まる。
更に加えて。
この時、伊豆からも敵が迫っていた。
集められるだけの兵力を集め、芝上に向かっていく。
その数、6000。
数は決して多いとはいえない。
しかし、相模と同じく天候不良で収穫の減ってる伊豆である。
これだけの兵力を集めるのが限界だった。
その兵が相模側に合流しようとしている。
あわせれば1万になる。
対抗する芝上は、7000。
ほぼ負けなしとはいえ、ここに来るまでの戦闘で死傷者も出ている。
それらを差し引いて、まともに戦えるのはこれだけとなる。
なお、ここに物資輸送などを担当する募集兵は加えてない。
彼らは現在も後方での輸送や陣地作りを担当している。
戦闘に加えることは考えていない。
加えれば数だけはそれなりになるのだが。
訓練がなされてない者達を投入しても、無駄に死体を増やすだけだ。
なので、募集兵は戦場に投入しない。
「ここが正念場か」
戦場を見守ってるアツヤは渋い顔で状況を見ている。
数で劣るのもそうだが。
それ以外の部分でもかなり不利ではある。
石弓と火縄銃という利点はあるが。
それもどれだけ状況を覆せるかは分からない。
石弓と火縄銃では連射能力に限界がある。
射手と装填主を分けても、どうしても限界はある。
それに命中率の問題もある。
狙って当てられる者はそうはいない。
また、威力の問題もある。
火縄銃はともかく、石弓では鎧ではじかれることもある。
接近するまでに全滅させられないこともある。
そういった場合は槍隊などが相手をする事になるが。
敵の数が多いと苦戦するだろう。
「しかも……」
軍の部隊編成もそうだが、もっと厄介な問題もある。
伊豆からやってきた敵軍。
それを率いる武将。
それが今回の戦い最大の問題だった。
「来ちゃったか……」
出来ればやってきて欲しくなかった輩がそこにいる。
北条早雲。
戦国時代初期の、まごう事なき英雄だ。
それが芝上勢の前にやってきている。
「きついなあ……」
こんなのと戦わねばならない。
その現実が重くのしかかってくる。




