51回目 相模・伊豆侵攻
「そしたら、攻めるか」
なんだかんだで5年が経過し。
思ってた以上に国は成長した。
「これならどうにかなるだろ」
実際にはそれほど余裕があるわけではない。
制度も人間もまだ途上だ。
だが、これ以上時間をかけるのも危険だった。
天候操作などで周辺国は厳しい状況ではある。
しかし、戦争の痛手から少しずつ回復していっている。
これ以上時間をかけたら、国力差が無くなってしまう。
「やるしかない」
そう伝えるアツヤに、ソウイチロウらもうなづく。
「やむなしですね」
彼らとて納得してるわけではない。
しかし、これ以上待てば自分達の優位性が消える。
それも分かっていた。
「やりましょう」
出陣が決定される。
「それで、狙うのは?」
「まず、南から。
相模と伊豆を完全にとる」
本命の越後ではない。
だが、越後を攻めるための下準備として制圧する事が決まる。
「背後を無くす」
それが目的だ。
今のままだと、芝上は東西南北を敵に囲まれている。
西は山岳地帯なので、あまり気にする必要はないが。
それ以外は敵に接している。
いやでも兵力を分散する事になり、身動きがとれなくなる。
その一つを削って、分散してる兵力をまとめねばならない。
決定はすぐに下される。
出動命令が出され、更に雑兵などの募集が行われる。
軍だけでは数が揃わないので、必要な数を補うためだ。
集められた者達は、北と東の防衛に回される。
比較的楽な防衛戦にまわす事で、損耗を避ける。
そして防衛についていた兵力を南に移動させる。
それ以外にも、物資の輸送・運搬などの作業に従事させられる。
どうしても足りない後方作業。
これらを募集した雑兵でまかなっていく。
直接的な戦闘には参加させない。
だが、戦場に近い所で活躍してもらう。
これが募集兵士の基本的な使い方となっていく。
理由は簡単で、専業の兵士のように訓練が出来ない。
そのため、戦闘力に差が出てしまう。
また、動きの足並みが揃わないので、一緒に動かすことが出来ない。
それは戦場で大きな問題になりうる。
なので、募集した者達は戦場の後方に配置する事となった。
それに、どうしても出てくる問題がある。
戦場における略奪だ。
以前はそれを餌にして人を集めたりもしたが。
今回と前回では事情が違う。
前回は相手に痛手を与えるために、あえて略奪なども容認した。
むしろ、そうやって相手から奪うことで、芝上の出費を抑えた。
だが、今回は違う。
略奪が目的ではない。
今回の目的は、制圧・占領だ。
戦争して相手の領地を奪うことが目的だ。
そのため、そこに住む者達を痛めつけるわけにはいかない。
今回は、出来るだけまともな状態で制圧地を手に入れる事。
そのためには、略奪などの乱暴狼藉は許されない。
出兵に際して、このことは徹底されている。
民衆への略奪暴行は禁止。
破ったものは例外なく死罪。
これが原則となった。
これを徹底するために、事前に鍛えた兵士を用いる。
戦闘技術だけではなく、軍律も叩き込んだ兵士でなければ安心して使えない。
今回だけ参加するような者達では、指示がいきわたるとは思えない。
一時的な募集に応じた者達だと、ここが不安だった。
これを解消しようと思ったら、統率・監視で人が余計に必要になる。
そんな手間をかける必要があるのかという事にもなる。
こういった理由もあり、専業の兵士と募集兵で扱いの違いが出てきた。
これは今後も続いていく事となる。
略奪目的だったものは出鼻をくじかれることになる。
この時代、略奪も収入の一部だ。
それが消えたことで憤慨して反抗するものも出てきた。
そういった者達をアツヤと芝上家は容赦なく処分していった。
略奪が当たり前だという思考の人間など必要ない。
今まではともかく、これから先は。
それに、指示に従わずに騒動を起こすような輩もだ。
そういう荒くれは、生かして世間に置いておくのも危険だ。
何かしらの問題や犯罪を起こす可能性がある。
なので、良い機会だからこの際にどんどん処分していった。
そういった事もあったが、それでも募集にはそれなりの数の人間が集まってきた。
略奪による利益は得られないのは確かだ。
しかし、その代わりに安全な地域での作業に従事する事になる。
それもまた大きな利益だった。
雇われてる間は、死ぬ危険もなく稼ぎを得る事が出来るのだから。
こうして必要な兵力を集めたところで侵攻を開始していく。
常備兵力8000を主軸に、募集兵4000を後方に配置。
この軍勢が相模へと出撃していった。




