41回目 予定通りの作戦失敗
南でコウジロウが敵内部を食い散らかしていた頃。
北の戦線はかなり厳しい状況になっていた。
押し寄せる敵勢に対して、防衛側の備えが足りない。
というより、敵の勢いが強い。
相手も必死である。
芝上をたおして安全を手に入れようとしている。
その為の努力を惜しむことはない。
長尾・宇都宮、共に1万ずつの兵をぶち込んできている。
これに対して芝上側は、戦線を何度か後退させている。
それだけ敵に突破されているという事になる。
防衛にあたってる武将らも何人か倒れていった。
そんな前線からは援軍の要請が矢継ぎ早に送られてくる。
国境を越えて内部に侵入してきてるのだから当然だ。
しかしソウイチロウら首脳陣は、一貫して撤退を指示し続けていく。
決して敵を押しとどめようとはしない。
これは相模方面とは違った対応になる。
そちらの方は前線の死守を命じていた。
決して背後に突破されないようにと。
理由は幾つかある。
まず、南は比較的早く敵後方への襲撃が出来たこと。
その襲撃部隊への補給などもあるので、前線の維持が絶対に必要になる。
後退はどうしても出来なかった。
その分、短期決戦で事を終えるつもりでもいた。
相手の内部に一気に浸透し、敵を蹂躙しまくる。
そうして戦闘がろくに出来ない状態にして、最後は敵軍を壊滅させる。
前線に張り付いた敵をそのまま前線に留め、敵国内部から撤退してきた味方で挟み撃ちにする。
そうして、可能な限り短期間で事を終わらせるつもりでいた。
それに対して北部戦線はそうではない。
主力が南に向かってる分、北は手薄になる。
守ろうにも基本的な兵力が少なくなってしまっている。
防御は攻撃よりは有利ではあるのだが。
それでも兵力が少ないので、損害を受ければただでは済まない。
その為、無理して防御はしない。
ある程度のところで撤退していく。
その為の予備陣地も幾つも作っておいた。
敵の攻撃が激しくなれば、上手く受け流して後方に撤退。
そのまま敵を内部に引きずり込む事になっていた。
もちろん、防衛戦において、可能な限り敵を削りながらだ。
敵は前進する毎に兵力を減らす。
味方は可能な限り損失を抑えていく。
こうする事で敵を少しずつ内部に引きずりこんでいく。
それが狙いだった。
そうする事で奥地まで敵を誘い込む。
あとは長く伸びた敵の軍勢に、遊撃戦で攻撃を仕掛けていく。
敵に出血を強いて、更に数を減らしていく。
そうなったところで、南方から味方を移動させて敵との戦闘に臨む。
これがソウイチロウ達が描いていた展開だった。
だが、現状は既にその構想が破綻した状態になっている。
味方の軍勢が防衛用の拠点で無意味に抵抗を続けた為だ。
このせいで当初の目的が大分潰れてしまっている。
原因は武士が頑張ったせいである。
彼らは迫る敵に立ち向かい、懸命に戦った。
そのため、損害を増大させていった。
武士としてはそれで良いだろう。
最後の最後まで徹底抗戦。
引き下がらず、意地を通す。
それが必要な場面もあるだろうが、今この時ではない。
そして無駄な損害を増やし、その後の防衛を危うくしていく。
おかげで北の戦線は、予定よりも兵員の減少が大きくなってしまっていた。
「まあ、予定通りだな」
「全く」
報告を受けてるソウイチロウは、弟のシンザブロウと共に呆れていく。
「こうなるとは思っていたけど」
「どこまでも予想通りだよね」
もう嘆くところも過ぎ去った。
武士は武士の意地で動く。
それはしょうがないとは思う。
しかし、それも『勝つため』という前提あればの話だ。
例え負けても、というようなくだらない精神論でやってもらっては困る。
引くべきは引いてもらわないと、無駄に損害を増やす事になる。
「もうそこを利用するしかなくなるからなあ」
「まったくだよ」
長男と三男坊はそう言ってため息を吐いた。




