36回目 統治機構の入れ替え推進
代替わりをしたといっても、状況が変わるわけではない。
やることは相変わらず山積みだ。
そして、完成まで長い時間がかかる。
急いではいるが、成果はなかなか上がらない。
遅々として進まないとすら思える程に。
実際には凄まじい速度で、様々なものが出来上がっている。
組織は恐ろしい早さで拡大している。
アツヤによるテコ入れもあり、必要な人材も確保している。
既に市町村規模の統治は問題が無くなってきている。
それを越えて、より大きな地域の統治も可能となってきている。
国とまではさすがにいかないが、だんだんと芝上家としての統治機構が出来上がってきていた。
それは同時に、今まで流用してきたそれまでの統治機構の削除に繋がっていく。
武家による統治体制の変化という事になる。
否応なしに、武士の仕事を削る事になっていく。
だが、これはアツヤもチヨマツも目指していた事だ。
新党首になったソウイチロウと兄弟達もだ。
現状、支配体制が確立していない。
だから既存の体制を使っていた。
そこにいた者達も含めて。
だが、これはこれで問題があった。
まず、当たり前だが既存の支配体制には芝上への帰属意識がない。
アツヤの力によって締め上げているだけで、機会があれば即座に寝返る。
そういう危険が常にあった。
意識の問題もある。
武家に武士によって出来上がってる既存の統治機構。
そんな彼らは同じ武家同士での付き合いを重視している。
つまり、農民上がりなどを人として認めない。
侮蔑して憚らない。
それは、同じ武士同士でなら持ってる仲間意識のあらわれだった。
武家や武士でないものは仲間ではない。
身内とは認めない。
そういう考えがある。
なので、それなりの素養や教育を持ち合わせる農民上がりを認めない。
それらを決して仲間として受け入れたりはしない。
このため、重要な情報などは決して共有しようとしない。
それどころか、新たに配属する者達を排除しようとする。
それが、仕事を回す上で必要な戦力であってもだ。
武家や武士は自分の仕事の中に、他の者が入るのを許さなかった。
これは彼らが特別偏狭だからというわけ……ではある。
ただ、彼ら特有の問題というわけではない。
人間誰しもが持つ性質だ。
悪いとは一概にはいえない。
己の領分を守る。
縄張り意識を持つ。
我が身が大事。
これらは生きていく為の基本だ。
自分の身内が大事というのは、あって当たり前である。
究極的には自分達が用意出来る食い扶持の範囲の仲間を優先する。
当たり前で当然の事で、何もおかしな事は無い。
人が増えて食い扶持が減るとなれば、人は警戒する。
自分達の領域という生産拠点に誰かが入って分け前が減るのを警戒する。
まして、自分達が作り上げたものを横取りされるかもしれないとなれば。
誰だってそうならないようにする。
武家や武士の統治機構が、農民上がりの役人を拒否するのも同じだ。
逆にこれが村などであれば、今度は農民達がよそ者を排除する。
どうしたって人は自分の領分を守ろうとするものだ。
より大きな範囲で言うと、国もこれにあたるだろう。
手に入れた二カ国。
その統治機構。
そこでは、これが問題になっていた。
人を入れて負担を減らそうにも、それを受け入れない。
なので仕事がどうしても遅れがちになる。
また、仕事のやり方の更新もなかなかなされない。
良くも悪くも以前のやり方を墨守している。
これが悪いというわけではないが、無駄を省き、必要な手間をかけてもらいたい。
だが、そういう考えがない。
むしろ、そんな考えを邪道・非道とすら考えている。
「今まで通りで良いのだ!」
たいていがこんな調子である。
それは保守というより守旧というしかない有りようだった。
これを変える為に、とにかく統治機構を置き換えていきたかった。
それがチヨマツ・ソウイチロウの親子二代にわたる願望になっていた。
そうしないと、やりたい事もやれない。
やったとしても動きが遅い。
そういう事態になってしまう。
その為に時間を割いている。
おかげで、他国への侵攻は止まっている。
そんな事をしてる余裕がない。
まずもって、手に入れた国の統治すらままならないのだ。
現状維持を続けるので手がいっぱいだ。
その上で、他国からの侵攻にも備えねばならない。
色々と問題は山積みである。




