22回目 身近で起ころうとしている騒動
「なんとまあ」
アツヤもチヨマツも呆れるしかなかった。
騒動がこういった形で襲ってくるとは思わなかった。
そして、その原因があまりにも最低だった。
「自分でやれよ……」
「まったくです……」
争いが発生するのは仕方がない。
だが、それは当事者同士で片付けてもらいたいものだった。
なんで巻き込まれねばならないのか?
理不尽極まりない。
「それでどうします?」
「まずは領主がどうするかだけど」
決定権はアツヤやチヨマツにはない。
領主の決定に従うしかない。
「でも、それじゃ面白くない」
領主がどうしようと、それに従う義理や義務はない。
しなければ面倒になるが。
それとて、かぶる覚悟があるならはねのける事は出来る。
問題はその先だ。
都合の悪い要望を突っぱねたとしよう。
それを成敗する者達をはねのけたとしよう。
その先はどうなる?
より多くの兵士がやってきて、村を制圧するだろう。
それら全てに対処するのか?
それを考えると、ある程度の無理は聞いた方が良いと思えてくる。
それによって、もっと大きな面倒を退ける事が出来るなら。
しかし、本当にそれでおさまるのかどうか。
要求はどんどん過大なものになっていく可能性もある。
むしろ、そうなる可能性しかないと思える。
その時に慌てて対処しても遅い。
「どんな事を言ってくるのか分からないけど。
無茶な事を言ってくるなら、こっちも考えないと」
「となると……」
「俺達が動いて主導権を握る。
そうする必要も出てくるかもしれない」
「なるほど」
物騒な事である。
出来れば騒動とは無縁でいたいものだ。
しかし、そうも言ってられない状況になっている。
「腹をくくらないとな」
「そうなりますな」
実際、動くなら今である。
武家も周辺への対応で忙しい。
そうそう兵隊をまわしてくる事も無い。
そんな事をすれば、前線を支える事が出来なくなる。
なので、事を起こすなら今が良い機会になる。
仮に、何らかの無茶や無理を強いられたとしよう。
それに従って、物や人を提供したとしよう。
そうなれば、村の力が激減する。
何かしようにも何も出来なくなる。
そうなってからでは遅い。
まだ余裕のあるうちに事を起こす。
それが出来るのは今しかない。
「とはいえだ」
それでもアツヤは慎重である。
「もし領主がまともな判断をするなら、それに従ってもいいだろう。
それだけの器量があればだけど」
「まったくです」
問題はそこになる。
領主もチヨマツが子供の頃の人とは変わっている。
今はその息子が仕切っている。
悪い人ではない。
平和な時期を大過なくこなすだけの能力はある。
だが、こうした荒れた時期にどう動くか。
それが分からない。
「最悪、反旗を翻す事になるだろうな」
それも覚悟しておかねばならない。
もし領主が馬鹿げた事をしでかすならばだ。
その時は、生き残りを賭けて行動していくしかない。
「面倒な事です」
チヨマツがぼやき気味の呟く。
だからといって、黙って従うつもりなどチヨマツにはない。
言われるがままに従ったらどうなるか。
それは幼少の頃に嫌というほど味わっている。
虐げられ、何も出来ずに潰えていく。
そのまま人生を終えていく事になる。
自分の人生を自分らしく過ごす。
その為には、それを阻害するものを排除するしかない。
相手の善意や慈悲などに期待など絶対に出来ない。
やるか、やられるか。
そのどちらかだけだ。
「でもまあ」
それでもチヨマツは思う。
「まともな判断をしてくれるなら、今のままでもいいんですけどね」
何も無理して自分が主導権を握る必要もない。
それはそれで手間で面倒が多い。
村を取り仕切る中で、チヨマツはそれを嫌というほど味わった。
この上、更に大きなものを取り仕切るのも面倒だった。
しかし、それが出来ないなら。
自分達が取り仕切るしかない。
領主を下に置いてでも。
その覚悟もチヨマツは持ち合わせていた。




