10回目 代表就任、中間管理職になってもらう
「……てなわけで、この村を変えていこうと思う」
夢の中でチヨマツに思いを告げる。
聞いてるチヨマツは、最初驚いていたが、
「いいですね、やりましょう!」
元気よく賛同してきた。
村を変えようと思ったアツヤは、早速障害にぶつかった。
村に直接手を加えられるわけではないのだ。
声や文字で指示を出したり。
物を動かしたり。
物理的・具体的な事は出来ない。
そりゃあ、豊作の可能性を高めたり。
無病息災といった影響を与えられるが。
あれをしろ、これをしろといった指示は出せない。
夢の中などで会話は出来るが。
それだと成就点を消費してしまう。
何をするにしても、成就点を使ってしまう。
なので、下手に動くのは効率が悪い。
幽霊状態のようなので仕方がないのだが。
そこで、代理人のような立場で誰かに動いてもらう。
アツヤの考えを村の者達に伝える事で。
間接的に指示を出していくという事だ。
こうでもしないと、アツヤの望みが伝わらない。
言ってしまえば中間管理職だ。
何かと気苦労の多い立場である。
その役目をチヨマツにやってもらおうと思った。
今の所は従順に言う事を聞いてくれている。
先々の事は分からないが、当面はアツヤの意をくんでくれる可能性が高い。
「村の中心としてがんばってくれ」
「うん、分かった」
とりあえず承諾を得ることは出来た。
「それで何をすればいいので?」
「そうだな……」
チヨマツに尋ねられて、考えていた事を伝えていく。
これが、おそらく村にだす最初の指示になると考えて。
「まず、幾つかの心得を新たに授けようと思う。
農作業と、健康についてのだ」
「はい」
「それを使って、田畑の実りを増やしてくれ。
それと、健康を保って病気で死ぬような者を減らしてくれ」
「分かりました」
これが最初の指示となった。
何はなくとも生産性の向上。
そして、労働力の確保である。
田畑からあがる収穫を上げて、収入を増やす。
そして、作業に従事できる人間の確保。
その為には死なずに健やかに育つ必要がある。
「これを村の者にも伝えてくれ。
そして、少しずつでいいから、収穫をふやしていってくれ。
人も出来れば生き残れるように」
「うん、みんなに伝えておきます」
「それじゃ、心得を授けるぞ」
そう言ってアツヤはチヨマツに知識や技術を授けていった。
*** 状態表示 ***
・チヨマツ
11歳 男
基礎能力
体力: 11
思慮: 13
知識・技術
格闘 レベル4 (補正+10)
教養 レベル4 (補正+10)
農業 レベル4 (補正+10)
衛生 レベル4 (補正+10)
*** 状態表示 ***
「とりあえずこんな所だ。
必要なものは今後も授けていくけど」
「その時はお願いします」
「ああ。
お前も村の仕切り、頼んだぞ」
「がんばります」
こうして、記念すべき第一回目の指示が終わった。
その後、村の様子を見てみると。
チヨマツは村の者達を集めてアツヤの言葉を伝えていた。
「神様からお告げがあった。
田畑の仕事、今後はこうしろと」
まずは畑仕事の方の指示を出していく。
基本的には簡単な事から。
少しずつ伝えていっている。
簡単な事でないと、すぐには実行出来ない。
少しずつでないと、やる事をおぼえきれない。
それが分かっての事だ。
やり方が分かっている。
授けた心得のおかげだろうか?
そうして田畑の事を喋った後。
今度は日々の生活における変更を伝えていく。
こちらは衛生的な事だ。
簡単にできるが、村の者達が今までやってなかった事でもある。
それを徹底するように申し伝えていく。
「背けば、神罰が下る。
ゆめゆめ忘れるな」
厳しい言いつけで締め上げるのも忘れない。
あまり高圧的で強圧的な事はしてもらいたくはないが。
これくらいは許容範囲だ。
そうした変化を少しずつ積み上げさせていく。
一回一回は小さなものだが。
何回も続ければ大きな変化になる。
そして、変化の結果は時間をかけてあらわれる。
それは収穫の時に。
今まで以上の実りとなってあらわれた。
そして、日々の生活。
今までなら、何かしらでてきた体調不良。
それが気がつけば何ヶ月も出て来てない。
そういった事を少しずつ村の者が実感していく。
それがチヨマツの言葉に重みを与えていく。
(なんでそんな事するのか分からんけど)
(でも、言ってる通りにやれば間違いはない)
(なら、黙って従っておくか)
そう考えるようになっていく。
理屈や理論が分からなくてもいい。
人間、それを理解出来るものはなかなかいない。
だが、実体験として効果があると思えば受け入れていく。
たいていの人間はそんなものだ。
例外的に、自分が気にくわなければ、効果があっても受け入れない者もいるが。
そういうのは放っておく事にする。
変える事は出来ないし、それで損をしても他の誰かの害になるわけではない。
関わってこなければそれでいいとしておく。
幸い、今の村にはそういう者はいない。
チヨマツを含めた20人の村人は、言いつけをある程度素直に受け入れていく。
こうして村は少しずつ発展していった。
その効果をアツヤは、全体を眺めながら感じていく。




