プロローグ
今は5月中旬、俺は高校2年生であるからもうそろそろ進路を考えなくてはいけない頃だ。とはいえ、俺は家の道場を手伝うと決まっているのであまり関係ない話だが。しかし、かなり過ごしやすい気候だなあ。もう少しで梅雨なのが残念だ。
そんなことを考えながら通学路を1人歩く。
「悠二〜」
おっと誰かが読んでいるようだ。誰だろう。
「長沢悠二〜。聞こえていないのか?」
あの声は圭介だ。特別仲がいい友達の声だからすぐ分かる。何度も繰り返さなくていいのにと思いながら返事をする。
「聞こえてるよ。それになんでフルネームで読んだんだ?」
「悠二って名前珍しくないからな。自分じゃないと思ってるんじゃないかと考えてな」
まあ、それもそうか。
「まあそれはいいや。圭介、お前今日朝練じゃなかったっけ?」
「いや今日は完全オフだ。昨日、公式戦だったからな」
圭介はバスケ部でありレギュラーではないが2年生ながら交代枠として起用されている。うちの高校のバスケ部はそこそこの強豪でインターハイなどの地区予選では毎年ベスト4以上に進出している。だから部員も多いのだが、その中で試合に出られる圭介はすごいのだ。
「なあ悠二、今日の放課後暇か?」
圭介に尋ねられた。
「ごめん、今日も修行があるんだ」
生憎今日も修行である。実家である武術道場で修行がない日はほとんどない。様々な体術、剣術、馬術、弓術などを5歳からほとんど毎日仕込まれている。俺には弓術の才能があるらしくもっぱらここ数年は弓術の鍛錬を集中的に行なっている。
「そうか。毎日鍛錬とは、お前もなかなかストイックだな」
「子供の頃からやっているからもう慣れてるんだ。ストイックなわけではないよ」
「普通嫌がって逃げ出すとおもうんだけどなあ」
このような他愛ない雑談をしていると学校に着いたようだ。