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心のささくれ

心のささくれ~スイミー~

作者: 山本大介

 ふと、思い出すことあります。

 

 小学校一年の夏休み、私は父の仕事の都合で転校することになった。

 わずかの期間、過ごした小学校の思い出は、牛乳が三角パックだったことと水泳のキャップがゴム製だったことぐらいだ。


 そんな淡い記憶・・・確か終業式の時、「スイミー」の本を貰った。

 母もその時いたと思う。

 先生はちょっぴり残念そうな顔を見せて、国語の教科書に載っていた「スイミー」の絵本と手紙を私に手渡した。

「スイミーになってね」

「?」

 私は意味が分からなかった。

 魚になれってこと?

 一人ぼっちのスイミーは、最後大きな魚の目になって、本当の大きな魚を追い返した。

 それは分かるけど・・・。

 子どもだった私は、絵本を貰ったことが嬉しかったのを覚えている、ただ何で「スイミー」なのかが分からなかった。


 手紙の内容は覚えていない。

 スイミーに即した話だったと思う。


 後日、母に何故、私が「スイミー」を貰ったかを聞くと、母は笑いながら、

「いい先生ね。いつか君が大きくなったら、きっと立派になれるって、大器晩成って」

「・・・大器晩成・・・?」

「そう後で、立派になれるってこと」

 と、言ってくれた。

 私はそう言われて悪い気はしなかった。


 今思えば、やっぱりクラスで浮いた存在だったのかなと苦笑してしまう。

 幼稚園も馴染めなかったし。

 それからいろんな体験や経験を通し、ゴツゴツした石が削られるように、普通らしく丸くなっていったと思う。

 普通がいいのかは分からないけど。


 それでも、自分を信じてくれた先生に、今の私はどうなのかと自分に尋ねると、自信がない。

 まぁ、生き方は悪くないなと思うけど。

 先生が思ったようには、きっとなってないな。

 ふと、スイミーを思い出すと、この記憶がよみがえる。



 小さなささくれ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぶわっ(´;ω;`) [一言] スイミーは夢中に読んだ記憶です。 初めて自分一人で読んだ絵本かも。 母が読むスピードの遅さに耐えられず、 「自分で読むからもういい」 と言ったとな。
[良い点] 小さい頃にいい出会いをしたんですね(*^^*) きっとその先生は、どんな姿でも自分の生き方に悪くないと感じているなら、誉めてくれると思います (* ´ ▽ ` *)ノ 思い出話しありがと…
[一言] 小学生の時、私もワルだったから親によく大器晩成て言われた~ (>_<) なにを言いますか? 今、一生懸命で頑張り屋さんの山本さんを当時の先生が見たら「フフ」っと笑いますよ (^^)
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