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消えた招待状を探せ!【冬童話2021】

作者: 庭城優静

また冬童話の時期になりました。


何とか投稿出来て本当に良かったです……!


え?時間?締め切りの2分前です……。今年こそ早めに動けるように頑張りたいですね。

 とある森の中。動物たちがひっそりと暮らしていました。

 しかし、今日はなんだか騒がしい。その理由は……、


「いよいよこの日がやってきたなー」

 

 毛並みを綺麗に整えたリスさんがニコリと笑いそう言います。


「森1番のいたずらキツネが結婚するなんてなー」


 食いしん坊キツツキがお腹を触りながら答えます。


 そう、今日はキツネのアラタとナカレの結婚式だったのです。

 この森では結婚をする動物は、牧師と呼ばれるヒトを読んで、結婚式を挙げるのが慣例となっているのです。


 みんなが楽しみにしている中、遠くの方で1匹のタヌキが大声で叫びます。


「しょ、招待状がない~!」


 タヌキのアヤマです。

 タヌキのアヤマはキツネのアラタと大の仲良しで今日の結婚式を誰よりも楽しみにしていたのです。


「……たしかに寝床にしまっておいたのにー!どうしてだ?まいったな。牧師様は招待状がないと式に参加させてくれない!」


 アヤマはブツブツと独り言を呟いて慌てています。


 こんな時、森の仲間たちが助けてくれるのではないか?そんな期待を込めてタヌキのアヤマは大声を出していたのです。


 しかし、誰もアヤマに「どうしたの?大丈夫?」と言ってくれる動物がいませんでした。


 それどころか、周りからは「悪さをした罰だね」とひそひそ声が聞こえる始末です。


 それもそうでしょう、森のいたずらキツネのアラタと仲良しのアヤマもまた、いたずら好きな動物だったのです。


 リスさんの寝床にヒトが使っているタワシという硬いごわごわしたものを置いて毛並みを乱しもしたり、キツツキの食事をこっそり奪って食べてしまったり……と、みんなこの2匹にはうんざりしていたのです。


 しかし、今日はおめでたい日。キツネのアラタの大事な日を台無しには出来ません。ですから、アラタに対して失礼な態度で接したりはしません。

 それにアラタもアヤマもみんなから嫌われているわけではないのですから。

 少々、悪さが過ぎているだけなのです。


 ですが、タヌキのアヤマは別なのかもしれません。みんなが手伝ってくれないのが、何よりの証拠です。



 タヌキのアヤマは考えた末、親友であるキツネのアラタの所に行きます。


 森にたたずむ白い教会、その横にある白い小屋にキツネのアラタは式の準備をせっせとしていました。

 アラタはアヤマを小屋の窓越しから見つけると、急いで出てきてアヤマに近づきこう言います。


「――どうしたんだ?アヤマ、そんなに息を切らして」


「実は……結婚式の招待状をなくしてしまったんだ……!」


「なんだって!?親友のアヤマが来てくれないと、折角の式が楽しめないだろ!」


 予想通りの反応にアヤマは肩を落として落ち込みます。もし、自分がアラタの立場だったら同じ言葉を言っているだろうと感じていたからです。


「どこを探してもないんだ……牧師様にお願いして参加させて貰えないかな?」


 アヤマの考えをアラタは首を横に振って否定します。


「……駄目だ。牧師様は頑固なんだ。知っているだろう?」


「うん、だよね……。それにしても、どこにいってしまったのだろうか、昨日の寝る時も確認をしたのに……!」


 アラタは少し無言で空を見上げた後、「もしかして……」と何か思いついたような発言をします。


「森の動物のやつらがやったんじゃないのか?」


「ええっ!ど、どうしてだよ?」


 アヤマの戸惑いを隠せない言葉を遮るように「いつもいたずらされたお返しだろうな」とアラタは言い放ちます。


 たしかに、動物たちは、慌てているアヤマを見て笑っていました。


「くそー、あいつら!今日という大事な日にやらなくても!」


 アヤマは歯をカチカチと立てて怒ります。

 しかし、その行為をアラタが止めさせます。


「……落ち着けって。怒ったら、みんなの思うツボってやつだろう?これは俺達が悪いんだ……いや、オレが悪い!ちょっと待ってろ!みんなに頭を下げてくる」


「ま、待てよ!それならボクも行く!」


「式の主役が謝った方が許してくれる可能性が高いんだよ。……丁度、ナカレは式の準備で小屋の奥にいる。会話を聞こえていないだろう。――今の内に済ませてくる!」


 アラタはそう言って、いつものような早い足で森の中に消えて行きます。

 いたずらをした後に、逃げる癖で足が速くなったのです。良いことといっていいのかどうかはわかりませんが……。


 さて、アヤマはひどく困りました。自分はアラタが戻ってくるまで、何をしていればいいのか。

 ぐるぐると周りながら考えますが、答えが出てきません。


 そんな時です。


「アヤマさん、大きなヒソヒソ声がこちらの方まで聞こえてきましたよ」


 森の奥から出てきたのは美しい毛並みをした、キツネのナカレでした。

 ナカレはゆっくりとした声でアヤマに話しかけます。


「ナカレ……聞いていたのかい?いや、小屋の奥の部屋にいるとアラタが言ってたはずなのに……どうして森から?」


「貴方たちが話す前から外にいたのよ。気分転換に外に出ていてもおかしくはないでしょ?」


 ナカレはニッコリと微笑みます。

 ナカレの言うとおり、式の準備も大切ですが、気分を落ち着かせるのも大事なことです。

 外に出ていてもおかしくはないでしょう。

 話を聞いたアヤマも納得して「それもそうだね」と答えます。


「話を戻しますが、もう1度寝床に戻って探してみたらどうですか?大分落ち着いてきたように見えますから、冷静に探せばひょっこりと姿を見せるかもしれませんよ?」


「そ、そうだね!ありがとうナカレ。というか、ごめんね。こんな大事な時にボクの所為で……」


 アヤマが頭を下げると、ナカレは夫になるアラタと同じ様に首を振ります。


「これはアラタにも非があるのですよ。自分のやってきたことのつけがここにきて出ているのですからね。さあ、いってらっしゃい」


 アラタは感謝とお礼を言って、自分の寝床に戻っていきます。

 ナカレはアラタを見送り、式の準備を再開するために教会に入って行きました。


***

「――――あった……!いや、違う!」


 アヤマは急いで寝床に戻り、くまなく探していると招待状――に似た紙を見つけたのです。


「アヤマ!こんなところにいたのか」


「アラタ!丁度良かった、これを見てくれよ!」


 アヤマの所に駆け付けたアラタに紙に記してある内容を読ませます。


「なになに――、招待状を返して欲しければ森の許しをもらえ、森の住民一同より……。なるほど、先程みんなに事情を説明してもアヤマに聞けの一点だったからな」


 アラタはうんうんと納得したように頭を縦に動かします。


「でも……いったいどうすれば?」


 アヤマの疑問に、アヤマは「簡単だよ」と返して言葉を続けます。


「森のみんなにあって、頭を下げるのさ」


 そう言って、「早く来い!」とアヤマの身体を軽く叩いて森を駆けていきます。


 

『今まで本当にすまなかった!!』


 教会の近くにいた動物たち、1匹1匹にアヤマとアラタは頭を下げます。


「いよいよ、心から謝ってくれる日がやってきたか」


 リスさんは心の無い謝罪を毎回見ていて呆れていたのです。


「こんな日にならないと素直に謝ることが出来ないってのはどうかと思うよ、本当に」


 リスさんは優しい口調ながらも、発する内容は厳しく、2匹は頭を下げ続けることしかできませんでした。


「……でも、大事な日の前に、しっかりと謝り、自身の身の振り方を改めることが出来た君たちは、立派になるだろうな」


 リスさんは鼻をフフッと鳴らし、綺麗な紙切れをアヤマに渡します。

 その紙こそが、アヤマがずっと探していた招待状の1部だったのです。


「ありがとう……!」


 アヤマがお礼を言うと、「まだこれは招待状の1部だ。残りはみんなが持っている。やることはわかるね?」


 アヤマとアラタはコクリと無言で頷き、他の動物たちの元へ向かって行きます。


 ウサギちゃん、イノシシくん、クマの旦那にモグラと次々に謝り、招待状の欠片を集めていきます。


「これだけ迷惑をかけていたって分かると恐ろしいものだねー」


 食いしん坊のキツツキはさすっていたお腹から招待状の欠片を渡します。


「豪華な食事を期待しているよ?」


「ああ……!任せてくれ」


 アラタは笑顔で返します。


 さあ、やっとのことで招待状の欠片を集めたアヤマとアラタは、のりを持ってきて招待状の欠片を作っていきます。


「出来たーー!……1か所だけ欠片が足りていないけれど、しっかりとした招待状の完成だ!」


 完成したとアヤマは言っていますが、形はぼろぼろ、見た目は最悪でした。


「急ごう、大分遅くなってしまった!」


「うん!!」


 2匹は急いで教会に入って行きます。


 教会の入り口の前に、牧師様が眼を瞑り立っていました。


「牧師様、招待状を持ってきました!」


 アヤマがそう言うと、牧師様は眼を開き「確認しましょう」と低い声で語ります。


「……1か所ないようですが、最後の欠片はどこに?」


「それが全員に謝って欠片を集めたはずなのに、1つだけなかったんです。……ボクは式に参加出来ないのですか?」


 ここまで頑張ったのに、結局ダメだったのか……。と、落ち込むアヤマの頭をそっと牧師様は撫でます。そして、こう言うのです。


「いいえ、入って下さい。残りの1つは中にありますから……」


 そう言って牧師様はヒトでなければ開けれないドアを開けると、そこには森のみんなが2匹の到着を待っていました。


 そう、森のみんな……。アラタのお嫁になるナカレも……。


「ナカレ……、君が招待状を?」


 アラタは驚いた声色で聞きます。アヤマは薄々勘づき始めました。

 そういえば、寝床を探せと言ったのはナカレだったと。


 ナカレの手に最後の欠片があったのが何よりの証拠です。


「ごめんなさい……。でも、わかってくれるよね?」


『うん。本当にごめん!そして、ありがとう』


 アヤマとアラタは声を揃えて言いました。


「よろしい……!それでは結婚式を始めます」



 とある森の中、ひっそり暮らす動物たちは、今までよりもより一層仲良く暮らしていくのでした……。

過ちて改むるに憚ることなかれ


これが今回の童話のテーマ……のつもりでした。

簡単に言うと、悪い事をしたと自覚したのなら、すぐにでも謝るべきだ。みたいな感じですかね?合ってる……?(おい)


時間ギリギリ過ぎて伝えられていない感じがしますが、とりあえず書けてほっとしております。


小説投稿自体久しぶりだったので、これから再開していきます。


もしよければ、『ブラバン・B・アンビシャス』という作品を読んで頂けると幸いです(宣伝!?)

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― 新着の感想 ―
[一言] 謝罪行脚お疲れ様でした。 どうにかみんなで式をできて良かったですね。 大切な結婚式の招待状をビリビリにしてまでアヤマに謝らせたかったのですから、森のみんなの不満は相当なものだったのですね。…
[一言] キツネのアラタは、ナカレというなんともしっかり者の奥さんをつかまえたのですね。 結婚というのは一つの節目ですし、タヌキのアヤマとともにみんなにきちんと謝罪ができたことは本当に良かったと思い…
[一言] 招待状見つかって良かったですね。 投稿お疲れ様でした。
2021/01/14 09:59 退会済み
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