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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
クルル編① エルフの少女と男子高校生
50/56

#49 エルフと人間

 次に俺が目覚めた場所は、さっきまでのような森の中ではなく、牢屋の中だった。


「目、覚めたか?」


「啓介、ここは」


「見ての通り俺達は捕まったんだよ。エルフに」


「捕まったって......」


 状況がいまいち飲み込めない。俺達の前にエルフが現れたと思ったら、急に眠くなってその後の記憶がない。恐らくだけど、眠らされた間に俺達はここに連れてこられたらしい。


(でもどうして牢屋なんだ?こういう時ってクルルの知り合いだって分かれば、こんな所に入れられる事無いはずなのに)


「そういえば奈緒と雛は?」


「ここにはいない。多分だけど俺達とは別の牢屋に入れられたんだろうな」


「二人とも分断されたのかよ」


 よく分からないことだらけで、頭の中が混乱してくる。ただでさえ右も左も分からない異世界にやって来たのに、もっと意味の分からない状況に置かれてしまったら、本来の目的どころの話ではなくなる。


(スーノさんが言っていた通り、だったのか)


「なあ悠、これからどうする、いや、どうなるんだ俺達は」


「分からない。まずはクルルに会ってみないときっと何も始まらないはずだ」


「安心しろ、お前達がクルル様に会うことは二度とない」


 俺と啓介の会話に突然割り込みが入る。よく見ると牢屋の外に一人のエルフの女性が立っていた。


「二度と会うことはないってなんだよ。俺達はクルルちゃんに会うためにここに来たんだぞ」


「貴様、口を慎め。我らエルフ族の長であるクルル様にちゃん付けなど失礼極まりないぞ」


「そんなこと言われたって、俺達にとってはクルルちゃんは長とかそんなの関係ない、ただのエルフで俺達の大切な友達なんだよ」


「啓介、お前......」


 まさか啓介がここまで熱くクルルを語るとは思わなくて、俺も少し驚かされる。でも俺も啓介と同意見だった。


「貴様らが何て言おうが、それを望んだのはクルル様自身以外に他ない。それでも愚弄するか」


「だからそれがおかしいって言っているんだよ。どうしてクルルちゃんがそんなことを望むんだ。こんな形で自分の世界に戻されて、そのままお別れだなんて望むはずがない」


「知ったような口を。それ以上言うならば、こちらも手段を選ばない」


 そう言うとエルフは何かを唱えた。すると牢屋の扉が開かれ、同時に俺達の身体は拘束された。


「なっ、どういうつもりだ」


「これから貴様らにあるものを見せてやる。それを見てもクルル様を友達とやらに呼べるのか、試してやろう」


 拘束されたままエルフに連行された俺達がやって来たのは、さっきまで俺と啓介がいた牢屋が沢山ある、大きいドーム状のような空間だった。


「こ、これはっ!」


「おい、まさかここに閉じ込められているのは」


「俺達と同じ人間?」


 「ここにいる人間達は、お前達のようにこの世界に迷い込んだ人間であり、私達の奴隷だ」


 2

 私と雛が目覚めた場所は、どこかの部屋みたいな場所で、そこに悠と啓介の姿は見当たらなかった。


「うぅ、頭が痛いよ奈緒ちゃん」


「それは私も一緒。それよりここはどこ?」


「なんかの部屋みたいだけど」


「うん。それにこの部屋、どこかで見たことが」


 それもつい最近、異世界ではなくて日本で。


(まさかとは思うけどここって)


「少しお久しぶりですね、奈緒、雛」


 考えを巡らせていると、この部屋の主であるクルルが部屋に入ってきた。


「やっぱり貴女の部屋だったのね、クルル。日本にいたときの部屋とそっくりだったからそうかなって思ってた」


「クルルちゃん!やっと会えた!」


 クルルを見るなり雛が抱きつく。


「もう、恥ずかしいです、雛」


 それを優しく受け止めたクルルは、少しだけ嬉しそうに、でもどこか寂しそうな顔をしていた。


「クルルちゃんが突然居なくなって皆心配していたんだよ? どうしてお別れも何も言わないで帰っちゃったの?」


「すいません、どうしても急いで帰らなければならなかったので」


「そんなことされたら、私達が......特に悠が悲しむって分かっていたのに、どうしてそんなことをしたの?」


「それは......クロサキさんには何も知らないままで居てほしかったんです。でも、それは叶わなかったみたいですね」


「相談くらいはしてほしかった。私達は出会って半年かもしれないけど、立派な友達のはず」


「友達でも......話せないことがあるんですよ、奈緒」


 クルルはさっきから何かを我慢しているように一言一言話している。その違和感が、クルルの話せない事情なのかもしれない。


(私達にはそれをこじ開ける権利もないの?)


 この時私は初めてクルルとの間にある大きな壁を感じた。


「そういえば悠達はどこにいるの? どうしてこの場には居ないの?」


「それは......クロサキさんには私には会わないで日本に帰ってほしいんです」


「どうして? 悠は貴女に会いたくてここまで来たのに」


「そんなの決まっています。今会ったら私の気持ちが揺らいでしまうから」


「気持ちが揺らぐ?」


 クルルはまた辛そうな顔をした後に、私達にこう言った。


「奈緒、雛にお願いがあります。恐らく今ここの地下にいるであろうクロサキさんを連れて今すぐ日本に帰ってください。私はどんなことがあっても、クロサキさんに会うことも、あの場所に帰ることもできません」


 それは私達にはあまりにも残酷すぎるお願いだった。

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