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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
クルル編① エルフの少女と男子高校生
49/56

#48 世界を飛び越え君の元へ 後編

 出発の朝。


「結局ほぼ何も持たないで向かうことになったな」


「私も......と言いたいところだけど、やっぱり少しだけ多くなっちゃった。大丈夫かな」


「一応スーノさんにチェックはしてもらうつもりだし、そこまで心配する必要はないんだけどな」


「そうだけど。でもほら、異世界に行くなんて初めてだから」


「それは皆一緒だ」


 きっとクルルも初めて地球に、日本に向かうときはこんな気持ちだったのだろう。

 寂しさと不安が渦巻いて、うまくやっていけるのか、そんなことばかり考えてしまって、眠れない日だって続いたのかもしれない。


(何もかもが初めてのこと。だから誰だって不安になるんだろうな)


 それは今の俺にだって言えることだった。


「とにかく気を引き締めて向かわないとな」


 それは俺自身に向けた言葉で、この先に自分がしようとしている事への覚悟でもあった。


(クルルはきっと驚くだろうな、俺達がやって来ることを。もしかしたら怒られる可能性だってある)


 けどそれをしなければならないだけの、理由が俺にはあった。


「おはようございます皆さん。 準備万端ですね?」


「はい。向かう覚悟はできています」


「分かったわ。なら、異世界への門を開くわね」


 スーノさんが指パッチンをすると、何もなかったはずの空間に突然扉が現れる。


「すげぇ」


 それを見た啓介が思わず言葉を漏らしてしまうほど、あまりに一瞬の出来事で俺達も同じ反応を見せる。


 けどそれはほんの一瞬で、俺は気を引き締めた。


(この先にクルルがいるんだな)


「注意点は昨日話した通りよ。特にクロサキさん、忘れていないわよね?」


「はい。忘れていません」


「そういえば昨日、悠だけ一人だけ残っていた時間があったけど、何か話していたのか?」


「たいした話はしてないよ。さあ、行こうぜ三人とも」


「いってらっしゃい」


 スーノさんの声を背に、俺達は異世界への扉を開いた。


 2

「え? 扉が開かれたんですか?」


 私の元にその話をが入ってきたのは、里に戻ってきて三日目のこと。


「恐らく開いたのはスーノ様だと思われます。今この世界にいないエルフは彼女だけですから」


「お義母さんが......」


 私達が言う扉というのは、こことは別の世界を繋いでいるもの。それが開かれるのはほとんどなく、自分が通ったとき以外に開かれたという話は、今までに数回しかない。


(誰かが私達の世界に来たって事ですよね? それって)


 答えは簡単で、私の胸の高鳴りを感じた。けど同時に、悲しくもなってしまった。


(どうして......どうして来てしまったんですか? クロサキさん)


 私は今クロサキさんに会えても、一緒にあの場所に帰ることはできない。それが約束だし、誓約でもあるから。


「入ってきた者への対処はどうしましょうか?」


「とりあえず里には案内をしてください。ですが彼らが何を言おうと私は会わないとだけお伝えください」


「彼ら? これから来る者達のことを知っているのですか、クルル様」


「私があちらにいたときに交流があった人達、ただそれだけです。ですが......ここでは違います。とにかく私は絶対に会いませんから」


 私は心の中に残る衝動をなんとか抑えて告げる。本当はここを飛び出してでも会いに行きたい、クロサキさん、奈緒、雛、啓介、皆に会いたい。


(でも、駄目なんです。駄目なんですよクロサキさん。だからどうか、どうか)


 何とか諦めて帰ってください、お願いします。


 3

 扉を通った先、そこで俺達を待っていたのは、予想通りと言うべきか森だった。


 ーただ、一つ問題があったとすれば


「森だな」


「森ね」


「森以外何もないな」


「里は、クルルちゃんはどこにあるの?」


 何かの不備か何か起きたのか、俺達が送られたのは文字通り森の中。最初からエルフの里に連れて行ってもらえると思っていただけに、肩透かしを食らった気分だった。


「というかもしかしなくても俺達」


「遭難したのかも?」


 つまりは俺達は、見知らぬ世界で森の中に放り出されたと言うことになり、クルルに会うどころかこのままだと野垂れ死ぬ可能性が出てきてしまった。


 「どっちに行けばいいか分からないのに、大丈夫なのかこれ」


 「とにかく、まずは何か目印になるものを探すぞ」


 このまま立ち尽くしていてもなにも解決しないと判断し、俺達は道なき道を歩き続ける。


 三十分


 一時間


 頼れる者が何もない中で、俺達はひたすら歩き続けたが、クルルどころがエルフの里も見つけられなかった。


 「もう私疲れたよー」


 「私も。一回休まない?」


 「とりあえずそこに洞窟があるし、そこで休むか」


 歩き続けた結果何も得られなかったことに、軽く絶望しつつ俺達は一旦休憩することにした。


 「なあ悠、これからどうするんだ」


 「どうするもなにも、歩き続けながら里を見つけるしかないと思う」


 「でもそんなことを続けたら、私達の方がいつか力尽きるわよ」


 「ああ、分かっているよ。だから今何とかならないか、作戦を考えているんだけど......」


 と、話の途中で洞窟の外に気配を感じて見ると、複数人のエルフがこちらを見ていた。


 「貴方がクロサキユウですね」


 「あ、ああ」


 「クロサキユウ、およびその他三人を我々の里に連行させていただきます」


 「随分遅いお迎えだったな。けど、これでクルルの所にいけるなら」


 引っ掛かる言葉が多かったが、歩き回る必要もなくなったならそれでいいと思った時だった。


 「なんだ、急に眠たく」


 俺の身体を睡魔が襲ったかと思った次の瞬間には、そのまま俺は眠りについてしまった。


 「これでヨシ。文字通り彼らを連行して、そのまま牢にぶち込むぞ」


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