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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
クルル編① エルフの少女と男子高校生
46/56

#45 クルルの秘密

「何だよ、これ......」


 朝起きて、クルルがいないことに気がついた俺は、彼女の姿を探すと机の上に手紙が置かれていた。


 そこに書かれていたのは、


 “さようなら、クロサキさん。そして返事をできなくてごめんなさい。いつか、クロサキさんが私を覚えてくれていたら、返事をさせてください”


 俺は部屋を飛び出し、隣のクルルの部屋に向かう。チャイムを鳴らしてみるが返事は返ってこない。


(さようならってなんだよクルル。もう二度と会えないみたいじゃないか!)


 俺は携帯片手にマンションを出て、クルルの姿がないか探す。


『もしもし? どうしたの悠。朝早くに』


「奈緒、落ち着いて聞いてほしい。クルルがいなくなった」


『え?』


「手紙を残していったんだ。さようならって。チャイムを鳴らしても出ない」


『分かった、私も探してみる』


 次に雛にも電話をかけて同じ用件を伝えてクルルを探すのを手伝ってもらう。


(どこに行ったんだよ、クルル!)


 とりあえず駅まで行ってみようと思ったその時、


「君がクロサキユウ君、だね」


 誰かに声をかけられそちらに向くと、


「貴方は......もしかして昨日の」


「覚えてくれていて助かるよ。こちらも話をしやすくなる」


 昨日クルルと話をしていたエルフの姿があった。


「私はアスタール。娘が世話になったみたいだから、最後の挨拶に来させてもらった」


「娘......? もしかして」


「ああ。君がよく知っているクルルの父親だ」


 2

 以前、クルルは俺達にこう語った。


『私は養子なんです。地球にいる両親は、血は繋がっていないんです』


 まだ出会って半月が経った頃の話だった。そこで出会ったスーノさんという女性は、クルルにとっては義理の両親で本当の両親は別にいるということ。


 そして彼女は、その両親から自分を守ってほしいと言った。


「すいません、なにもない家で。お茶くらいしか出せませんが」


 そして今俺の目の前にいる男性は、クルルの本当の父親と名乗った。


「いや、いい。私も長居するつもりはない」


 クルルの父親、アスタールは話があるから俺に接触してきたらしいので、外で話すのも失礼と思い家に通すことにした。


(あのクルルの父親だからもっと優しそうな人を想像していたけど、とんだ思い違いだったな)


 クルルを半年間見ていただけに、彼が纏っている雰囲気はどうしても彼女と重ならかった。


「本当は君と話をするつもりはなかったのだが、一応娘が世話になったから挨拶だけはしておこうと思って、今日は来させてもらった」


「クルルはどこに行ったんですか?」


 俺は僅かな希望に縋るようにアスタールさんに尋ねる。


「娘は今日元の世界へ帰ってもらった」


 しかしその希望はいとも簡単に打ち砕かれた。思わず手に持っていたコップを落としてしまいそうになる。


「帰った? どういうこと、ですか? いや、その言い方だと帰らされたに近いですよね?」


「当たり前だ、そういう約束だったからな。そもそも私は養子自体反対していたんだ。だが、色々事情があって娘の見識を広げるためにもとこの世界に送り出したんだ。勿論条件付きで、だ」


「条件?」


「ある程度クルルが成長をしたら、こちらに返してもらう。それがこちらの両親と交わしていた契約だった」


「契約......」


「ああ。丁度今ぐらいの年齢が我々にとっては、成長、大人になったと判断する姿だった」


 彼の言う基準が俺にはさっぱり分からないが、ようはクルルは本来だったらもっと早くに元の世界へ帰らなければならなかったらしい。


 ーけどクルルは、俺達に助けを求めるほどに自分の世界には帰りたくなかった、そういうことだった


「でもクルルは......以前元の世界には帰りたくないと言っていました」


「ここで暮らしていく内に情が移ってしまったのだろう。こちらの両親も血は繋がらずとも実の娘のように思えるようになってしまった、それらが重なって約束が破られたと考えている」


 よく言えば目には見えない絆、だが悪く言ってしまえばそれは我が儘みたいなものだ。


「それだけならもっと早くに連れ戻すこともできたのだが、半年前にクルルはもっと大胆な行動を取った」


「それが引っ越し......」


「そうだ。私の目をくらます意味も持っていたのだろう。結果的に更に半年も見つけるのに時間が掛かったが、ようやく家出娘を見つけることができたんだ」


「何でそこまでしてクルルを連れ戻したかったんですか?」


「簡単な話だ。エルフがこのような場所に住むべきではない、それだけだ」


 俺の言葉にアスタールさんはそうきっぱり言い切った。


「長話になったな。そろそろこれで失礼するよ。君達には感謝しているよ。娘をこの場所に留まらせてくれて。おかげで時間は掛かったが、見つけられた」


 最後にアスタールが残した言葉に、俺の中でブチッと切れる音がした。


「ちょっと待てよ」


「まだ何か?」


「あんたそれでも本当にクルルの父親か?」


「何を今更」


「俺達がクルルをここに留まらせた? クルルは自分の意志で、この場所が好きだからいたんだぞ? それなのにその言い方はおかしいだろ!」


 俺はいても立ってもいられず、アスタールの胸ぐらを掴んでいた。


「さっきから聞いていれば、クルルのことを分かっているように言っていて何一つ分かってない。エルフと人間が関わるべきじゃない? あんたは何も分かっていない。この半年間で俺達はお互いに助けて助けられてきたんだよ。今でも俺がここで生きていたのは間違いなくクルルのおかげだ。その時間が間違っていただなんて、そんなこと言う方が間違っているだろ!」


 言葉を止められなかった。今までずっと我慢していたクルルへの思い。何よりクルルの事を否定されたような気がして、どうしてもそれが許せなかった。


 「......君こそ何も分かっていない」


 だがアスタールはそれでも冷静に俺に告げる。


 「娘は......クルルは、間もなくエフル族の長になる子だ。このままこの場所に居続ければそれこそこちらが危険にさらされるんだぞ」


 彼女が隠し続けていた秘密を。

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