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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
クルル編① エルフの少女と男子高校生
42/56

#41 優しい手

「どうして! どうしてそんな大切なことを黙っていたんですか?! 私は悠ちゃんの彼女なんですよ?」


 四年前のあの日。俺は初めて栞と喧嘩をした。理由は勿論、俺がずっと彼女に秘密にしていたこと。


「話していたらどうにかなったのか? 俺は栞のためにしてきたことなんだぞ」


 その時は俺も冷静に話せなかった。自分が栞のためにしてきたことを否定されたような気がして、どうしてか俺も言い返してしまった。


「そんなに......私を信用できなかったんですか? それじゃあ私達の関係は? 彼氏彼女? 幼馴染み? それとも他人なんですか?」


「勿論俺達は付き合っているんだよ。付き合っているからこそ、傷つけたくなかったんだ。俺だけ傷つけば栞を救えるって、思ったんだよ」


「その結果、私が傷ついてもよかったんですか?」


「それは......」


 栞の事はよく知っていた。自分のために誰よりも傷つくのが嫌で、自分が傷つけばいいって考えてしまう人だ。


 ーそう、俺と栞は似ていた。いや、似すぎた


 どっちかがどっちかのために傷ついたら、自分も傷つくような人間だった。だから俺達は......。


「最初からこうなる結末だったんだよ。俺達はお互いに傷つけ合うだけだったんだ」


「それ以上言わないでください。お願いですから」


「俺達が付き合うのは......間違っていたんだよ、栞」


 2

 開かれた扉の先には一人の女の子が眠り続けていた。ただその眠りからは二度と目覚めない。


「栞......」


 三年前に一度だけ来てから、眠っている姿は何も変わっていなかった。


「あれが栞さん、なんですね」


「ええ。四年前からずっとああやって眠り続けているの」


「また髪の毛が短くなってる。誰かが切ってくれたのかな?」


「いつでも目を覚ましてもいいように、常に身体は綺麗にしてあるって聞いてる。俺は最後に来たの去年だけど、本当に何も変わってねえな」


 後ろの四人の会話をバックに、俺は栞のベッドに近寄りその手を優しく握った。


「やっと会いに来れたよ、栞。三年も待たせてしまってごめん」


 彼女の手を触れた瞬間、涙があふれ出した。あの日本当は掴みたかった手は、今は少しだけ温もりは残っていて彼女が生きているという証を教えてくれていた。


「三年前ここで眠っている栞を見て、俺は怖くなったんだ。俺のせいで栞がこうなったんだって、そう考えると辛くて辛くて。逃げるしかなかったんだ」


 届くわけもない言葉を俺は紡いでいく。ずっと言えなかった自分の気持ちを、人目もはばからずに吐露していく。


「ごめん、本当に......ごめん」


 溢れ出る涙は止まらない。顔はぐしゃぐしゃで、鼻水も垂れ流している今の表情は、とても栞には見せられない。


「クロサキさん、大丈夫ですよ。私達がついていますから」


 そんな俺の頭をクルルが、また優しく撫でてくれた。


(ああ、まただ。クルルがこうしてくれているだけで、楽になれる)


 俺はそれがまた嬉しくて、無言のまま泣き続けた。


 3

 私達の目の前で泣き続けるクロサキさんを見て、私の心にまたチクリとする痛みが走った。


(クロサキさんは、本当に栞さんのことが好きなんですね......)


 奈緒が言っていた辛いだけという言葉の意味は、こういう意味だったのかもしれない。


(私に......二人の隙間に入れるスペースはあるんでしょうか?)


 もしかしたら私の恋心はただの片思いなのかもしれない。そう考えてしまうと、またチクリと胸が痛む。


「悠、そろそろ」


 クロサキさんがそうすることしばらく。啓介さんが言葉を掛ける。するとクロサキさんは鼻を啜って立ち上がると、私の手を取ってくれた。


「ありがとうクルル。またしてくれて」


「私にはこうすることくらいしかできませんから。少しでもクロサキさんが楽になってくれたのなら、私はよかったです」


「本当にありがとう」


 目を真っ赤にしながらクロサキさんは、私にはそうお礼を言ってくれた。私がしたことは本当に些細なことなのに、どうして彼はここまで優しいのだろう。


(きっと誰にでも優しいんですよね。優しいからあんなにも誰かのために泣けるんですよね、クロサキさんは)


 向けられていた優しさが、私だけに向けられたものだと思っていたけど、それは本当に思い違いだった。

 それが分かってしまったとき、この恋も諦めた方がいいのかもしれない。そう思ってしまった。


 「そろそろ帰ろう、クルル」


 「はい」


 私はクロサキさんの後を追って、病室を後にした。


 「なあ、この後なんだけど時間あるか? 奈緒」


 帰り道。クロサキさんは奈緒に向けてそう言い出した。


 「私? 時間は大丈夫だけど、私だけ?」


 「ああ。二人だけで話したいことがあるんだ」


 そう奈緒を見ながらクロサキさんは言う。その真剣の表情から、かなり大事な話ということが私に伝わってきた。


(もしかしてクロサキさんは、奈緒に告白をしようとしているんですか?)


 そんな予感が不思議としてくる。クロサキさんはクリスマスは私を選んでくれたけど、本当は奈緒のことが好きで、私のことなんか......。


 「クルルもその後に時間をくれないか。クルルにも話がしたい」


 「え? わ、私ですか?」


 あれ、私にも話が......?


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