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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
クルル編① エルフの少女と男子高校生
39/56

#38 思い交錯する夜 前編

「じゃあまた、クルル」


「おやすみなさい、クロサキさん」


 クロサキさんと長い一日を過ごした私は、家の前でお別れして部屋に入ると、そのまま布団に飛び込んだ。


(すごく、楽しかったです)


 普段一度もしたことがなかったおしゃれをして、クロサキさんに少しでも似合っているって言ってもらえるように頑張った甲斐はありました。


(奈緒達には感謝してもしきれないです、本当に)


 自分の頬に触れるとまだ熱を帯びている。頭がボーッとして、風邪でも引いたのかと思ってもそうではなくて、クロサキさんの事を考えるだけでフワフワした気分になってくる。


(クリスマスプレゼントも、一緒の時間を過ごせたことも私にとってはすごく幸せです)


 この場所に引っ越してきてから、私はクロサキさんに色々なものをもらってばかりだった。

 初めての体験を沢山して、沢山の思い出を作って。半年という短い時間の中でお腹がいっぱいになってしまった。


(でももっと、クロサキさんと思い出を作りたいです)


 叶うならば今日みたいにもっと二人で出かけて、もっとクロサキさんの事を知りたい。そしていつか、私にも語ってほしい。


 ーずっと抱え続けている物語を


(あっ......)


 そして私はふと気づいた。私の今の気持ちは、そういう事だったことを。


(この気持ちがそう呼ぶんですね、奈緒、雛さん)


 きっと今までの暮らしだったら気づくことがなかった自分の気持ち。それに初めて向き合って、私は自分の中にある気持ちにようやく気づけた。


(クロサキユウ、さん。私は貴方のことが......)


 2

 クルルのことが好きって気づいたとき、たまに遊びに来るクルルといつも通り接することができるのか、正直不安になった。


(冷静になんてなれないよな、絶対に)


 栞の時は昔から顔を合わせていた間柄だったから、そんなことを気にしたことはなかった。でもクルルは違う。


(困ったことになった......)


 でもそれ以上に問題がある。俺はこの気持ちを彼女に伝えるべきなのだろうか。まず彼女が俺をどうなるのかも分からないし、嫌われている可能性だって零ではない。


(誰かに相談できないかな)


 一人で悩んでいても埒が明かないと思い、俺はスマホを手に取った


 一時間後。


「俺は啓介だけを家に呼んだはずなんだけど」


「私も一緒に暮らしているんだから、話し声が聞こえてくるに決まっているでしょ?」


「私は奈緒ちゃんから連絡をもらって、来ちゃった」


 俺の部屋にいつもの四人が集合していた。


(啓介と雛はまだいい。でも、よりによって)


 奈緒まで付いてきてしまったのは、完全に想定外だった。今一番相談してはいけない相手なのに、話ができるわけがない。


「それでどうしたんだよいきなり呼び出して」


 啓介には用件を話していなかったのは、不幸中の幸いだったかもしれないが、これだと何の解決にもならないのも事実だ。


「いや、ほら、もうすぐ年越しだろ? その前に集まっておきたいなって思ってさ」


「それなら何でクルルはいないの?」


「い、いや、今日はクルルは用事があるって言ってて」


「......怪しい」


 流石に言い訳が苦しすぎるが、ここで話してしまったら何が起きるか分からない。


「こ、この前新作ゲームを買ったんだ。皆で遊ぼうぜ」


 だから俺は全てを誤魔化すように、四人にゲームを勧めるのだった。


(このままでいいわけないのに、何やっているんだ俺は)


 3

 パーティーゲームは、かなり盛り上がりを見せ、一応気まずい空気になることは避けられた。


「じゃあ次は年末だな。集合場所はいつもの場所でいいよな?」


「ええ」


「だな」


「おやすみー」


 三人は夜にも帰ってくれたおかげで、今日は何とか乗り切ることに成功した。


(誰かに相談できるのは、当分先だなこれは)


 全員が帰った後、一息ついていると家のチャイムが鳴った。


(誰か忘れ物でもしたのか?)


 俺は立ち上がり玄関へ向かうと、鍵を閉め忘れていたのか勝手に扉が開かれた。


「どうした奈緒、忘れ物でもしたのか?」


「ええ。忘れ物をしたわ」


 戻ってきたのは奈緒だった。一瞬ビクッとしたが、忘れ物をしただけだったらしい。


「待ってろ、今取ってくる。何を忘れたんだ?」


「物じゃないわ」


「え?」


「悠に聞き忘れたことがあったから、戻ってきたの」


 心臓が跳ね上がった。俺は奈緒に背を向けたまま振り返れない。


 「な、何だよ聞き忘れたことって」


 「今日啓介だけを家に呼んだ本当の理由」


 「げ、ゲームで遊ぶつもりだったんだよ」


 「ふーん、二人で?」


 「そ、そうだけど」


 「悠」


 「はい」


 「単刀直入に聞く。クリスマスにクルルと何かあったのよね?」


 本当奈緒はその辺りが鋭すぎる。俺がどんなに隠し事をしようとしても、彼女には簡単に見抜かれる。全てを見透かされているような、そんな感じがしてたまに怖くなる。


 今日みたいに嘘をついた日には特にそうだ。


 「別になにも......無かったよ。二人で一緒に出かけて、イルミネーションを見て帰ってきただけ。それ以外は何も」


 「なら私の顔を真っ直ぐに見て言ってよ」


 「......」


 振り返れない。今の俺の顔を奈緒に見せたら、どんな言葉を言われるか分からないからだ。


 「振り返ってくれないの? どうして?」


 「悪い、奈緒」


 「こっちを向いてよ悠。もっと私を見てよ、悠!」


 こうなるのが怖かった。また三年前と同じ事が繰り返されてしまいそうで。


 あの時も自分を好きと言ってくれた奈緒を傷付けてしまいそうで


 「奈緒、俺は......」


 「クロサキさん、奈緒? どうしたんですかこんな時間に」


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