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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
クルル編① エルフの少女と男子高校生
36/56

#35 聖夜の幻想曲 クルル編③

 奈緒の涙の理由も聞けず、そのままクリスマスパーティーも終わりを迎えてしまった悠は、ただただ胸が苦しかった。


(俺はまた奈緒を泣かしたのか?)


 その涙も拭うことができない悠は、自分の決断は正しかったのか迷いが生じてしまう。


(あれだけクルルに偉そうに言ったくせに、肝心の俺がこんな調子じゃ駄目だろ)


 自分が迷ってしまっていたら、クルルを不安にさせるだけになってしまうと何とか気持ちを立て直す。


「クロサキさん?」


 片付けを終えたクルルが、一人葛藤する悠を心配して声をかけてくる。こんなやり取りをするのは果たして何度目だろうか。


「先程から元気がないようですが、何かありましたか?」


「大丈夫。最近忙しくて疲れてただけだよ」


 そして悠はいつものように笑って誤魔化す。そうやって自分を保ってきたあの頃のように、誰にも弱いところを見せないように。


「駄目ですクロサキさん。嘘は」


「嘘だなんてそんな」


「私には分かってしまうんです。クロサキさんが嘘ついているのも、その理由も」


「何でそんな分かったようなことを言えるんだよ」


「理由は......話せません。でも分かるんです」


「だから!」


 クルルの言葉に悠はつい苛立ってしまう。彼女に強く当たっても何にもならないと分かっていても、悠は自分の気持ちを吐き出す以外の選択肢はなかった。


「ごめん......俺......」


 すぐに自分の行動を後悔し、クルルに慌てて謝罪する。


(幻滅したよな、きっと。本当格好悪いよな俺)


 部屋に沈黙だけが流れる。恥さらしな自分を見てほしくない悠は、もうクルルに帰ってもらおうと口を開きかけた時、クルルがその身体を優しく包み込んだ。


「......え?」


「もう強がらないでいいんですよ、クロサキさん。誰にも話せなくても、私だけでも貴女の側にいますから」


 悠の頭を撫でながらクルルは囁く。ただそれだけなのに、悠の心は雪解けのように解け出していく。


「不安なんだ、奈緒達とこのまま仲が悪くなるんじゃないかって。皆がこんなおれのことをどう思っているのかなんて何一つ分からないし、かといって俺はクルルを無下にもしたくない」


「分かっています」


「三年前俺は大きな過ちを繰り返して、それをまた繰り返すんじゃないかって考えるとやっぱり不安になるんだ。大丈夫だって何度言い聞かせても、心の中にある不安が消えない。だから俺は......俺は......」


 次々と自分の気持ちを吐露する悠を、クルルは優しく抱きしめ受け止めてくれていた。彼女がどうしてそこまで分かっているのか、そんな疑問を抱く暇も無く、悠は自分の気持ちだけを吐き出した。


 2

 自分の部屋に戻った後も手に残っている悠の感覚を、クルルは抱きしめていた。


(大胆な行動を取ってしまいましたね私)


 悠のあんなに辛い表情を見ていたら、無視できるような薄情ではないと自分で理解している。


(クロサキさんは結局あれ以上語ってくれませんでしたが、三年前のことは余程辛いことだったんですね)


 踏み込んで聞いたら、もしかしたら悠も教えてくれたのかもしれないと思いながらも、クルルは首を横に振ってその気持ちを消す。


(いつか教えてもらえれば、それでいいですよね)


 それよりもクルルは明日のことに思いを馳せる。彼女にとって初めてのクリスマスは、今日のパーティーよりも心が躍る日になりそうで楽しみだった。


(服は奈緒達が用意してくれましたし、きっとクロサキさんにも気に入ってもらえますよね)


 部屋の壁にかけてある明日の服を眺めながら、クルルは頬を少しだけ赤く染める。


(これを着てクロサキさんと明日はデート......するんですよね)


 昨日までは意識していなかったことが、前日になって強く意識してしまうクルル。


 彼は可愛いって言ってくれるだろうか


 服を気に入ってくれるだろうか


 どんな言葉を言ってくれるか想像するだけで、ドキドキしていることにクルルは気づき赤みが増す。


(奈緒達に言われるまで気づかなかったんですが、これってデート、なんですよね。しかも私はそれを無意識で誘った、そういうことなんですね)


 元の世界にいた頃にはそんな言葉は一度も使ったことはなかったクルルは、先日奈緒と雛に協力してもらったときにその言葉を教えてもらった。

 他にも知らない言葉を沢山教えてもらったものの、クルルの心に強く残っていたのはデートという言葉だった。


(好きな男女が一緒に二人で出掛けること、それがデート......。私とクロサキさんがお互いに好き......流石にそんなわけないですよね)


 ならどうしてこんなに身体が熱くて、心臓が高鳴るのか。


『その気持ちを恋だって言うんだよ、クルルちゃん』


 雛の言葉が蘇る。


『こい? 何ですかそれは』


『クルルが悠に抱いている気持ちのこと、と言っても分からないか......。折角だから当日に確認してみればいいと思う』


『確認できるものなんでしょうか』


『きっと分かると思うよ! クルルちゃんを見ている私達ですら、分かっちゃうくらいなんだから』


『......分かりました。自分で確かめてみます』


(恋の言葉の意味、明日必ず見つけ出してみせます)


 いよいよ運命のクリスマスデート当日を迎えるー

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