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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
出会い編 異世界からやって来た少女
33/56

#32 聖夜の幻想曲 序曲 後編

「どうすればいいんだ、俺は」


 奈緒が家に帰った後、俺は一人苦悩していた。それもそうだ、思わぬ二人からクリスマスの誘いを受けたのだ。


(クルルもそうだけど、まさか奈緒にまで誘われるなんて)


 クリスマスに二人きりに。言ってしまえばデートに誘われる。その意味を二人はちゃんと分かっていて、自分を誘ったのだと悠は思う。


(その気持ちに俺は応えないと駄目、なんだよな)


 勿論両方を選ぶことはできない。どちらかに断りを入れなければならないのだ。


 ークルルか奈緒か


 与えられた贅沢すぎる選択肢。けど悩んでいる時間はあまりない。


(答えは決まっている、はずなのにどうして俺は......こんなに胸が苦しいんだ)


 その理由はさっきの奈緒が見せたあの表情が原因だった。


 2

「私は貴方一人を誘っているの、悠」


 奈緒は本気だと言わんばかりに、俺の目を真っ直ぐに見つめて離さかった。きっと彼女は、クルルも俺のことを誘ったことを知っていて、こういう行動を取ったのかもしれない。

 自意識過剰過ぎるかもしれないが、昼の啓介の言葉を思い出すとそうだとしか思うことができない。


「本気で言っているんだよな?」


「こんな場面で冗談を言うような人間に見える?」


「いや、悪いことを聞いた。来れでも結構驚いているんだ」


「私が誘ってきたことに?」


「それもあるけど」


「けど、何?」


 俺は何も答えられない。演劇部の一件から、奈緒の俺に対する接し方が大きく変化しているような気がする。

 無自覚なのか本心なのかは分からないが、何か奈緒の中で大きな変化でもあったのだろうか。


(それとももっと昔から、奈緒はこうで俺が鈍感なだけなのか、よく分からない)


「悠」


「な、なんだよ」


「私本気だから」


「え? 本気?」


「クリスマスに私は貴方に話したいことが沢山ある。沢山あるから......待っている」


 奈緒はそれだけ言うと、まるで何かを俺に懇願するように数秒間見つめてきた。


 ー僅か数秒間の沈黙


 でもその一瞬だけでも、俺は少しだけ奈緒に見とれてしまった。


 3

 翌日は二学期の終業式で、授業もなく帰宅部の俺はそのまま真っ直ぐに家へ帰った。


(結局今日は何も答えは出せなかった......)


 あれから一日俺は悩んだが、どちらに返事をするか答えを出せなかった。それを察してか二人ともクリスマスの話題を振ってくることもなく、いつも通りの学校だった。


(気を遣わせたよな絶対)


 クルルも奈緒も放課後は部活なので、今日は多分だけど彼女達と顔を合わせることはない。それが唯一の救いなのかもしれないが、このままズルズル引っ張ったら彼女達を怒らせてしまう。


(ここは男らしく決めないと駄目だよな)


 改めて俺は自分の気持ちに向き合おうと目を閉じる。


 ークルル


 今年の夏にお隣に引っ越してきた異世界の少女。最初挨拶にやって来たときは俺も戸惑ったが、彼女の明るい性格には元気をもらった。文化祭の時には色々あったけれど、それも乗り越えて今は演劇部の一員として頑張っている。

 啓介や周りに何度かからかわれているが、俺は彼女に惹かれているのかどうなのか、その答えは未だに出ていない。もしかしたら、このまま出ない可能性もある。


 ー奈緒


 幼馴染みの一人の女の子で、啓介の双子の姉。常にクールで冷静沈着と思いきや、時々感情を表に出したりすることもある。そういうギャップは可愛いところもあるし、男としてはやっぱり惹かれるものがある。演劇部の舞台監督としても周囲を引っ張っていくリーダーシップも持ち合わせているが、その反面一人で悩んでいることも多い。

 そんな彼女が、先日俺の前だけに見せた表情。それを見て一瞬でも俺は見とれてしまった。普段とは違う一面は奈緒にもあるんだって。


 俺は今この二人からクリスマスの誘いを受けている。両方を選ぶという選択肢はない。いつまでもグズグズしていたら、男として格好悪いし情けない。


(それだけは絶対に駄目だ。駄目だから決めないと)


 俺は意を決してスマホを手に取り、ある連絡先を開く。そこに俺はメッセージを送った。


『昨日の返事、させてほしい』


 きっと彼女なら部活終わりに読んでくれるだろう。そう願って、俺はメッセージの送信完了を確認した。


 4

 ピンポーン


 夜。夕食を終えてテレビを見ていると家のチャイムが鳴った。少し遅い時間になってしまったが、どうやらちゃんと彼女は来てくれたようだった。


 「ちょっと待ってて、今行く」


 テレビの音を消して玄関に向かうと、悠が扉を開ける前に向こうから家の扉が開かれた。


 「すいません、クロサキさん。どうしても部活が遅くなってしまって」


 悠がメッセージを送った相手、クルルは学校の制服を着たまま彼の家にやって来た。鞄を持ったままの辺り、家にも帰っていないらしい。


 「悪いな急に呼び出して」


 「いいんです、どうせ部屋は隣ですから」


 クルルを部屋に招き入れて、ソファに座らせると、悠はクルルにホットココアを渡す。


 「ありがとうございます。これはココアですか?」


 「ああ。こんな時間だと寒いだろうと思って作っておいた」


 クルル一口ココアを飲むと、はぁっと一息をつき、顔をほころばせる。


 「甘くて美味しいです」


 「気に入ってもらえてよかった」


 そう言いながら悠はクルルの隣に座り、自分もココアを飲む。


 「それで......クロサキさん、昨日の返事とはどういうことでしょうか」


 悠も一息ついたところで、クルルが本題を振る。


 「クリスマスの話なんだけどさ、昨日クルルが言ったように二人でクリスマスツリーを見に行ってみないか?」


 「え?」


 「聞こえなかったか? 来週のクリスマス、俺と二人で過ごしてほしい」

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