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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
出会い編 異世界からやって来た少女
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#3 エルフちゃんと幼馴染ズ

「つまりまとめるとこの子は、私達と違う世界から来て、たまたま悠のとなりに引っ越してきたから、ここでの生活を教える事になったって事?」


「まとめるとそんな感じかな」


 悠は昨日から今日まであった事を雛に説明。簡単にまとめてみたものの、内容としては現実とはかけ離れた内容なのは間違いなかった。


「じゃあクルルちゃんは今日から私の友達だね!」


「え? で、でも、そんないきなり」


「友達になりたいから私が入ってきた事も黙ってくれていたんでしょ? ならなろうよお友達に!」


「は、はい」


 雛の明るさっぷりに戸惑う間もなく友達にさせられてしまうクルル。多分会ってみたいだけだったのだろうけど、こういうポジティブなところはやはり雛らしかった。


 悠自身もその明るさに何度助けられた事か。


「それで悠、どうしてクルルちゃんは朝私が電話した時点で一緒にいたのかな? しかも一泊してしまったような雰囲気だったけど?」


「そ、それは、不慮の事故というか、クルルが寝ちゃったからで」


「そ、そうなんです。私、ご飯食べさせてもらった後、眠くなっそのまま」


「そういう事にしておいてあげる。どうせ啓ちゃんにも同じ説明をするんでしょ?」


「あ、ああ」


 雛が言った啓ちゃんというのは、朝倉啓介(あさくらけいすけ)。悠の幼馴染その二。今日の宿題片づけよう会にも勿論参加する事になっている。


(これをもう一回するのか……)


 啓介も雛も理解力のあるから、まだ問題ない。だがもう一人、厄介な人間が一人いる。


「啓介はまだいいんだ。もう一人いるだろ」


「あぁ……」


 幼馴染その三


「ふうん、なるほど。とりあえず悠は極刑ね」


「待て奈緒。まずは話を聞いて」


「聞いた上での結論だから仕方ない」


「仕方ないとかじゃないよな?!」


 朝倉奈緒(あさくらなお)。名前から分かる通り、啓介とは双子の姉弟だ。年齢は一緒だが、威圧感とか口調から彼女を上の存在として認識している。


「どんまいだな悠」


「どんまいで終わらせられる話じゃないからな!?」


 という事で以上の三名が悠の幼馴染で、彼の秘密を共有する事になる三人だった。


(どうしてこうなった)


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 満身創痍になりながらも悠は三人に事情を説明。何とか納得してもらい、本来の目的である夏休みの宿題の一掃作戦に入った。


「あの、サクラギサン」


「んー? 何クルルちゃん? あと私の事は雛でいいよ? 私もクルルちゃんって呼んでるし」


「それは、まだ恥ずかしいです」


 その間やる事がないクルルは、自分の部屋にも帰らずただ四人の光景を眺め続け、それも飽きたのか雛に話しかけていた。


「あの、本当に私が友達になっていいんですか?」


「そんなの当たり前だよ。だってこんな出会い一生に一度ないし、私今日ここに来て本当によかったっ絵思ってるもん」


「あ、ありがとうございます。私もこうして話す人が沢山出来て嬉しいです」


 雛の言葉に少し頬を赤らめながらクルルは答える。その動作さえも可愛らしくて、悠はまた少しだけ見とれてしまっていた。


「なあ悠」


 そんな様子を見ていた啓介が小声で悠に話しかけてくる。


「まさかお前、かのじょにひとめ……」


「ば、馬鹿! そんな訳あるか!」


 スルーしようとした悠だが、思わぬ言葉がでてきて強く否定してしまう。


「何? 悠まだ隠し事してる?」


「ち、違うからな奈緒。お前の弟が勝手な事いっただけだからな!」


「なになに? 悠がどうしたの? 啓ちゃん」


「聞いてくれよ悠がな」


「やめてくれ!」


 確かに一目見たとき可愛い子だなと思ってしまった。けどそれが果たしてそれに繋がるか悠には分からない。


(それこそ早すぎるだろ)


 誰が一目惚れなんか……。


 その後つつがなく宿題は進んでいき、気がつけば夕刻。昨日クルルと出会った時間と同じくらいになっていた。


「そういえば今日もクルルちゃんは悠の家に泊まってくの?」


「え、えっと、流石に迷惑だと思いますので今日は帰ります。荷解きとかしないといけないですし」


「そういえばそうだよな。引越しの挨拶に来てからそのままだよな」


 あれから丸一日クルルは家に帰ってない。部屋の中がまだ段ボールだらけなのは容易に想像できる。


「とりあえず今日はこれで帰ります。お母さんに連絡とかしないといけないので」


「ご飯は大丈夫なのか?」


「さ、流石に大丈夫です! 私も……一人暮らしに慣れないといけないので」


「そっか。ならいいか」


「えー! クルルちゃん帰っちゃうの?」


「仕方ないだろ、ただでさえお前達を泊めるのに部屋が一杯なんだから」


「悠とクルルちゃんがまた一緒に寝ればかいけ」


「するか!」


 引きとめようかと思ったが、それを止める。彼女にも彼女の暮らしがあるし、悠達はまだ宿題と奮闘しなければならない。

 昨日は仕方がなかったとはいえ、連日泊まる理由はどこにもなかった。


「お、おやすみなさい。クロサキサン」


「ああ、おやすみ」


 玄関先までクルルを送り、別れる。丸一日エルフが自分の家にいたとは思えないくらい、部屋には静けさが残った。


(少し寂しいな……)


 相手はお隣さんだからいつでも会えるはずなのに、彼女を送った悠の心には少しだけ寂しさが残ったのだった。

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