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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
出会い編 異世界からやって来た少女
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#24 エルフちゃんと思い出

「簡単なものしか作れなかったけど、消化にいいから食べて」


「ありがとう奈緒」


 奈緒が作ってくれたのはうどんで、悠はそれを簡単にたいらげた。


「ごちそうさまでした。うん、美味しかった」


「満足してくれたなら嬉しい。早めに風邪を治しなさいよ」


「分かってるよ」


 と奈緒に忠告されながらも、丸一日体を動かさないわけにもいかず悠はベッドから立ち上がる。今朝のように体が動かないということはなく、フラフラになりながらも自分が食べた食器を運ぶ。


「ちょっと、無理はしない方が」


「やってもらってばっかりってわけにはいかないだろ? 奈緒だって本当は休みたかっただろうし」


「別に明日も休みだから、そんなこと気にしてないのに」


 今まで何度もこういう経験があったので、少しでも体が動けさえすれば家事はちゃんと自分でやるようにしていた。


「悠って誰かに完全に甘えるみたいな事って滅多にしないわよね」


「そうか? 昔は割と甘えることが多かったと思うけど」


「それはまだ小さい頃の話でしょ。一人暮らしを始めてから……いいえ、正確にはあの時以来から悠って人に頼らないようになってる」


「……」


「久しぶりに悠の口からあの子の名前が出ると思わなかったわよ。そんなに似てた? クルル」


「……似てた、というよりは少しだけ面影が見えたんだよ。性格は正反対のくせにさ」


 悠はそう言いながら笑ってみせる。何かを誤魔化しているわけではない。本心からそう思ったのだ。


「今日ねクルルが、悠のことを聞いてきたの」


「俺のこと?」


「正確には出会う前の昔の悠の事だけどね。ほら、私達何度も言っているでしょ?」


「それでなんて答えんだ?」


「私達からは何も教えられない、って。悠だって嫌でしょ?」


「……まあな」


 クルルにいつか話すときは来るかもしれない。けどそれは決して今ではない。それを雛も奈緒も、そして悠自身も分かっている。


「もうすぐ四年、か」


「早いわね」


「本当早すぎる。けど四年経っても俺も、いや、俺達も、忘れられないよな」


「忘れられるわけないじゃない。栞は私達の大切な友達だったんだから」


 大切な友達。


 悠にとってはそれ以上の関係だった。


 四年前まで悠達はクルルとは別の五人目の仲間がいた。


 足立栞(あだちしおり)


 奈緒達にとっては親友。


 悠にとっては大切な恋人だった。


 ■□■□■□

 次の日。

 文化祭の振替休日二日目のこの日は、クルルと奈緒と雛の四人が揃って悠の家にやって来ていた。


「昨日あのまま泊まったのかよ……」


「だってクルルちゃんが泊まっていっていいって言うし」


「お泊まり会、してみたかったんですもん」


「だからってクルルだってまだ病み上がりなんだから、無理だけはするなよ。雛達だって風邪がうつったら意味ないだろ?」


「もう! 折角楽しいお泊まり会だったんだから水を差さないでよ」


「俺は心配しているだけだって」


 一晩休んだおかげか、悠の体調も良くなっていて、クルルが考えていたようなことは起きなかった。ただまだ悠もまだ完全に回復してはいないので、その看病を何故か四人で行おうという事になってしまった。


(俺は重い病気でも抱えているのかよ……)


「じゃあ私はクロサキさんに料理を作りますね」


「私は悠の部屋の掃除」


「私クルルちゃんのお手伝いするね」


「「それはやめてくれ(やめなさい)」」


「何で?!」


 雛は料理の食材を買い出しに向かうことになりましました。


「あの、どうしてサクラギさんに料理をさせてはいけないんですか?」


「それは……なぁ」


「クルル、人には思い出したくないことだってあるのよ」


「過去に何があったんですか……」


 遠い目をする奈緒と悠に苦笑いをするクルル。何があったから詳しく語れないものの、それが二人にとってある意味黒い歴史なのは間違いなかった。


「でもそういうのいいですよね」


「いいって、雛の料理がか?」


「違いますよ。いい思い出も悪い思い出も語りあえる友達がいるの、少しだけ羨ましいです」


 少しだけ寂しそうな顔をするクルル。


「何言っているんだよ。クルルだってこれから俺たちと一緒に作っていくんだろ? 思い出」


「そうそう。羨ましがる必要なんてどこにもないわよ。もう私達は立派な友達なんだから」


 文化祭やその後でいろいろな事が起きたものの、それら全部彼らにとっては大切な思い出。


 そしてその思い出の中にクルルがいるのも確かな事。


「そうですよね。なら一つお願いがあります」


 いい事も、


「お願い?」


「私にもサクラギさんのご飯を食べさせ」


 悪い事も、


「さて雛が戻ってくるまでに掃除しないと」


「俺も食器の準備くらいはしないとな」


 黒歴史も全部、


「だから何があったんですか?!」


 青春の中に確かにある思い出。



 その後雛が買い出ししている間にクルルと奈緒、そして悠の四人で部屋の掃除をし、それが終わる頃に雛が帰宅。


 夕食は奈緒とクルルの手料理を皆で食べるという形になった。


「ねえねえ悠、今この状態を見て何か思わないの?」


「何か思わないって?」


「今日は啓介がいなくて、悠が私たちを独り占めできるんだよ? 男の子だったら普通ムラムラすると思うんだけどなぁ」


「ムラムラって……あと俺は病人だからな」


 雛の言葉にやれやれとため息をつく悠。しかし雛の話に乗ってきたのは、意外な人物だった。


「む、ムラムラしないんですか?! クロサキさんは」


「く、クルル?」


「私はクロサキさんの為なら、全てをさらけ出して」


 突然自分の衣服を脱ぎ出すクルル。悠は慌ててそれを止めようとしたが、


「お、落ち着け!」


「さらけ出し……てぇ……」


 クルルはそのまま悠にもたれかかってしまった。そしてそこで悠は気づく。


「病み上がりですぐの文化祭とこの二日間。だいぶ無理させすぎたな」


「どうしたの? 悠」


「クルル、この前ほどではないけど熱を出してるぞ。あと雛、お前もだ」


「ふえ?」


 クルルの体が熱いことと、雛の顔が真っ赤になっている事に。


「本当世話の焼ける二人ね」


「こんだけ一緒にいて平気な奈緒が羨ましいよ」


 この後雛は母親に迎えにきてもらい、クルルは昨日と同じように薬を飲ませてちゃんと眠らせるのだった。




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