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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
出会い編 異世界からやって来た少女
23/56

#22 エルフちゃんと看病

 その後悠が再び目を覚ましたのは、明かりも付いてない自宅のベッドだった。


(あれ? 俺いつの間に)


 文化祭が終わって緊張の糸が切れて目を瞑った辺りからの記憶がない。時間は深夜の三時。

 おでこには冷えピタが貼られていて、布団はちゃんとかけられている。


(誰が家まで……)


 しかしその疑問は、悠のお腹を枕にして眠る一人の少女によってすぐに解決する。


(クルル……)


「今度は看病される側になるとは思っていなかったな……」


 眠るクルルの頭を撫でながら呟く。きっと家までは雛達と協力して運んでくれたのだろう。その後はクルルが付きっ切りで……。


「ありがとう、クルル」


 起きている気力も湧かないので、悠はクルルに一度礼を言うと再び目を閉じる。するとすぐに眠気はやってきて、そのまま眠りにつくのだった。


 ■□■□■□

 翌日。

 文化祭の振替休日で休みとなったこの日、悠は鼻を通る美味しそうな香りとともに目を覚ました。


(時間は十一時。結構寝たんだな)


 時計で時間を確認した後、匂いをした方に目を移すとそこには台所で料理するクルルの姿があった。


「クルル、まさか朝ごはんを作って」


 思わず思った声を口に出すと、それが聞こえたのかクルルは振り返った。


「クロサキさん!」


 そして悠が目を覚ましたことを確認するなり、台所を飛び出て悠のところまでやってきた。


「よかった……目を覚ましたんですね?」


「心配かけて悪かったな。クルルがここまで?」


「いえ。サクラギさん達に手伝ってもらったんです。家まではサクラギさんのお母さんが車で運んでくれて」


「そっか……雛達も……」


 体を起き上がらせようとするものの、うまく動かすことができない。体感的にはそこまで熱があるようにも感じないので、悠は少し戸惑う。


「やっぱり身体動かないですか?」


「やっぱりって?」


「もし悠さんの風邪が、私からうつったものだったら普通の風邪ではないんです」


「普通の風邪じゃないって、クルルがエルフだからか?」


「簡単に言うとそうなります。あくまで私が風邪をうつしてしまったと言う前提での話ですが」


「そんなに危ないのか?」


「菌に対する耐性が人とエルフでは違いますから……」


 クルルの言葉に不安になる悠。現に体を動かせない状況なのだから、もしもの可能性がないわけではない。


(ただの熱だよな? 本当に)


「なのでクロサキさんにはその菌に抗ってもらうためにも、私特製の料理を食べてもらおうと思ったんです。私のお義母さんから受け継いでいる味です」


「そもそもクルルって料理できたのか?」


「ほとんど教えてくれたのはクロサキさんじゃないですか」


「俺は基本的なことしか教えれてないだろ? それにそっちの料理なんて知らないし……頑張ったのはクルルじゃないか」


「そんなに褒められると……恥ずかしいです」


 クルルはそう言いながら悠の元に小鍋を持ってくる。先日悠がクルルに作ったお粥に使ったものだ。


「すいません、勝手にお借りしました。私小鍋を持っていなかったので」


「いいよ、作ってくれただけありがたいからさ」


 小鍋に入っていたのは、日本の味噌汁ご飯に近いものだ。ただし具材は見覚えのないものが多い。


「少し苦味はあるかと思いますが、体にはいいので食べてください。クロサキさんには今後も私の料理を食べてもらいたいので……」


「え?」


「な、何でもないです。さあ、どうぞお食べください」


「いただきます」


 クルルに勧められ、スプーンでそれを口にする。


「げほっ、げほっ」


「ど、どうかしたんですか?! もしかしてお口に合いませんでしたか?」


「ち、違う。ただ思っていた以上に苦くて……」


「や、やっぱり私の料理は……」


 しょんぼりとするクルルに、悠は慌てて取り繕うように、次の一口を口にする。


「に、苦さには驚いたけど、全然美味しいよ。もっと食べれる」


「ほ、本当ですか?! それならよかった……」


 安心したような笑みを浮かべるクルルを見て、悠も内心ホッとする。


(これがクルルの世界の料理か……)


 異国料理ならぬ異世界料理は、少しだけ自分には早かったことを実感させられた悠だった。


 ■□■□■□

「ご馳走様でした」


「お粗末様です」


 その後クルルの料理をしっかりと完食した悠は、自分に代わって洗い物をしてくれているクルルを布団で寝ならが横目で眺めていた。


(昨日とは立場が逆転だな……)


 一人暮らしが続いていた分、こういう光景を見るのは久しぶりだった。どんなに辛くても自分で炊事洗濯するしかなく、こういう時に誰かを頼れることがほとんど無かった。


 それはクルルも同じことで。


「何かこういうのいいな」


「え?」


「俺も一人暮らしが長いからさ、一人で何とかしなきゃいけないことが多かったんだよ。だけど今こうしてクルルを見てるのも……なんかいいと思ってさ」


 熱でまともな思考をしてないからかそんな言葉が出てしまう。そんな悠の言葉を聞いたクルルは、


「く、クロサキさんがいいなら……私何度でも来ますよ」


 顔を赤くしながらそう答えた。


「へ?」


 今度は悠がそう言葉を返してしまう。


「も、勿論クロサキさんに色々なことを教えてもらうのが前提ですけど!」


 自分の発言に更に恥ずかしくなったのか、クルルはそう言葉を付け加えた。


(何だろう今一瞬胸がドキッとしたような……)

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