#21 エルフちゃんと文化祭⑦
「では文化祭の無事の成功と、クルルの転入を祝して、乾杯!」
『かんぱーい!』
クルルのために開かれた悠達が用意したパーティは、クラス全員が参加してくれたこともあり、クルルにとってもそして悠達にとっても楽しいひと時になった。
「クルルちゃんってすごく肌が綺麗だよね。普段何かお手入れとかしてるの?」
「別に何か特別なことはしていませんが、規則正しい生活は常に心がけていますよ」
「じゃああとはお母さんの血なのかな?」
「え?」
クラスの人達はクルルの事情を知らないため、悪気はないもののクルルは少しだけ複雑な気持ちになる。
「そういえばクルルちゃんのお母さん、すごく綺麗な人だったよね」
「羨ましいなぁ。美人なお母さんの血を引いてて」
しかしそれに続けられた言葉がそんな気持ちを消させてくれる。
(私とお義母さんが似ている……血は繋がっていないのに……周りからはそんな風に見えてくれているんでしょうか)
そう考えたら顔が自然と綻ぶ。
「私お義母さんにそんなに似ていますか?」
「似てるよー。ねえ雛?」
「そうだよクルルちゃん。私も初めてお義母さんに会ったけど、すごく似ていてびっくりしちゃった」
「サクラギさん……」
雛達の言葉に思わず目頭が熱くなってくるクルル。
「く、クルルちゃゃん? どうしたの? 私何か変なこと言った?」
「違います、こんな事言われたの初めてで……それが嬉しくて……」
「だからって泣かなくても……」
実の母親に捨てられた自分を、助けてくれた大切な人。だけど血は繋がっていない。本当は似ていることなんてないと思っていた。
けど雛たちがかけてくれた言葉が、クルルにとって救いとなった。
「す、すいません。余計な心配させて……でも本当に嬉しいので気にしないでください。私……雛さん達のような人に会えて本当に良かったです」
「な、なんか急にそんなこと言われると私達が恥ずかしくなっちゃう」
「私達はただ思ったことを言っただけなのに」
クルルの不意打ちの言葉に、彼女を囲っていた雛達は顔を赤らめ恥ずかしがる。
「み、皆さんどうしたんですか?! 私こそなにか変なこと言いましたか?」
やはり天然の破壊力は高いのだと悠はこっそり思うのだった。
■□■□■□
文化祭が終わったのが夕方過ぎのこともあって、打ち上げができたのは一時間半というちょっと短い時間になってしまった。
「ちょっと寂しい、ですね」
「どうせまた学校で話せるからいいだろ?」
「はい! お話しできる人が沢山増えました!」
「それならよかったよ」
昨夜の様子とは打って変わって、すっかり元気になったクルルに悠は一安心する。
(これで本当に終わり、だな)
実行委員として頑張った一ヶ月。あっという間の時間ではあったものの、とても濃い時間になった。
クルルが熱を出したりして一時はどうなるか心配したが、終わりよければ全てよし。悠は椅子に座って大きく息を吐いた。
「お疲れ様悠」
「雛もお疲れ。一ヶ月、本当あっという間だったな」
「ね。でも楽しかったよね」
「ああ。楽しかったよ本当に」
全てが終わった安心からか、眠気が悠を襲う。
(これから家に帰らなきゃいけないのに、眠いな……)
「悠?」
「本当無事に終わって……よかっ……」
なんとか眠気に打ち勝とうとするも抗えず、悠は重い瞼を閉じてしまう。
「ちょ、ちょっと悠、これから家に帰るのに今寝たら……」
「すぅ……」
そしてそのまま眠りについた悠は、体を雛に預ける。雛はそれを拒まずに、受け入れるものの雛はある事に気がつく。
「熱っ! 悠、すごい熱!」
「クロサキさんが?!」
悠が眠ってしまったのは疲れからではなく、高熱で耐えられなくなっていたからだった。悠はそれに自覚がなかったものの、文化祭とクルルの看病で彼の体はかなり弱ってしまっていたようだ。
「ど、どうしますか? まだ学校ですよ?」
「私のお母さんに車で来てもらって、それで家までは連れて行ってもらう。それまではとりあえず保健室に運んでもらって……クルルちゃん頼める?」
「私がですか? は、はい、分かりました」
雛が電話を手に教室を出て、クルルは悠を担ごうとするが流石に男一人を女性一人で運ぶのに苦労する。
「クルルちゃん、私が手を貸すね」
「委員長さん、ありがとうございます」
そんな彼女に手を貸してくれたのは律。二人で悠の両肩を担ぎ、保健室へと連れて行く。
「クルルちゃん、悠が高熱を出したって本当か?」
「大丈夫なの?」
途中で話を聞いた啓介と奈緒が追ってくる。
「とりあえず今保健室に運びます。ナオさん達も力を貸してください」
「了解」
その後四人で協力して悠を保健室に運び、車が到着するまで保健の先生に悠を任せて保健室を出る。
「まさかクルルちゃんに次いで悠まで体調崩すなんてな」
「黒崎君、文化祭の準備とかずっと頑張ってきたから、それが祟ったのかも」
「花咲さんだっけ? 手を貸してくれてありがとう」
ホッと四人は一息をつく。ただクルルだけは少し浮かない顔をしていた。
「どうしたのクルル」
「私がクロサキさんに風邪をうつしちゃったんでしょうか?」
「一晩一緒だったらそうかもしれないけど、別にクルルは何も悪くないわよ。誰だって風邪は引くんだから」
「そうですが……ちょっと気がかりなことが」
「気がかりなこと?」
「クロサキさん達が引く風邪と私達が引く風邪は事情が変わってくるんです。もし私の風邪がクロサキさんにうつったら」
「何かあるの?」
「最悪の場合死に至るかもしれません」




