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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
出会い編 異世界からやって来た少女
19/56

#18 エルフちゃんと文化祭④

『え? クルルちゃんが家にいない?』


「ああ。ちょっと心配だから探してから学校に行くからそれまで任せた」


『任せたって、見つからなかったらどうするの?』


「意地でも見つける!」


 登校時間の一時間前。悠は雛に遅刻することだけを伝えて、家を出た。


(今行かない方が余計にクラスメイトと距離離れるってのに)


 確かに言葉にしただけなら伝わらないことが沢山ある。だから悠達は彼女をクラスの輪にちゃんと入れようと、サプライズを用意していた。

 けどもしもクルルがそれすらも欠席してしまったら……。


(この一ヶ月大した場所には行けてないから、遠くには行ってないはずだ。早く……早く見つけてやらないと)


 ■□■□■□

 文化祭の一週間前。

 クルルは雛と奈緒と三人だけで放課後に集まっていた。


 呼びかけたのは彼女自身。


 女子だけでどうしても話をしてみたかったのだ。


「クラスに馴染めない?」


 そしてその相談内容は、悠に打ち明けたものと同じものだった。


「はい。サクラギさんは特に分かると思いますが、私がこの一ヶ月ほとんど話していたのはサクラギさんとクロサキさんだけでしたよね?」


「確かに言われてみれば……」


「奈緒達以外に誰か話しかけてきたりはしなかったの?」


「ほぼありませんでした。私から話しかけようとしなかったのもあるかもしれませんが、クラスの人達が私から距離を置いている気がするんです」


 クルル自身が一ヶ月で感じ続けた孤独感。悠達がそれを支えてきてくれたものの、それでもクルルの頭の中は孤独の文字が消えなかった。


「最初はそんなものだと思うけど私は。私達からしてみたらクルルは、突然転入してきた外国人みたいなものだし、事情を知らなたい人達はまさしくそうだと思う」


「つまり私のことをクラスの皆に話せばいいってことですか?」


「それも手段の一つだと思っていいと思う。お互いのことをよく知らないと、仲良くにだってなれないし」


「お互いのことをよく……」


 それがコミュニケーションの一つなのはクルルも理解している。けど彼女の心の底にあるのは、


(本当は……クロサキさん達でさえも巻き込みたくないんです。誰も傷つけたくは……)


 自分がここにいることへの迷い。悠達は自分を助けてくれると言ってくれた。そしてその言葉はすごく嬉しかった。


 ただ他の人はどう思うのだろう。


 もし何も知らない人達が知らぬ間に自分の事情に巻き込まれてしまったら、その先に何が待っているか分からない。


 怖い。


 この場所に今自分がいることが怖い。


「クルルちゃん? どうしたの?」


「あ、す、すいません。ちょっとボーッとしてしまって」


「もしかして他の人に話すことに抵抗がある?」


「正直に言ってしまえば……」


「あくまで一つの可能性の話だから無理する必要はないけど、私達四人だけでできることも限られてる。だからもっと人を頼って、信じてみていいと思うわ」


「……」


 奈緒の言葉に自分自身の言葉が出てこないクルル。彼女の言う通りにすればきっと自分は楽になれる。


(人を信じることは大切なこと、それは分かっていますよナオさん。けど私が一番怖いのがそれなんです)


 きっとこの言葉を口にすれば二人は傷つく。だから言葉にはできない。


「考えておきます……クロサキさん達にしているようなことを、他の人にもできるようにしてみます」


 だから嘘の言葉を並べてしまった。本当の気持ちを隠した嘘の言葉を。


「ねえねえクルルちゃん、一つ聞いていい?」


「何でしょうか?」


「奈緒達はともかくどうしてクルルちゃんは私と悠を苗字で呼ぶの? 仲良くなれてたつもりだったんだけど、違うのかな」


「そ、そんなんじゃありません! ただ呼ぶのに慣れていなくて」


「それならいいんだけど……」


「あの、気を悪くしていたならすいません。いつかはその、ちゃんと呼べるようにするんで」


 慌てて弁明するクルル。しかしそれがかえって不自然だったらしく、奈緒からこんな言葉が出てきた。


「ねえクルル、もしかして私達もクラスの人達と一緒で信用されてない?」


 ■□■□■□

(どうして今になって私は、自分のことを話したことを後悔しているんでしょうか……)


 見透かされたような奈緒の言葉。それが一週間だった今でも、鮮明に頭から離れないクルル。文化祭から、クラスから逃げた彼女は今公園のベンチに座って黄昏ていた。


(クロサキさんも私に失望しましたよねきっと。全てから逃げ出した私を)


 けどそれでいい。

 全てを話しておきながら勝手かもしれないけど、彼らの元から逃げるのにはちょうどいいきっかけになった。


(クロサキさん、皆さん、すいません。でも私はこの道を進むしかないんです)


 悲しいことなんて何もない。その筈なのに視界が滲む。後悔なんかしてない筈なのに、胸が苦しい。


(これでいい、はずなのにどうして……)


「クロサキ、さん」


 思わず彼の名前を呼んでしまう。理由は分からない。でも彼女はいつの間にか彼を求めてしまった。


 この声が届くはずもないのに。


「まったく寂しがるならこんな真似するなよ」


 不意に聞こえた彼の声にクルルは顔を上げる。するとそこには彼女が求めた彼の姿があった。


「クロサキさん……どうして」


「決まってるだろ、これから学校に行く」


「でも私」


「あのなクルル、物事を何でも決めつけるのはよくないと俺は思うぞ」


「私決めつけてなんか」


「決めつけてるから今ここにいるんだろ? けど何事も自分の目で確かめる必要があると俺は思う」


「それはどういうことですか?」


「その答えは今から学校に行けば分かる」


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