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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
出会い編 異世界からやって来た少女
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#15 エルフちゃんと文化祭①

 朝、登校してきた雛によって知らされたクルルの文化祭当日の欠席。クルルにとって初めての大きな行事なのに、こんな事になってしまいいたたまれない気持ちになる。


「とりあえずクルルはホールだったよな? なら調理班から一人回すしかないな」


「調理班が大変になるけど大丈夫?」


「俺がフォローに回ってなんとかする。とりあえず初日はそれで何とか乗り切ろう」


「わ、分かった!」


 この日はクルル以外の欠席者はいなかったものの、ホール担当だったクルルが欠席した穴を埋めるのは簡単ではなく、全体の指揮を執る悠がカバーに入らなければならなかった。


(よりによって文化祭初めてのクルルがこんな事になるなんて……)


 一番辛いのはクルル自身ではあるものの、彼女にも楽しんでもらいたかったという気持ちが悠や雛にあったため、二人も辛かった。


「明日には治っていて欲しいけど」


「俺夜にお見舞いに行ってくるよ」


「私も行こうか?」


「いや、いいよ。熱が移ったら悪いし」


「じゃあお願いね、悠」


 不穏な空気が拭えないまま文化祭初日、悠達の「メイ執事喫茶 エルフィン」が開店したのだった。


 ■□■□■□

「おかえりなさいませご主人様」


「おかえりなさいませお嬢様」


 メイドと執事の声が飛び交う教室。悠と雛もそれぞれ着替えをして、接客を行なっていた。


「黒崎君、二番テーブルのオーダー、まだだって」


「分かった、今作ってくる」


 文化祭なだけあって他校からの生徒や地元の人のお客さんが多く、エルフィンは午前中から繁盛していた。ただ、やはり一人空いてしまった穴は大きく兼任した悠はとにかく忙しかった。


(文化祭を楽しむどころじゃないなこれ)


 勿論クルルのせいではないので彼女を責めるつもりはないし、逆に彼女のことを悠は心配していた。


(今家で一人だよなクルル)


 一人暮らしで怖いのがこれだ。いざ自分が熱を出した時看病してくれる人がいないのだ。実際悠も経験したことがあるのでその辛さは身を以て知っている。


「はい、これ二番テーブルに持って行ってくれ」


「ありがとう!」


 ただ心配はしても現状どうにかしてあげることができないので心苦しい。


(駄目だ今は目の前のことに集中しないと)


 楽しめるはずの文化祭の初日の午前中は、クルルのことが心配でなかなか集中できない悠だった。


 ■□■□■□

 午後。

 客足が落ち着いてきたこともあり、他のクラスを見て回る時間ができたので、悠は雛と一緒に啓介と奈緒のクラスにやって来ていた。


「クルルちゃんが休み? 何でよりによって文化祭の日に」


「だろ? 二日あるとはいえちょっと可哀想だよな」


 早速クルルのことを啓介に報告すると、同じような反応が返ってくる。


「二人とも話しするのは構わないけど外でしてくれる? 次のお客さん待ってるんだけど」


 ちなみに啓介達のクラスはお化け屋敷ということで、お化けメイクをした啓介と暗闇で会話するという何ともシュールな光景が繰り広げられていたが、奈緒に怒られたので仕方なく教室を出る。


 ちなみに一緒に入った雛は、


「ゆ、ゆ、悠、もうお化けは出ないよね?」


「もう教室出たから怖がるなよ」


「だ、だってさ」


 四人の中でもお化けが嫌いなので半分涙目になりながら啓介達のクラスを後にし、校庭にある屋外ステージのテーブル席に三人飲み物を買って腰掛ける。


「一人暮らしなのに熱を出すって、一番辛いよな。看病しに行ってやれよ悠」


「行きたいのは山々なんだけど、流石に抜け出すのは無理だろ?」


「可哀想だよねクルルちゃん」


「でもこればかりは運が悪かったとしか言えないよな。誰が悪いってわけでもないし」


「そうだよなぁ」


 三人して一緒にため息を吐く。体調不良なんていつ起きてもおかしくないことだし、魔が悪いことだってある。だから誰を責めることもできない。

 飲み物を一口飲んだ後啓介が「そういえば」と口を開く。


「ここ数日クルルちゃん元気なかったよな」


「啓介も気づいてたのか?」


「当たり前だろ? 病は気からとも言うし、それも原因の一つだったりしたんじゃないか?」


「確かにそれもありえるな」


 三日前のこともあるので悠は頷く。連日の忙しさで忘れていたが、結局クルルの元気がない理由は分からなかった。

 雛もそのことに一度も触れない上に、クルル自身無理に誤魔化そうとしてそれが不自然で……。


「本当は熱じゃなくてそっちのことが原因だったりするんじゃないのか?」


「でも文化さを休むほどのことか?」


「それは俺達にはわからないよ。分かるのは」


 悠は雛を見る。先日彼女は何かを知っているような口ぶりをしていた。その彼女なら何かしらの理由を知っているのかもしれないと思い期待した。


「だからこの前も言ったけど、私からは何も話せないって。それに熱なのは本当だし、これ以上詮索しようとするなら私も怒るよ?」


「何だよ雛急に怒って。悠と何かあったのか?」


「別に何かあったわけじゃないけど、雛が隠し事するから」


「悠?」


「わ、分かったよ」


 あからさまに何かを隠しているのは分かっている。けどそれを露骨にここまで隠そうとするのは分からなかった。


(俺が心配しすぎなだけ、なのか?)


 結局重苦しい空気は変わらないままそれぞれのクラスに戻り、文化祭初日は何も起きることなく終わったのだった。


 ■□■□■□

 そしてやってきた放課後。

 悠はクルルの家の前に立っていた。


(この前は招き入れてもらったから大丈夫だったけど、流石に怖いな)


 そんなこと考えながら恐る恐るチャイムを鳴らすが返事がない。その代わりに家の鍵は開いていた。


(鍵が開いてる?)


 勝手に家に入ってしまうのも抵抗を感じるが、もしもの事があったら困るので家に入った。


「おいクルル、いるのか?」


 返事はない。リビングの明かりはついているので、留守という訳ではなさそうだが、恐る恐るリビングへと足を踏み入れる悠。


「く、クルル!?」


 その先で彼を待っていたのは、高熱に耐えられなくなったのか地面に倒れて意識を失っているクルルの姿があった。

 慌てて駆け寄り、額に手を当てると予想通りかなりの高熱。


(この熱さ、かなりやばいんじゃないか?)


 とりあえず安全そうな場所にクルルを寝かせ、悠は電話を取る。電話をかけたのは奈緒。


「奈緒、大変だ! 今すぐ来てくれ!」

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