#14 エルフちゃんのスクールライフ③
クルルの義母スーノと出会ってから二週間後。クルルも学校生活と一人での暮らしもようやく板が付いてきた頃、悠達は大きなイベントを一週間後に控えていた。
それは文化祭。
文化祭実行委員にもなっている悠は、一週間後に控えたこの日も忙しくしていた。
「何というかベタなものになったよなうちのクラス」
「私は好きだけどね。メイド服着てみたいし。悠だってそう言いながら期待しているんでしょ?」
「期待? 何を?」
「またまたぁ。本当は楽しみなんでしょ? クルルちゃんのメイド服姿」
悠達のクラスはメイド&執事喫茶として出店することが既に決まっていて、悠達男子は執事、雛達女子はメイド服を着るという何ともベタなものに落ち着いた。
「な、ば、馬鹿! だ、誰がいつそんな事を」
「言ってないけど分かりやすいよ、悠は」
「そんなわけ、ないだろ」
(期待してないといえば嘘にはなるけど)
「ほ、ほらそれよりそっちの飾り付けを頼むよ。俺今から実行委員会の集まりがあるから」
「はいはい、いってらっしゃい。本当誤魔化すの下手なんだから」
こんな感じでとにかく忙しいこともあり、悠の頭からは二週間前のことがすっかり抜けていた。
忘れていたわけではない。
ただ考えている余裕がなかったのだ。忙しい日々の中で、日常が変化し始めていることに。
「あのサクラギさん、放課後何か予定ありますか?」
「どうしたのクルルちゃん。別に大きな用事はないけど」
「ナオさんと三人だけで話したいことがあるんです。なので来てくれると嬉しいんですけど」
「奈緒も? 分かった、じゃあ放課後校門の前で待ち合わせね」
「ありがとうございます」
■□■□■□
文化祭三日前。
休日のこの日、悠は店で出す料理の食材の買い物を買いに、クルルと雛と三人で出かけていた。
「よし、これで足りなかった分は全部だな」
「保存は私に任せて。悠に任せると腐らさせそうだから」
「別に腐らせねえよ」
買い出しもほぼ終わりを迎え、あとは帰るだけになった頃、ふと悠はあることに気がついた。
「そういえばクルル、最近元気がないけどなんかあったか?」
それはクルルの異変。今日もこうして三人で買い出ししている間も、ほぼ相槌しか打たず自分から会話をすることもなかった。
そしてそれは今日に限った話ではないのも悠はちゃんと気づいていた。
「へえ、ちゃんと見てたんだ悠」
「ちゃんと見てたって、普通気がつくだろ? 特にここ最近は元気がなかったし」
「心配かけてすいません、クロサキさん。でも……大丈夫なので気にしないでください」
「大丈夫って言われてもな」
笑顔でそう言う彼女は、明らかに無理しているように見えた。
「と、とにかく大丈夫です! あ、私用事思い出したのでこの辺で失礼しますね!」
「あ、おい、クルル」
そしてそれすらも誤魔化すように足早にクルルは悠達の元からいなくなってしまった。
「うーん、これは重症かな」
「重症? 何か知ってるのか?」
「知ってても教えなーい。それより悠、今か二人でお茶しない?」
「え? でもクルルは」
「大丈夫大丈夫。私が保証するから。それとも嫌?」
「嫌じゃないけど……分かったよ」
クルルを追いたかったものの、雛に押されたため仕方なく彼女とお茶をすることになり、近くの喫茶店に立ち寄った二人。
(本当に大丈夫なのか? クルル)
しかし雛と話をしている間も、悠はクルルのことを心配していた。
「まだ心配してるの? 女の子の前で他の子のこと考えるのはご法度だよ?」
「そうは言うけど心配じゃないのか? 雛は」
「うーん、心配じゃないわけじゃないけど、クルルちゃん自身の問題だから、気を遣わせちゃうかなって」
「クルル自身のこと? まさか」
「あ、例のことではないよ? それはちゃんと私達に相談してくれるって決めたし。そうじゃなくて、別のこと」
「別のこと? というか知っているのか? 雛」
「さあ、どうでしょう。でも一つだけ言っておくと、心配しているならそっとしておいてあげて。逆にクルルちゃんを苦しめちゃうから」
「逆に苦しめるって……」
雛が何を言っているのか悠には分からなかった。ただ彼女もそれ以上のことは答えてくれず、話題は文化祭のことに戻る。
「クルルにサプライズ? なんで急に」
「クラスの女の子が言ってたの。クルルちゃんがクラスに来てからまだあまり話せてないって」
「確かにクルルと話をしているのって俺たちくらいだからな」
「だから二日目が終わった後にサプライズパーティーを開こうかなって。勿論啓介達も誘ってね」
「なるほどな。それはいい案かもな」
「それで悠に準備してもらいたいものがあるんだけど」
そう言って雛は悠にメモを渡してくる。そこに書いてあった内容は、残り四日で十分に準備できるものだった。
「分かった俺が用意しておく。あとはクルル次第だな」
「うん。多分大丈夫だと思うけど、私から一応連絡もしておくね」
「その方が助かるよ」
結局最後までクルルの話題で、二人のお茶は終わった。帰り際にもう一度雛に「余計な心配はしないであげてね」と念を押されたものの、文化祭当日までの間悠の心配は消えることがなかった。
そして文化祭当日。
その心配は別の方向で当たってしまうことになる。
「クルルが熱で休み?」
「うん。朝連絡があって……」
悠達にとって二度目、クルルにとっては初めての文化祭は波乱の幕開けとなった。




