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隣人のエルフちゃん  作者: りょう
出会い編 異世界からやって来た少女
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#13 エルフちゃんのお義母さん 後編

 外で立ち話をするのもなんだという事で、スーノの厚意で悠はクルルの家に初めて入ることになった。


(き、緊張するな、やっぱり)


 今まで雛の家や奈緒の家に遊びに行ったことはあるので、女の子の家に行くのは多少耐性があったものの緊張を隠せない。


「お、お義母さん、本当にいいの? クロサキさんを家に招いて」


「あら、嫌だったの? 私はてっきり大歓迎だと思っていたんだけど」


「そ、そんな事ないよ! だ、だって男の人を家に上げるなんてそんなことした事ないし……く、クロサキさんはいい人ではあるんだけど、抵抗がまだあるというか」


 どうやらそれはクルルも同じらしく、義母に抗議しているのが悠が座っている場所からも見える。

 現在悠はリビングのソファに腰掛けて縮こまり、クルルとスーノはキッチンで何かをしているという感じになっている。


(落ち着かない)


 クルルの家の家具は普通に女の子らしいものが多く、特に変わった家具が置いているわけでもない。けどどうしても居心地が悪く、早く帰りたい気分になってきた。


「お、お待たせしましたクロサキさん」


 落ち着かないまま放置される事十五分。キッチンでの作業を終えたクルルが何かを持って悠のところへとやってきた。


「これってクッキーか?」


「はい。本当は明日お渡しするつもりだったのですが、お義母さんが折角だからと」


 クルルが持ってきたのは小皿に乗っけられたクッキー。見た目もよく、ちょっとした夜食にするにはちょうど良かった。


「どうぞ食べてください」


「いただきます」


 クルルに勧められるがままにクッキーを一つ食べる。すると口の中に甘いチョコレートの味が広がり、中にはチョコチップの食感もあった。

 つまり率直な感想を述べると、


「美味い」


「ほ、本当ですか? よかった……」


「これクルルが作ったのか?」


「は、はい。お義母さんに手伝ってもらったりしましたけど」


「すごいな。チョコチップも入っていて、味もしっかりしているし普通のクッキーとかより全然美味しい!」


「あ、ありがとうございます。そこまで喜んでくれるなんて……」


 悠の言葉に嬉しそうに頬を染めるクルル。実際今まで食べてきたものの中でも一二を争う美味しさで、まだ地球に来て一年しか経っていない技術とは思えなかった。


「ちゃんと作った甲斐あったわね、クルル」


 二人の様子をキッチンで眺めてたスーノがリビングにやって来る。


「お、お義母さん、ありがとう手伝ってくれて」


「頑張ったのは貴女よ。私は力を貸してあげただけ」


 親子睦まじい会話を聞きながら悠はクッキーを次々と食べていく。


「でもお義母さんが手伝ってくれなかったらここまで美味しくは」


「それは違うわよ。クルルは最初からちゃんと愛を込めて作ったから美味しくなったのよ」


「ぶふっ」


 しかしスーノのその一言に悠は思わず食べていたクッキーを吹き出してしまう。そしてお茶を飲もうとしていたクルルも、同じような反応をした。


「お、お義母さん! さっきも言ったけど、クロサキさんのまえでへ、変な事言わないで!」


「変な事じゃなくて事実でしょ?」


「違う! 私は別にクロサキさんのことは……そういう感情ではないから」


 必死に否定するクルルに、悠の心は少し痛む。


(そこまでキッパリ言わなくても)


「と、とにかく美味しかったよ。是非また食べれる時がきたら食べたいくらい」


「作ります! また是非作らせてもらいます!」


 食い気味に少し苦笑いを浮かべながらも、悠はこの後ちゃんとクッキーを完食するのだった。



「じゃあまた明後日学校で」


「はい」


 その後少しの雑談をした後、日付も既に変わってしまっているので今日はお開きになり、悠をクルルとスーノが外まで送りにきていた。


「泊まっていっていいのよ? 折角のお隣さんなんだし」


「お義母さんは! 先に家に戻っていてください!」


「あ、ちょっとクルル!」


 どうしても悠を帰したくないらしいスーノを、無理やり家に押し込んだクルルがため息をつく。


「スーノさん、いい人だな」


「はい。こんな私を助けてくれた恩人なのですごく感謝はしています」


 スーノがクルルを新愛していて、その逆も同じなのははっきり悠には伝わってきている。よくドラマとかで血は繋がっていなくても関係ない、という話があるが彼女達の関係がそれを現していた。


「あの、クロサキさん」


「ん?」


「今日は色々あってまだ頭を整理できていませんが、これだけは言わせてください。今日は本当にありがとうございました」


「別に礼を言われるようなことはしてないよ。俺たちに話してくれたのだってクルル自身の意思なんだしさ」


「私自身の意思……」


「それにまだこれからだろ? 俺達もどうやって守るかとかこれから考えていくし」


「はい。本当にクロサキさん達にはこれから……えぐっ」


「く、クルル?」


 突然泣き出すクルルに悠は戸惑う。


(俺なんかまずいこと言ったか?)


「すいません……私嬉しくて……」


「だからって泣くことなんか」


「うちの娘を泣かした責任、取ってくれる?」


「ドアの隙間から覗きながら言わないでください、スーノさん」


 こうして二人のデートから始まった、かなり濃い一日はようやく終わりを告げた。まさかクルルのお義母さんに会うことになるとは思っていなかったものの、この日に出会ったことは正解だったのかもしれない、家に戻ってから悠はそう思うのだった。


(この二人の絆は絶対に守らないとな)


 血なんて関係ない確かな強いもの。

 あの空間にあったものは間違いなくそれだった。それを見れたのだから。

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